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第15話 上からの指示は絶対です

最近、上からの転生先の指示が多い。

こちらで転生先を考えなくて済むが、送り込む人材をどうするかが本当に難しい。

今回送り込む世界は「ラサーワ王国」。どうやら世界観的には日本のひと昔まえに似ているようだ。

記憶は維持したままの転生。異世界転生人をかなり大事にしているらしい。

いわゆる勇者を送り込めとの指示である。


明日香は頭を抱えた。


「難しいよお。」


だが、人材を送れなければ明日香の給料が危うい。


「ようこそ、異世界転生課です。お望みとあらばどんな世界にだって転生させちゃいます!さあ、貴方のご要望はどんな世界ですか?」


まったくの嘘である。今目の前にいる彼女。寺田さんが行く先は「ラサーワ王国」に決定している。

ごめんね寺田さん。でも、貴方が勇者にならないと、あたしが危ういの。


「異世界転生…課?私はどうしてこんなところに?」

「貴方は残念ながら亡くなりました。原因は流行り病です。」

「うそ…マスクしてたのに…」

「今、日本では流行ってますからね。運が悪かったとしか」

「そう。困ったな。家にいる猫のごはん、誰かやってくれてるかな?」

「それはご安心ください。ご家族がお猫様を連れ帰り、大事にしているようです」

「ならいいか。そっかー。死ぬって呆気ないんだな。私まだ死なないと思ってた。死ぬなんて考えもしなかった」


うーん、と唸る寺田さん。案外、死を受け入れている。


「死んだなら仕方ないか。私はこれからどうなるの?」

「貴方はこれから、この転生課での記憶だけを失い、異世界「ラサーワ王国」というところに転生する予定となっています」

「「ラサーワ王国」。私は何をすればいいの?」

「向こうに着いたら説明が誰かしらからあると思いますが、勇者になって魔王を倒す。が、使命のようです」

「うはぁ、私、武器なんて包丁くらいしか握ったことないよ」

「日本にいる限り、魔物を倒す、なんてことはないでしょうし、それが当然かと思います」

「出来るかな?私に」

「最大限の保障が向こうの世界で約束されています」


どのみちここで言ったことはすべて忘れてしまうので説明は割愛する。


「こちらからのプレゼント。スキルを付与しておきます。【敵感知】【言語理解】です。このスキルはおそらく向こうの世界では表示されません。貴方の潜在能力になります」

「潜在能力…、なんかすごいね」

「貴方にはぜひ生き延びていただきたいので」


簡単に死なれると、向こうの転生課から苦情が来そうだし。


まばゆい光に包まれて消えてゆく寺田さん。


「ありがとう、頑張ってみるね」


ほんと、頑張ってほしいものである。





「先輩も「ラサーワ王国」に人材送ったっスか?」


卯月がチラと顔を出してくる。業務中に話しかけてくるのは珍しい。


「そうね。勇者候補を一人送ったわ」

「卯月も送ったっす。活躍してくれるといいっスね。心配っスよ」

「その話し方おやめなさいな。人質事件から癖になってるわよ」

「なんだかしっくりくるんですよね」

「まあ、カワイイからいいか」

「お?先輩、なんですって?」

「…「ラサーワ王国」。一筋縄じゃいかなそうね。もう数人送っておこうかしら」

「そうっスね。こっちでも頑張ってみるっスよ」


その後、いい人材を見繕ったが、寺田さんのようにパラメータ適正がありそうな人はいなかった。



続く。


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