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第五十六話「クラン市長」

 翌日、ケビンとフェリスはポールの案内の元、ドネア市の市長宅へと足を運んでいた。市長宅は航空艇の飛行場の近くに建っていた。近くで航空艇の離着陸する音がひっきりなしに聞こえる。はたしてうるさくて眠れるのだろうかと、ケビンたちは首をひねっていた。


「守護士のポール・ロランツです。他二名とともに市長に用件があり参りました」


 ポールはインターホンを鳴らして、市長に取り次いでもらっていた。ケビンとフェリスはその後姿を見ながら立ち話をする。


「なあ、ここの市長ってどういう人なんだ?」


「うーん、評判はいいわよ? ウェルカのオドラス市長とは反対に、物腰柔らかな初老のおじさんだって。にも関わらず荒くれ揃いの航空艇乗りたちの争いごとも絶妙に調整するって」


「へえ、それはいいな」


「なんで?」


「いや、ここのところ濃い人たちばっかりだったから......」


「ああ、そうね。たまには箸休めしたいわね」


 ケビンとフェリスは空を見上げて遠い目をしていた。今までに会った人たちの顔を思いだす。まともな人がいなかった......。


 そうしているうちに案内のものがきて、ケビンたちは客間に通された。客間は品のいい部屋だった。華美な調度品などはなく、ところどころに市の特産品や航空艇の模型が飾ってあり、市長の人柄を伺わせた。


「おう、お前ら来てたのか!」


「ウェルキンさん! それに......レイン!」


 市長より先に見慣れた顔が客間に入ってきた。どうやら彼らも市長に呼ばれたらしい。


「よ......よう......」


 レインがおずおずと声を掛ける。ケビンも昨日の風呂の一件が尾を引いているのか、気まずそうにしていた。


「あ、うん......」


「その......この前は蹴って、悪かったな」


「いや、俺も......その悪かったし......」


「うん......」


「ちっ!」


 二人の初々しい姿を見ながら、フェリスが面白くなさそうにしている。


「そうだ! ケビン! レインのまっぱを見たんだってな! で? どうだった? よかったか?」


「黙ってろ、クソ親父!」


 だーんっと回し蹴りがウェルキンの首元に炸裂した。ウェルキンはいやらしい笑顔を顔に張り付けたまま、膝から崩れ落ちる。床に倒れたウェルキンはぴくりともしなかった。


「うわっ! これは何事だい!?」


 いつの間にか初老の男が客間に入ってきていた。彼はウェルキンの倒れ伏した姿を見て心底驚いていた。

☆☆☆

「はじめまして。ドネア市の市長のクラン・ポドルスキだ。ウェルカ市の小さな英雄に会えて嬉しいよ」


 そういって一通り事情をポールに説明されたクラン市長は、初対面のケビンたちに挨拶をした。


「あ、黒鉄級守護士のケビン・ブライアンです」


「協力者のフェリス・アービングよ。よろしく」


ケビンは恐縮しながら、フェリスは生意気に挨拶を返した。二人の反応にクラン市長はうんうんと快くうなずきながら、ソファに座った。そして立ったままのケビンたちに座るように促す。ケビンたちは言われるがままに座った。


 慣れているのだろうか、倒れたウェルキンはそのままである。


「さて、一通りの話はバネガ殿やウェルキンから聞いているが......」


 そう言いながらクラン市長は話を切り出した。


「実際に遭遇している君たちに話を聞きたいな。例の仮面の集団とやら、君たちはどのように感じたのか」


「えっと、やっぱり一番感じたのは、彼らがとても統率の取れた集団だったという事です」


 ケビンがおずおずと答える。


「ほう? つまりある程度の訓練を受けていたという事だね?」


「はい、しかも耐久力も尋常じゃありませんでした。ただの山賊とかではないかと思います」


「なるほど......」


「市長。この地方でそう言った連中に心当たりはあるかい?」


 ポールに聞かれて市長は考え込んだ。それからゆっくりと首を横に振る。


「いや、心当たりがないな。この地方でもっとも訓練されているのは市境付近に駐屯する軍だが、そういった特殊任務が得意な者たちではない」


「軍に紛れ込んでいる可能性は?」


「ないとは言えないが、基本的に地方軍はこの地方出身の者たちだからな。顔見知りも多い。その連中がそんな訓練受けているのは考えづらいのだが......」


「だろうな......ならあれなら?」


 そう言ってポールは航空艇を指さした。


「空からということか......」


「あれなら侵入経路はあるんじゃないのか?」


「この街に出入りする航空艇の乗組員は全員、身元をチェックするようにしている。怪しい連中や武装した人間はすべてお断りするようにしている」


「昨日、すこぶる怪しくて物騒な傭兵団の一員に会ったんだが?」


「彼らは陛下の紹介状と正式な通行手形を持っていたんだよ。流石に断るわけにはいかなくてね」


 クラン市長はため息をついた。どうやら彼らの存在は頭の痛い問題であるらしかった。


「とすると、やはりその怪しい連中の言う通り、マッター峡谷に潜伏しているのかねえ?」


 ポールは腕を組み、上を向いて考えた。


「その可能性はあるだろうね? ただあんなところに発着場なんてないんだ。誘導してくれるものは誰もいない。よほど腕のいい航空艇乗りがいないと、あの辺に航空艇を停めることなんてできないよ?」


「あそこは帝国との国境付近だ。俺らが知らない人材なんていくらでもいそうだぜ?」


「確かにね? あるいは仮面の連中が帝国の関係者という事も?」


「決めつけるのは早いがな。その可能性も考えておいた方がいいだろう」


「となると実は気になることがあるんだ」


「「わっ!?」」


 いつの間にか起き上がったウェルキンが突如として会話に加わる。ケビンたちは急な展開に驚いていた。


「気になること?」


 その中でまるで動揺していないのはクラン市長だけだった。やはり相当な大物なのかもしれない。


「今、例の帝国貴族の航空艇を停泊させているだろう?」


 ウェルキンは気にせず話を続ける。


「ああ、あのおぼっちゃまか? それがどうしたんだい?」


「あいつの乗ってきた航空艇、かなりの大型戦闘貞なんだが、明らかに人数が足りていないんだ」


「どういうことだい?」


「つまり申請してきた数に対して、実際に操縦に必要な数の人間が足りないという事だ」


「ほう? しかしあの世間知らずのおぼっちゃまに貴族にそんな権謀術数が使えるのかね?」


「本人は知らない可能性があるぜ?」


「なるほど......」


 クラン市長は口に手を当て考え込む。


「勝手に話を進めないでよ。どういう人なの? その貴族って」


 そこにフェリスの声が割り込んだ。


「ああ、申し訳ない。数日前から帝国出身の貴族がいるんだ。なんでも皇室ゆかりの方らしくてね。ただ......」


「その、なんというか、かなりワガママな人でね。色々と無理難題をふってこられてて、正直困ってるんだ」


 そういってクラン市長ははっはっと笑った。気苦労が多いようである。


「そういえば支部にもその人関連の依頼があったな」


「なんと、まさかそちらにでも迷惑をかけているとは......」


「依頼の難易度も優先順位も低いと聞いてたから、後回しにしていたんだがな......そういうことなら、ケビン、フェリス!」


「「何?」」


「二人で依頼を受けるふりして調査してくれるか? その帝国貴族ってやつを」


「了解! ポールはどうするんだい?」


「俺はマッター峡谷を調べる。そっちは空振りの可能性も大きいだろうからな。時間かかりそうなら一旦こっちに戻ってこいよ?」


「あら? 随分なこと言うのね?」


 フェリスがからかうように言うと、ポールも肩をすくめた。今の最優先事項は不審者を退治することである。くだらないことで足止めされる必要はないという事であろう。


「あ、それならレインを連れていくといい」


「はあ!?」


 突然のウェルキンの提案にレインは驚愕の声を上げる。完全に寝耳に水であった。


「なんで俺が!?」


「だってケビンもフェリスもここの地理には詳しくないだろう?」


 もっともな意見である。だが、当の本人たちーーケビンとフェリスとレインは突然の話の流れに戸惑うばかりであった。

サクラ革命がリリースされましたね!賛否両論ありそうな内容にすぐに打ち切りになりそうで、ドキドキが止まりませんw

それにしてもガチャが渋い......風属性が当たらない......

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