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第五十五話「バネガの過去」

 守護士の支部まで戻ってきたケビンたちは終始無言だった。ケビンには分からなかった。なぜバネガはフィルの情報を売ったのか。いつも的確にアドバイスをくれる兄貴分は近くにいない。部屋には気まずい空気が流れていた。


「どうしてフィルさんの情報を売ったの?」


 迷うケビンの代わりに聞いてくれたのは、フェリスだった。バネガがゆっくりと支援者の椅子を回転させてこちらを向く。


「教えたところで問題ないからだ」


「問題ないって?」


「あいつは今ある任務に就いている。だが場所を知られることは大した弱みではない」


「どうして?」


「任務の特性上と言う他ないな」


「でも襲われたりしたらどうするの?」


「今あいつの周りには手練れがいる。あいつを襲ったうえで、そいつらもとなると一個師団が必要だろう。そんな戦力用意すれば流石に守護士の情報網に引っ掛かる」


「なるほど、私たちにとっては大した情報ではなかったということね?」


「ああ、その通りだ」


「だって、安心した?」


 そういってフェリスはケビンに話しかける。ケビンは困ったように頬を掻いて、それからバネガに向けて頭を下げた。


「バネガさん、すみません! 敵に寝返ったと思いました!」


 あまりの素直な意見にバネガもポールも目を丸くした。それから肩を暫しの間、振るわせたと思うと、口を開けて大笑いした。ポールはともかく、バネガのそのような姿は珍しかった。


 長い時間、笑っていたが、その内ポールが涙を指でぬぐって答えた。


「いやいや、若いっていいね? おやっさん」


「お前も十分ガキだろう」


 バネガはゆっくりとケビンの所まで歩いてきた。そしてすっと頭を下げる。ケビンもフェリスも咄嗟のことで何も言う事ができなかった。バネガが重々しく口を開く。


「こちらこそすまなかった。お前らを侮っていた」


「いやいや、バネガさん! どうしたんですか急に。頭を上げてください!」


 ケビンが慌てて声を出す。だがバネガは頭を上げて首を振った。


「俺は、お前たちのような実力のない若者が、危険な所に行くのが反対だったんだ」


「......」


「俺にはエイガという名の息子がいたんだ。親のひいき目だが腕の立つ奴でな。ポールと組んで世代でも最高の守護士コンビと言われていた」


 ケビンたちはバネガの話を黙って聞いている。


「だが、ある任務で失敗を犯した。経験不足だったと言われてしまえばそれまでだが、あいつは救いたかったものを救えなかった」


「......それでエイガさんは?」


「わからん。そのまま、どこぞへと消えてしまった」


「そう......ですか......」


「ああ、だから俺は若い奴らには大量に失敗をしてもらうことにしていた。それで挫折するならそれまでだと......それを乗り越えれるものしか守護士になるべきではないとな」


「......」


「だが、お前みたいな素直な奴は初めてだよ。ケビン」


 ケビンは突然名前を呼ばれて驚いた。


「普通、親父の情報を目の前で売られたりしたら、怒り狂っていいはずなんだがな」


 ケビンの顔を見てバネガはふっと笑う。まるで何かを思いだしているかのようであった。


「ケビン、フェリス。改めて要請したい。今回の仮面の件も含めて、解決のために力を貸してくれ」


 バネガの再度の懇願にケビンとフェリスは顔を見合わす。そしてこくりと頷き合った。


「当然です! 俺は守護士で、フィル・ブライアンの息子で、ジャック。ブライアンの弟なんですから!」


「私は報酬さえもらえば何でも。まあ謎のままってのも気持ち悪いしね。感謝しなさい?」


 この期に及んで、まだ素直じゃないフェリスを見て、残りの三人はまた笑っていた。

見どころ少なくてすみません。でもこの後の為に(だいぶ先)どうしても必要なシーンなんです。

許してください。

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