第五十一話「二手」
導力車がゴトゴトと悪路を進む。積み荷を無事守り切ったケビンたちは目的地に向けて快調に飛ばしていたーー雰囲気が最悪なこと以外は......
仮面の連中との戦いでやらかしてしまったケビンはレインと二人きりでいることが出来ようもなく、エレンと助手席のポジションを代わってもらっていた。そうすると必然、機嫌が最悪なフェリスと一緒にいることになる。気まずい二人の間にいつものごとくジャックは挟まれてため息をついていた。
「あの仮面の連中、何者だったのかな?」
ジャックがふと疑問の声を上げると、ケビンもそれに乗った。
「確かに、結局フェリスが倒した親玉は見つからなかったんだよね?」
「ああ、俺とエレンが各々倒した何人かもいつの間にか消えていた」
「理想郷の仲間とか?」
「確かに変態くさかったが......」
ジャックは少しくすっと笑ってしまった。
「まあ流石に一緒にするのは気の毒ってものだろう?」
「そうなのか?」
「理想郷の連中は良くも悪くも欲望に忠実な連中だからな。ああいう忠誠心を求める兵隊のような連中はちょっとタイプが違うだろう? 決めつけるわけにもいかんから絶対とは言えんけどな......」
そう言われてケビンもなるほどと一応納得した。
そうこうしているうちに導力車はマース地方とカノダ地方の市境の関所ーーナガラ門の前まで来ていた。カノダ地方は帝国・連邦の国境と面する場所に位置しており、大陸の火薬庫と呼ばれる地域でもある。ゆえにそこに面するナガラ門も実践に備え、ひと際大きく、堅固に作られていた。
レインが向こう側へと手続きをする間、ケビンたちは受付を遠くに眺めながら、今後のことについて話し合っていた。
「とりあえず、帰ったら例の仮面の連中についてバネガさんに報告しなきゃね」
ケビンが言うと、ジャックも同意する。
「ああ、そこからようやく本格的な調査開始ってところだろうな。カノダ地方とも連携して......」
と言いかけたところで、レインが息を切らして戻ってきた。どうやら慌てているらしい。
「ちょっと至急いいか?」
「とりあえず落ち着け。どうしたんだ?」
エレンが手に持っていた水を、レインに手渡す。レインはそれをごくごくと飲み干して、ぷはっと言いながら、話を続けた。
「それが、あちらの商人に道中のことを伝えたら、自分たちだけでは持ち運びできないから、護衛の人が必要だっていうんだ」
「護衛って言っても、向こうの人たちだっていないわけじゃないんだろ?」
ジャックが聞くと、レインは首を横に振った。
「どうやら魔獣を倒すための護衛はいるけど、人間は専門外らしい。だからお願いだ。誰かこのままトレントまで火薬を護衛してくれないか?」
レインの懇願に四人は顔を見合わせた。少々急な申し出に咄嗟には反応できなかった。その中でいち早く快諾したのはエレンだった。
「私はかまわんぞ? 元々トレントに行くつもりだったしな。一緒にこのまま行けるなら好都合だ」
「待て待て。この依頼は守護士の支部が正式に受けているものだ。協力者だけにそのまま行かせるわけにもいかん。ここは俺も同行しよう」
ケビンは慌てた。そうなってしまったら今絶賛きまずい雰囲気になっているフェリスと一緒になってしまう。それだけはどうにかして避けたかった。
「それなら俺が行くよ!」
だがその提案はあえなくジャックに却下された。
「だめだ。火の剣士二人が行っても戦術の柔軟性が欠ける。エレンとケビンは分かれるべきだ」
もっともらしいことを言いながら、ジャックの口の端が少しつり上がるのをケビンは見逃さなかった。この状況を楽しんでいるのだ、このクソ兄貴は。
「待っ......!」
「私はいいわよ?」
ケビンが抗議の声を上げようとしたところでフェリスの声が割り込んだ。ケビンが驚いてフェリスを見ると、フェリスはそっぽを向いて表情が伺い知れない。ジャックも意外に思いつつ、じゃあこれでとチーム分けをして、カノダ地方へと向かって行った。
後には困り顔のケビンと、敵意の視線をバチバチ交わす、フェリスとレインが残っていた。
今頑張って女の子を可愛くしようとしてます笑
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