第五十話「仮面の集団」
不気味な仮面の集団は包囲網をじりじりと狭めていった。手には鉤爪のような長い刃をつけた武器をはめていた。ケビンたちだけであれば切り込んでどうとでもなるかもしれなかったが、今は後ろにレインと積み荷がある。仮面の連中が明らかに後ろの積み荷に用がある以上、実力の分からない相手に対して、下手に動くわけにはいかなかった。
その膠着状態は突如として破られた。仮面の一人が仲間に合図を送る。すると積み荷側にいた仮面たちが一斉に近づいてきた。奇妙な動きである。横に揺れてまるで陽炎のようにつかみどころがなく、それでいてすさまじく速くケビンたちに肉薄する。
「オーランド流ーー紅蓮若火!」
エレンがまとめて仮面の軍団を薙ぎ払う。
「グランドウォール!」
ジャックが数枚の土の壁を仮面の集団の進行方向に出現させ、仮面の連中の動きを誘導し、壁を避けて身を乗り出したところを魔導杖で思いっきり横殴りにする。
エレンにやられたものも、ジャックにやられたものも相応のダメージを負ったようだが、すぐに立ち上がった。耐久力が尋常ではない。明らかに訓練されたものたちであった。
その時、また先ほどの仮面の男が何事か仲間に合図を送る。どうやらあの遠くにいる仮面がボスであるようだった。それに気づいたジャックとフェリスが目を見合わせた。
状況は多勢に無勢。時間がたてばたつほど不利になる。やることは決まった。あとは腹を括るだけである。
「クレストバインド!」
ジャックが魔導器を発動させて数人の仮面たちの動きを止める。標的はボスにたどり着くまでに障害となる連中だ。
「グランドウォール!」
続けてまた土の壁をせりあがらせる。今度はフェリスからボスまで、一本の道になるように作った。
「シェフィールド!」
そしてフェリスが魔導器を発動させる。仮面の連中よりもなお速いスピードでボスに向けて突進した。
突然の攻撃にボスは防戦一方である。
「うらああああ! ストーンシャワー!」
遅れてジャックは魔導器を発動させて、フェリスに近づこうとする仮面の連中を牽制しつつ、自分も魔導杖を振り回して、敵をぶち倒していく。フェリスがボスを倒すまでの時間稼ぎだ。
ケビンもエレンも瞬時に彼らの意図を理解した。
「オーランド流ーー鳳凰紅蓮剣!」
エレンがジャックたちの方へ回り込み、火の鳥の形をした気の刃を飛ばす。火の鳥はジャックを援護するように周りの敵を切り裂き燃やした。
「火型三の形・火扇剣!」
それと同時にケビンは導力車を挟んだ反対側でエレンの穴を埋めるように範囲技を放っていた。消耗度外視の短期決戦である。
それぞれが死力を振り絞って各々の役割を果たしていた。
「ぐおおおお! フェリス! まだか!」
敵に身をさらしているジャックがギリギリのところで相手の爪を避けながら叫ぶ。
「もうちょっと! 何か決め手があれば......」
フェリスも攻めあぐねていた。依然として有利なペースで戦えていることに変わりはなかったが、どうしても決定打にかけていた。
「おい! 離れろよ!」
その時、導力車の方から声が聞こえた。はっと皆が振り向くと、そこでは護りを抜けた、仮面の一人が荷物に手を掛けようとしていたところだった。それを阻止しようと、レインが仮面の男に荷台から蹴りを食らわせている。苛立った仮面はレインに向けて爪を振り上げた。
「ひっ!」
レインが恐怖に顔を歪める。
「危ない!」
すんでのところで、ケビンが仮面を切り裂いて蹴り飛ばした。そこまではよかった。しかし、ケビンは勢い余ってそのままレインの方へと突っ込んでいってしまった。
「うわっ!」
「あっ!」
ケビンとレインがもんどりうって荷台に倒れこむ。その時、偶然にも、本当に偶然にもケビンはレインの上に跨るように倒れてしまった。その拍子に口づけする形で。
「ごめん!」
ケビンは顔を赤くして離れた。レインはまだ呆然としている。
そしてその様子を遠めだったにも関わらず、フェリスたちもきっちりと見ていた。
「あんた......あんた......こんな時になにしとんじゃーー!!」
フェリスの怒りが峡谷に木霊した。その拍子に魔導器を発動させて竜巻がフェリスの腕を覆う。その勢いのまま憐れボスはフェリスのアッパーを食らい、高く遠くへと錐もみしながら飛んでいった。
「「おお~」」
エレンとジャックはその技の見事さに感嘆の声を上げる。
ボスを失った仮面の連中はお互いに顔を見合わせると、すっとまた蜃気楼のように消えて行った。ジャックもエレンも状況的に追う事はしなかった。
後に残ったのは怒りで肩を上下させているフェリスと、今しがたのハプニングで顔を赤らめているケビンとレインだった。
どこかで聞いたような技名.......ぱくっているような気がしてどきどきしますw




