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第四十八話「火薬の運搬」

「ウェルキンさん! この火薬は一体なんですか!?」


 ケビンが猛然とウェルキンに詰め寄った。しかし当の本人はぽかんとした表情だった。


「何って......ただの火薬だが?」


「っつ! そうじゃなくて!......」


「おい! ケビン!」


 なおも食い下がろうとするケビンをジャックはその逞しい腕で強引に引きはがした。そして隅っこの方で小声で話す。


「火薬の件は一応機密だぞ? おいそれと話したり悟られるようなことをするんじゃない」


「う......いや、そうか。ごめん」


 ケビンが殊勝にうなだれる中、フェリスが愛想笑いをしながら話の続きを引き取った。


「すみません! 彼ちょっと病気で......たまにあんなふうになるうです~」


「お......おい! もがっ」


 抗議をしようとしたケビンの口を、ジャックは話がややこしくなるからと塞いだ。


「そうか、守護士も大変なんだね」


 そんなケビンをウェルキンは慈愛の眼で見ていた。あらぬ誤解を解こうとケビンは暴れるが、フェリスもジャックもあえて無視を決め込んだ。


「それで、あの火薬はどこに誰当てに運ぶんですか?」


「あれかい? あれはカノダ地方との市境に送るのさ。そこの関所でカノダ地方の商人が受け取る手はずになっているんだ」


「そんなところまで運ぶんですか? その商人は常連さん?」


「ん? そうだよ。大分長い付き合いのある人たちだね」


「じゃあ信用できる人たちってことですか......」


「ちなみにこの火薬は何に使うのか聞いているのか?」


 フェリスとウェルキンの会話にエレンが割り込んだ。


「うん? ああ、それがあっちもお客さんに頼まれたらしくてね。こんな大口注文は初めてだって喜んでたよ」


「なるほど......」


 どうやら取引先は誰かに注文されたらしい。これ以上の詮索はいたずらに依頼主に不安を与えるだけだ。わかりました、と出発はいつか聞こうとした時だった。ウェルキンははたと思いついたように手を打った。


「そうだ、こいつを紹介しなきゃな。おーい、誰かレインを呼んできてくれ」


 あいよ、航空艇の乗りの一人が答える。しばらくすると、一人の少年がやってきた。銀髪の黒い瞳、ウェルキンと同じつなぎを着ているから航空艇乗りのようだ。背丈はフェリスほどしかない。


「紹介するぜ、こいつはレイン。うちの航空艇の操舵手だ。今回の荷物の運搬はこいつに担当してもらうからよろしくな」


 そういってウェルキンは無理矢理むすっとしているレインの頭を下げさせた。レインはその手を乱暴に払いのける。


「いってねえな、クソ親父!」


「こら! お客さんの前でなんだその態度は!」


「うるせえよ、空飛ぶゴリラ!」


 そう言ってツーンとそっぽを向いてしまった。ウェルキンはポリポリとほほを掻く。


「悪いな。こんなはねっかえりだが、操縦の腕は俺が保証する。当日は導力車で荷物を運ぶことになると思うから、こいつの運転で関所まで行ってくれ」


 そう言ってウェルキンはレインのことを親指で指した。ジャックが引き受ける。


「わかりました。出発はいつになりますか?」


「急で申し訳ないんだが、明日でもいいか? 向こうさんも早く商品を準備をしたいみたいでな」


「いいですよ。では明日の八時にカノダ地方への出口の前で」


「あいよ、よろしくな。報酬は弾むよ」


「ははっ! 期待してます」


 そう言いながら二人は握手をしあっていた。後ろではレインが不機嫌そうにその様子を見ている。


「親父、もういいか? 船の整備の続きがあるんだが?」


「ああ、大丈夫だ。お前も明日は粗相の内容にな」


「はいはい」


 レインは手をひらひらと振りながら、元居た場所に戻っていった。ウェルキンはその様子を見て露骨にため息をついた。


「失礼ですが、あまり似ていない親子のようですね」


 エレンが不躾にもウェルキンに聞いた。この男の性格的にそれくらいストレートに聞いた方が好まれると思ったのだろう。ウェルキンが困ったようにしていた。


「いや、あれは養子でな。親父が......あいつの本当の親父が俺の親友でさ。事故で亡くなったのを俺が引き取ったんだが、あの通り気難しい奴で」


 そこまで言って、ウェルキンはやれやれと首を横に振った。


「だが、親父に似たのかーーあいつの親父も操舵手だったんだが、まあ航空艇の操縦がうまくてな。ついあいつの要望にも負けて船に乗せちまった。俺としてはもっと危険のない所で学校とかに通ってほしいものなんだがな」


 ウェルキンの嘆息に、フェリスやエレンも適当に相槌をうっていた。後ろで小声でジャックがケビンを肘をつつく。


「楽しい道のりになりそうだな」


 悪戯っぽくウィンクするジャックにケビンは呆れた。


「俺はそろそろ想定外のことが起こらない任務がいいよ」


 そうこうしているうちに、話はまとまり、ケビンたちは解散して明日に備えることになった。

昨日何してたんだろうっていうくらい何も思いだせない。そんな日ってありますよね......

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