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第四十三話「狂宴舞踏」

 美しくないものが嫌いだった。醜いものが周りに存在すると吐き気がする。昨日みせられた男の裸なぞ醜悪の極みだ。


 自分の周りは美しいもの、可愛いものだけでいい。いつもそう感じている。例えばここで横たわっている少女だ。フェリスと言う名の少女は実に自分好みだ。神はなぜこういった子だけ創らなかったのかいつも不思議に思う。


 オーレンヌ・マイアーーことオフィーリア・ポワゾンはそんな風に考えながら、フェリスの顔に垂れた髪の毛をスッと梳いた。オフィーリアは彼女の本名だったがその名前は嫌いだった。あの醜い、自分を裏切った両親に付けられた名だからだ。それよりは昔本で呼んだ、お姫様の名を自分の名にしたかった。だからいつもはレンヌと名乗っている。


 フェリスからレンヌと呼ばれたときも嬉しかった。早く帰ってこの少女に似合う服を誂えたかった。頼まれごとがなければこんなところさっさとおさらばするのにとレンヌは人知れずぷくっと頬を膨らませた。


 階下からこちらへ登ってくる足跡が聞こえてくる。どうやら彼らが来たらしい。


 一度はしっかりと勧誘しよう。もし断られたらさくっと殺して才能がないと報告して終わりにしよう。レンヌはそう心に決めた。もうこれ以上あんなものを見せられるわけにはいかない。


 だんっと最上階の扉が乱暴に開かれた。その乱雑さにすらレンヌはピクリと顔をしかめる。


 だが次には意外に思った。全員服を着ているのだ。てっきり、この前の自分の姿を見て男どもは裸で来ると睨んでいたのだが。


 全員厳しい表情で自分のことを見つめている。しかも見慣れない男が一人いる。レンヌは正体を確かめることにした。


「あら? お兄さんは招待したつもりじゃなかったのだけれど? あなたはだ~れ?」


「俺かい? 俺はポール・ロランツ。ドキア市の守護士さ」


「ああ、聞いているわ。あなたが”風月刃”ね?」


「知っていてくれたなんて光栄だね。お嬢さんは誰だい?」


「あら? ケビンたちから聞いているでしょう? オーレンヌ・マイアよ?」


「”理想郷”の幹部か?」


「まあそうね」


「この街に来たのはフェリスをさらう為か?」


「いいえ? この子はいわゆる棚ぼたよ? 目的はケビンとジャック」


 ケビンとジャックは驚いた。まさか自分たちが目的だとは思わなかったのだ。


「俺たちに何の用だ?」


「そんなに睨まないで? ケビン」


「さっさと言えよ。それでフェリスを返せ」


「あらあら? レディーに冷たい言い方。もてないわよ?」


「......」


「ふう~わかったわよ。ケビン、ジャック、あなたたち”理想郷”に入らない?」


 レンヌの勧誘にケビンとジャックは苦虫を噛みつぶしたような表情になった。ポールとエレンはあ~と納得した表情をしている。


「その話は断ったはずだ!」


 ジャックが叫ぶとレンヌはつまらなそうな顔をした。


「みたいね? でも私たちの”上”はあなたたちにご執心みたいでね? どこでもなんでもすぐに脱げるのはやはり普通ではないわ」


「おい! やめてくれ!」


「上はあなたたちに裸剣と裸豪の称号を与えると......」


「「いらんいらんいらん! そんな称号!」」


 勝手に話を進めるレンヌにケビンたちは猛抗議をしていた。その様子を見てレンヌはつまらなそうに鼻を鳴らす。


「そう? じゃあこの話はこれでおしまい」


 あまりにもあっさりとしたレンヌにケビンたちは面を食らった。ケビンが不思議そうにレンヌに聞く。


「そ......そんなんでいいのか?」


「何? 入りたいの?」


 ケビンとジャックが全力で首をぶんぶんと横に振った。


「私としてはもう美しくないものが多くなるのがすでに限界なの。ただでさえ”鞭罪天”だの”破戒”なんておぞましいやつらがいるんだもの。もうおなか一杯」


 何かを思い出したのか、レンヌは一瞬顔を青ざめさせてうっぷと口を手で覆う。喉元までこみあげてきたものを無理やり飲み込んで、彼女は両手を真横に広げた。


「さあ、おしゃべりの時間は終わり。ここからは舞踏会の時間よ? あなたちも楽しく踊ってね?」


 そう言ってレンヌは出会った時とは想像もできないほど嗜虐的な笑みを浮かべた。ケビンたちもそれぞれ武器を手に取り攻撃に備える。


「理想郷が十二位ーー”狂宴舞踏”オーレンヌ・マイアーーあなたたちを舞踏会に招待するわ? 裸剣と裸豪」


「「その称号で呼ぶなぁ!!」」


 緊迫した雰囲気にケビンたちの悲鳴が響き渡った。

〇ンゲラー権利認められたって!よかったですねw

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