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第二十六話「髑髏島」

設定資料が消えてしまいました。なるべくサルベージしましたが妙な矛盾点があったら教えていただけると......

 翌日、昨日の調査結果の報告をするために三人はアメリアのもとに顔を出した。


 市長宅でオドラス市長、アメリア、ジェイドを交えて一つの卓を囲んでいた。まだ昼だというのにオドラスたち年長組には酒とつまみが、ケビンたちには紅茶とクッキーが配られていた。


 アメリアはつまみの干物をかじりながら眉をひそめて言った。


「まさかダーモットがそこまで直接的に絡んでくるとはな......」


 オドラス市長もううむと唸っている。


「女王陛下や帝国公認の商業許可証を持っていた男だからな。こちらも無碍にはできなかったのだ......だがそこまでそちらの捜査を妨害したのであれば許可証を没収することはできる」


「気になったのはそこです」


 ジャックがオドラス市長の方を向いて言った。


「彼は一応公認の商人のはずなのにわざわざリスクを犯してきた。優秀な商人であるならばそのようなことはしないはずです。ダーモットという男は我々が思っているより目先の利益しか追えないのかのかあるいは......」


「新しい商売相手を見つけたかだな」


 ジェイドがジャックの後の言葉を引き取った。


「密貿易の相手ならば他国商人のダーモットは適任だろう。帝国も我が国をそこまで重要視してるわけではないから問題を起こしても帝国内で処理できるしな」


 ケビンたちもその言葉に頷いた。自分たちが予想した答えと同じだったからだ。ケビンがアメリアに向き直って言う。


「それで、肝心の密貿易の元締めなんですが......」


 アメリアは頷いた。


「やはりドーランか」


 フェリスはアメリアの言葉が気になって反応した。


「やはりってことは、犯人の見当はついていたの?」


 アメリアは重々しく頷いた。


「ああ、お前たちには変な先入観をもって欲しくなかったから、昨日あえて隠したのだが、ドーランの奴、最近妙に金払いがいいらしい」


 ジャックは顎に手を当てて言った。


「密貿易で儲けてるからか。少々迂闊な気もしますが......」


 アメリアは首を振って答えた。


「おそらくそれだけではないな。人を集めようとしているのだろう。この街のごろつきや以前貿易を許可されなかった商船のメンバーを考えると大体二百人といったところか......」


「こちらの戦力は?」


 ジャックが聞くと今度は市長が応じた。


「船乗りたちは戦いに出すわけにはいかんからな。アメリアの船と私の旧友たち、全員合わせて五十人といったところか......」


 今度はケビンたちがうなった。戦力差が四倍というのは流石に差がありすぎるように思えたからだ。ケビンがアメリアに聞いた。


「もっと戦力を増やせないんですか?」


「増やそうと思えばいくらでも増やせるさ。船乗りたちもいれば正規軍を派遣してもらう方法もある。ただ時間がない」


 フェリスが首を傾げて聞いた。


「時間がない? どうして?」


「商売は信用が命だ。時が経つほどにこの件が大きくなっていくと、この港で取引するものが減っていく。ドーランの力がそこまで大きくなっている以上、迅速に片づけなければならない。それに......」


「「「それに?」」」


 ケビンたち三人が声を揃えて聞いた。


「ドーランごときにいつまでいい顔させておくのが単純に癪に障る」


 アメリアの答えにケビンたちがずっこけた。あまりにもストレートな回答だった。


 市長とジェイドはうっすらと笑って言った。


「そうだな。あの程度の男をいつまでもこの海で好き勝手にさせておくわけにはいかん。昔仲間たちに声を掛けとこう。皆歴戦揃いだからごろつきごとき一人十人は倒せるぞ?」


「ええ、まったくです。キャプテン。俺らもすぐに船を出せるようにしときます」


 アメリアは腰に手を当てて清々しく笑っていた。その笑いに水を差すようにジャックが手を上げて聞いた。


「ちょっといいですか?」


「ん? なんだ?」


「いえ、行く場所は決まっているような感じなんですけど、密貿易組織の根城はどこにあるんです?」


「ああ、もちろん髑髏島だ」


「髑髏島ってキャプテン・キッドが根城にしていたという?」


「ああ、もう正直あそこしかないんだ。調べてない場所は」


「......ならどうして俺らに依頼を出したんですか?」


 ジャックの少し不機嫌そうな様子にケビンとフェリスは慌てた。アメリアは笑いながらそれを受け止めていた。


「いやいや、本当に確証はなかったんだ。髑髏島は意味もなくいくにはリスクが高すぎるからな。それなりの準備をしなければいかん。お前らがダーモットまで引き出してくれて初めて確信できたんだ」


 ケビンの顔に疑問が浮かんだ。


「どうして、ダーモットが関わると組織が髑髏島にいることになるんですか?」


「それは髑髏島がどこの国にも属していない非国境地帯だからだ。ゆえにダーモットはここで誰と商売しようが罪に問われないという事だな。狡猾な男だよ全く」


 アメリアは苦笑しながらため息をついた。しかしその目だけはようやく待ち望んだ獲物が罠に引っ掛かったときの狩人の眼のように鋭かった。


「さて、我々は明朝、髑髏島に出発するわけだが......お前らはどうする? 依頼は調査だけだから、ここから依頼外の仕事だぞ?」


 アメリアはわざと挑戦的な物言いをした。ケビンがにやりと笑って言い返す。


「安心して下さい。すでにターナーさんが守護士の本部に話を通して密貿易組織の退治依頼を王国から受けました」


 ジャックがしてやったりとした顔で言う。


「こういう話になることは予想できたからな。いつまでもいいように使われてたまるかよ」


 最後にフェリスが努めてクールに言った。


「どうやってか知らないけど、フィルさんとジュリオさんも応援に駆けつけて来るらしいわ。こちらはすでにいつでも出れるわよ?」


 先を読まれてまんまと思い通りに動かされていたと知ったアメリアは、あまりのおかしさにまんまと腹を抱えて笑ってしまった。その横でジェイドまでくっくっと笑っている。


「珍しくやられたな、キャプテン」


「うるさい、さっさと持ち場につけ」


 ジェイドはアメリアに睨まれるとにやけながら一礼して、出航の準備に向かって行った。


☆☆☆

 髑髏島は島の形が上から見ると髑髏に見えることからその名がつけられていた。髑髏島には洞窟が一つあり、その最奥でドーランは歯噛みしていた。


 まさかラルバとメイソン二人に付けていた工作員が両方とも失敗するとは思っていなかった。どちらかが守護士に怪しまれる行動をとれば自分への疑いの目を二人に向けられると考えていたのだが、まさか同日にその工作が発動してしまうとは......


(勘の鋭いアメリアのことだ、既にここが根城だと気づいているだろう。あのアマめ。オドラスに復讐するチャンスだったのに......あの親子はどこまで俺の邪魔をすれば気が済むんだ......)


 ドーランが髑髏島を捨てる事すら考えていると、洞窟の入り口の方から足跡が二人分聞こえてきた。


 足跡の主はダーモットとジャックだった。


「何をしに来た。帝国商人」


 猜疑心に満ちた目でドーランがダーモットを睨んだ。密貿易で一番の取引相手だったが、ドーランは全くといっていいほど、このダーモットという男を信用していなかった。


「これはこれはドーラン殿ぉ~、何やら面倒なことになっていると聞きましたぞぉ?」


 ドーランは聞こえる音で舌打ちをした。しかし、昨日は部下を助けてくれた男でもある。利害が一致しているときは頼りになるのだ。あまり無下にするわけにもいかなかった。


「世間話をしに来たわけではないのだろう? ささっと用件を言え」


 ドーランの無礼な物言いにも全く気分を害することなく、ダーモットはにんまりと満面の笑みを浮かべて言った。


「いやはや、流石ドーラン殿。商人は迅速さが命ですからな。流石にわかっておられる。ではお言葉に甘えて」


 ダーモットが二回手をぱんぱんと叩くと、後ろから黒ずくめの男たちが布を被せられ、荷車にひかれた大きな檻を運んできた。


 それをドーランの前で降ろす。降りの中からは殺気だったうなり声と、獣の息遣いのようなものが聞こえてきた。


 薄気味悪そうにしているドーランを置いて、ダーモットはにっこりと笑いながら言った。


「今からお見せするのはこの状況を打開できるかもしれないものです。少々危険でお値段は張りますが、きっと満足していただけるかと? そらっ!」


 そういってダーモットは布をはぎ取った。中から出てきたものを見たドーランは希望を見出して不気味に笑った。


☆☆☆

 洞窟から出てきたダーモットはスタントンを始めとした、黒ずくめの男たちを率いて歩いていた。周りではドーランの部下たちが不気味そうに彼らを見てひそひそ話していたが、ダーモットはどこ吹く風で、道のど真ん中を歩いている。


 スタントンがダーモットに話しかけた。


「本隊は動かさないのか?」


 スタントンの質問にダーモットは鼻で笑って答えた。


「本隊を? まさか?」


 スタントンはダーモットの答えに意外そうに言った。


「だが、このままではドーランは負けるかもしれんぞ? 数はともかく兵の質は完全に向こうの方が上だ。さっきのアレがいても勝てるかどうか」


 ダーモットはやれやれと両手を上げて首を横に振った。


「武人の悪い癖ですよ? なんでも勝ち負けで考えてしまうのは。ダーモットさん。この戦いでどちらが勝とうが負けようがどうでもいいんですよ。我々の商売は既に次のステージに移ったのですから」


 何?とスタントンが聞いた。ダーモットは得意そうに続ける。


「今回のは......まあそうですね......もう少し儲かりそうだったからおまけみたいなものです。もう少し儲ける事は出来ないか考えてしまう商人の性というやつですよ」


「呆れたやつだ」


「誉め言葉として受け取っておきましょう。スタントンさんも楽しんだらどうです? なんでもあのフィル・ブライアンも今回の戦いに参加するらしいですよ?」


「俺まで巻き込もうとするな。しかし、”炎将”か......確かにやってみたくはあるな」


 スタントンが凶暴な笑みを浮かべていた。その様子を見て今度はダーモットが呆れ顔になる。


「まったく戦闘狂というのは理解できませんね......まあ怪我しない程度にお願いしますよ? これからもっと面白くなるんですから」


 そう言ってダーモットもまたスタントンと同じ目をして笑っていた。

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