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第二十一話「密貿易」

 ケビンとフェリスは驚きを持って目の前の人物を見ていた。まさかゲボラが偽物だったとは。ケビンはアメリアに困惑したように問いただした。


「でもどうしてそんなことを? 普通に依頼してくれればよかったのでは?」


 ケビンの抗議にアメリアは笑って答えた。


「わっはっはっ! すまん、すまん! あれは親父の初対面の人への悪戯みたいなものでさ。ああやってとんでもないものを見せておいて、それでも真剣に仕事をこなしてくれる人は信用できるんだとさ。まあ親父も今は市長なんぞやっとるが、根っこは頑固一徹の昔気質の船乗りなんだ。許してやってくれ!」


 それからバンバンとケビンとフェリスの肩を力強く叩いた。彼女からは妙な清々しさすら感じてケビンもフェリスもそれ以上何も言うことはできなかった。


「おーい! お前らどうしたんだ?!?」


 突如かけられた掛け声に振り返ると、そこにはどこぞへと消えていったジャックがいた。ジャックは近づいてくると、ケビンたちを見てニヤニヤしながら言った。


「なんだ~ケビン? 美女二人も両手に連れて楽しんでたのか?」


「バカ! ジャック!」


 ジャックの軽口にケビンはすかさず反応して、ジャックに事の顛末を説明した。ジャックはビックリしたように言った。


「なぁにぃ~? するとこのねーちゃんが本物の市長の娘でこの前会ったのは偽物だったってことか?」


 ジャックの無礼な物言いにアメリアは呵々と笑った。そしてジャックに近づき握手を求めた。


「改めて、オドラス市長の娘のアメリア・オドラスだ。よろしくなジャック・ブライアン」


 ジャックは差し出された手と自分の名を知っていたことに少々面食らったが、それから睨み返すように不敵に笑って手を握り返した。


「ああ、ジャック・ブライアンだ。今度こそ宜しく頼むよ。アメリアさん」


「アメリアで構わんよ。ケビン・ブライアンにフェリス・アービングもな」


 若干の皮肉も混じった物言いにアメリアはまた笑い、それから改めてケビンとフェリスにも握手を求めた。そして、三人に挨拶をし終えると、ジャックを再度見やってニンマリと笑った。


「それにしても、聞いてた通りいい体をしているじゃないか」


 そういってジャックの身体を裏拳でどんっと叩いた。ジャックは照れ臭そうに指で鼻の下をこすった。


「ふっ......さすがだなアメリア姐さん。わかるか?」


「ああ、かなり鍛えこんでいる。見事な大胸筋だ。柔らかくしなやかな上腕筋もいいな。どうだ? うちの船員になってみないか?」


「魅力的な提案だが、この仕事が気に入っているものでね。謹んで辞退させてもらう」


「そうか......残念だが無理にとはいえぬさ......」


 そうして二人で笑いあっていた。少しわからない世界に入り込んでいる二人にケビンとフェリスはげんなりしていた。


「キャプテン......そろそろ......」


 後ろに控えていた浅黒い肌の男がアメリアに忠言した。確か先ほどジェイドと呼ばれていた男であった。


「おお、そうだったな。その前に......この男はジェイド。私の右腕だ。よろしく頼むよ」


 ジェイドと呼ばれた男はぺこりと一礼だけした。無口な男のようである。


 アメリアはジェイドの態度に少しだけ困った顔をしたが、すぐに切り替えて本題に入ることにした。


「さて、依頼の件だが......ここではなんだからそこで話そうか」


 そう言ってアメリアが指さしたのは一軒の酒場だった。


☆☆☆


 酒場はまだ昼間ということもあってそこまで賑わっていなかった。アメリア、ジェイド、ジャックには酒を、ケビンとフェリスはまだ未成年という事もあってミルクが出されていた。


「「ぷはっーーー!」


「酒も行けるじゃないか! ジャック!!」


「アメリア姐さんこそ! 流石の貫禄だぜ!」


「惜しい! 惜しいなあ! お前がうちの船に乗ってくれたらいい船乗りなのにな!」


「はっはっはっ! だが断る!」


「「「......」」」


 アメリアとジャックが酒を気持ちよさそうに飲むのに対し、ジェイドは静かに少しづつ飲んでいた。大して飲めない組のケビンとフェリスは子ども扱いされて少し悔しそうであった。


「さて、依頼の話だったな」


 アメリアがケビンとフェリスの目線に気付いて苦笑気味に答えた。


「三人には密貿易の調査をしてもらいたいんだ」


「「「密貿易?」」」


 ケビンたち三人が疑問で返すと、アメリアは説明を続けた。


「うむ、まずこの国の貿易について説明しなければならんな。そもそもこの国で外国と貿易するのには二人の許可がいるのは知っているか?」


 アメリアが問うと三人は首を横に振った。


「うむ。この国で外国と貿易するには女王陛下と親父ーーオドラス市長の二人の認可がいるのだが......最近認可外の外国商人と貿易をしているものがいるようなのだ」


「なるほど、でもどうして密貿易なんかするんですか?」


 ケビンに聞かれると、アメリアは口に手を当てて考えた。


「そうだな......一番最初に考えられるのは関税を逃れるためだな。港を通すと余計に国家に払う分の税金がかかるから、それを逃れて差額で儲けようとするものだ。あとは御禁制の品ーー武器や薬......あとは奴隷とかだな。どれも我が国では禁止されているものだ」


「......あるいはその両方か......」


 ジェイドの言葉にアメリアは静かにうなずいた。どうやら二人とも静かに怒っているようであった。


 アメリアは三人を見つめなおして言った。


「君たちに頼みたいのはその密貿易組織の元締めの調査だ」


「なるほどね......だが今の話を聞いている限り、本当にそんな組織あるのか? 個人でやっていそうなものだが?」


 ジャックの質問に今度はジェイドが反応した。


「いる......カネの流れ、モノの流れ......明らかに増えているのに、関税が去年より減っている。このレベルのことをやっているのにばれないのは個人ではありえん......」


 アメリアも頷いた。


「その通りだ。だが一向に姿を見せない。恐らく我々では警戒されていて近づくとすぐに退散されてしまっている」


「それでわたしたちということね......」


「どういうことだ?」


 フェリスの言葉にケビンが返した。


「このレベルの任務なら本来は白銀級の守護士が当たるのが妥当よ? だけどフィルさんは有名人過ぎてこの町で調査したらすぐにこの人たちと同じようにばれてしまう。だから......」


「まだ顔があまり知られていない俺たちを使おうってわけか。この前のパンツ泥棒事件もテストだったのかな?」


 フェリスの言葉を引き継ぐようにジャックが言った。アメリアは少し慌てたようになった。


「誤解しないでくれ。君たちをあれで試したわけではないのだ。あれはあれで困っていたからな。ただあの任務で今回のも任せることができると思ったのも事実だ。気に障ったのなら侘びよう」


 アメリアに頭を下げられてケビンたちも慌てた。ケビンが真剣な表情で言う。


「顔を上げてください。俺らを認めてくださって光栄です。ぜひ任務を引き受けさせてください。ジャックもフェリスもいいだろう?」


「構わんぜ? 面白そうだ」


「私は報酬をいただけるならなんでも」


 二人の言葉にアメリアは頼もしそうに頷いた。それを見てジャックがアメリアに尋ねた。


「さて、肝心の調査だが、犯人の目星はついているのか?」


「ああ、これまでの調査で恥ずかしいことに身内に犯人がいると考えている」


 アメリアに言われるとケビンは意外そうにした。


「そうなんですか? さっきのダーモットとかいう人も相当怪しかったですけど」


 アメリアは首を横に振った。


「確かに、さっきの件から考えてもあいつも一枚かんでいる節はある。だがあいつは認可状を持っている帝国商人だ。関税を抜けるだけでそんなリスクを犯す必要がない。それに......」


「「「それに?」」」


 三人に問われると、アメリアは口をつぐんだ。


「いや、忘れてくれ。まだ確証はない話だ。いずれにせよ私たちの調査の動向がばれていることからも犯人は身内にいるはずだ......怪しいのは二人ーー副市長のラルバと船乗りたちの組合の組長のメイソンだ......この二人くらいしか私の動向を知るものはいないからな」


 アメリアの言葉にケビンは頷いた。


「わかりました。ではその二人の周囲を当たることにします」


「ああ、頼んだぞ?」


 そう言ってケビンは三人を代表してアメリアと握手をした。

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