中庭でBBQ
前回の続きです。
「ピンポ~ン。ナオト君こんばんわ~」
「こんばんわ、ナオト、今着いたよ」
「お、これは、棗さん、お宅もですか?」
「実はうちもなんですよ、柊さん。娘が突然言い出しましてね~」
「うちの娘もなんで、どんな相手か見ておこうと思いましてね」
呼び鈴を珍しく鳴らしたかと思えば、ほとんど同時に到着したみたいだ。インターホンの向こうから話し声が聞こえる。よく見ると、家の前に二台の車が止まっている。一台は物凄く高そうな黒塗りの高級車に見える。慌てて玄関へと向かい、今は使われていない駐車場に車を止めてもらえるよう、二人に頼んだ。そして二家族、六人が全員そろって車から降りて玄関へと来たところで、
「本日は突然、娘さん達を食事に誘い申し訳ありませんでした。皆さん、忙しいにもかかわらずおいで頂き有り難く思います。自分のたしなみ程度の料理なので、同級生同士で食べる程度の物ですから、大したお持て成しは出来ませんが、ゆっくりしていってください」
第一印象は大事と、全然使い慣れない丁寧語を間違いながらも駆使し、二人の両親へと笑顔でなんとか挨拶をすると、
「「合格~~~~」」
「うちの娘の見る目を疑ってたわけじゃないけど、今まで男の子の友達なんか紹介してもらったことがなかったから、どんな子かと思えば。さすが私の娘ね。文句ないわ」
「いえいえ、うちの娘の方こそ仲良くして頂いてるそうで。朝はやくからお弁当なんか、かいがいしく作る姿は、微笑ましい物でしたわ」
「お母様、恥ずかしいです。そんな事言われると」
「母さん、それ本人の前で言う事ないでしょ~」
「おいおい、奥さん、なに勝手に女性陣だけで盛り上がって、合格なんぞ出してるんだい。まだ家の中にも入ってすらいないのに」
「そうだぞ。まだまだどんな男か、見極めすらついていないんだ。そんな見かけだけで判断するのはやめなさい」
仲の良さそうな、二人の家族は楽しそう?に会話をしている。なので、家の中庭へと案内しようと近づくと、
「(今日は突然すまなかったね。娘の突然の頼みごとを聞いてくれて)」
「なっ、お父様・・・」
「(いえ、全然大したことありません。それ以上に娘さん達にはお世話になっていますんで)」
「「「ええ~~~」」」
「ほう、(じゃあ、今日は娘共々、ご招待に甘えさせて頂いていいかな、ナオト君)」
「(はい、構いません。ゆっくり楽しんでお帰り下さい)」
「「「凄~~~い」」」
「なんで、ナオト」
「すごいです、ナオト君」
「いやはや、さすが我が娘、これだけの語学がこの歳で出来る子を捕まえるとは。ナオト君、医者の私はドイツ語と、大学院までの外来語専攻で学んだフランス語で話しかけてみたが、その見事な受け答え、余程努力したんだろうね」
<あちゃ~、全言語理解が自動ででたんだ。>
<そのようですね。>
<済まないけど、うちの両親を使わせてもらおう。>
「いえ、自分が小さい時、両親が生きてた頃、知り合いの海外の方が結構頻繁にお出でになっていたので、自然に会話だけは、なんとか。日本独自のペーパーテストだと全然役に立ちません」
「いやいや、それでも素晴らしいよ」
「どうです、お父様」
「いやいや、奥さんも言った通り、素晴らしい子だね」
「京子から聞いてるよ、三人のなれそめは、不良から守ってくれた事だそうだね、ありがとう」
そう言って手を差し伸べてきた棗さんのお父さんに、こちらも手を差し出すと、突然、手を掴み柔道か何かの投げ技の体勢に持っていこうとされた。なので逆に手を横へと引き身体を側面にずらし、相手の体勢を崩してやると、
「おう、凄いな。警察仕込みのこの技を、突然かけられても、躱せるなんて。確かにこれなら娘も守れるか。いやいや、素晴らし子だね」
「でしょう、父さん。他のスポーツも、結構凄いいんだよ」
キョウコが、嬉しそうに父親に話し掛けている。突然の事で驚きはしたが、彼女達の楽しそうな様子に毒気を抜かれ、
「すいません、いつまでも玄関というのも皆さんに失礼ですので、案内しますから、中庭で食事でもしながらゆっくり話しましょう」
「「は~い」」
「そうだね、案内を頼むよ」
「よろしく頼む」
一旦区切りをつけてもらい、玄関前から案内を開始し、家の中には入らず建物の横を通り、中庭へ。そこに既に準備してあるBBQを焼き始める為、皆さんには、縁側の好きな場所へと座って頂いた。そして彼女達二人に、
「自分が今から焼くから、焼き終えたのを自分の家族に持って行ってあげて。二人のご両親はすご~~く上品そうな方達だから、取り皿とかもあるから、串から直接食べなくても、皿に移して食べる様にしていいからね。自分は田舎の子供らしくかじりつくけどね」
笑いながら、そう話し掛けると、
「うちでは出来ないので、してみたくはありますね。丸かじり」
「私はBBQなら、串からたべれるわよ」
焼きあがるまで、そんなことを話していると、
「ナオト君、家が近い事もあり、娘たちが仲がいいもんで私達二家族とも親しくさせてもらってるんで遠慮なんかない関係なんだが、今日からは君も、その中に入って仲良くしてくれると嬉しく思うよ」
「そうよ、ナオトさん。私達を親と思って遠慮なく接してくださいね」
自分に掛けられたそんな温かい言葉に、
「ありがとう御座います。今日から甘えさせて頂きます」
「あ~私には丁寧語も要らないぞ、そんな言葉、家では使わないからな、な、京子」
「そうね、父さん」
二家族とも和気あいあい、そんな言葉が似あう様子に、ついつい微笑みが漏れてしまう。そんな感じで皆を見ていると、
「静香、凄く感じのいい子ね。頑張りなさい」
「え、京子も負けないように頑張るのよ」
などという、判らない言葉が飛び交っていた。金網の上の物と格闘している間はこちらに話が飛び火する事は無いだろうと願いながら。炭で焼いている為、中まで火を通すのに時間がかかったが、第一弾が出来たので、
「二人とも、焼けたよ、取りに来て~」
「は~い」
「了解、ナオト」
結構大ぶりの物を一人二本ずつまわし、一旦誰かが音頭を取るかなっと思って待っていると、
「ナオト君、ご挨拶」
「ナオト、乾杯の音頭を」
「え~、自分なの?」
「「主催者、でしょ」」
「あ、確かに言いました。それでは、今日来てくださった、優しい皆さまの心遣いに感謝して、今日の出会いに・・・」
「「「「「「かんぱ~~い」」」」」」
「乾杯です。さあ、食べてみてください。自分は美味しいと思った物ですが、皆さんのお口に合えばいいんですが・・・」
そう言って皆さんに箸をすすめると、一口、口にし表情を変え全員が、
「「「「おいし~~~~い」」」」
「「う、うまい」」
「なんだ、このお肉は。私も色々な場所で食事をしてきたが、こんなに美味しい物を食べた事がない」
「肉だけでも二種類、それに野菜の組み合わせで、食感と味がこうも変わるとは。これは食べ飽きんな」
「ま~、ナオトさんが仕入れられたお肉なんですの?素晴らしいお味ですね」
「野菜も瑞々しいわ、凄く健康に良さそう」
「全部、調理もナオトさんが?」
「はい、皆さんの為に準備させていただきました」
「美味し~~い、ナオト、また食べに来ていい?」
「あ、私もです。宜しいですか、ナオト君」
「うん、もちろん。いつでもどうぞ」
「え、毎日でも?」
「それは、ご両親に怒られるんで駄目です」
「あはは、そうですね。でも本当に、偶にならいいですか?」
「毎日夜は自炊で食べてますから、同じもので良ければいつでもどうぞ」
「「じゃあ、遠慮なくお邪魔しますね」」
「娘たちをよろしく頼むよ、ま~たまには今日の様に家族も集まらせてくれれば嬉しいが」
「娘さんたちが来る時は是非、ご一緒に。賑やかな食事は自分も楽しいですから。いつもは一人なんで」
「じゃあ、そうさせてもらうよ」
「はい」
二家族とのBBQは楽し気な雰囲気のまま、時間が過ぎていくのでした。
よろしくですです。




