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床屋じゃなく?

友達付き合いのお話が半分で・・・

 「とうちゃく~」


 あるお店の前に着くと、元気に棗さんが声を上げた。しかし、自分としては、目の前にあるドアが、異世界につながる謎の扉の方がまだ通りやすいような物に見える。


 「ええ~と、ここ?」


 「そ、そ、ここ」


 「帰っていい?」


 「え~さっき拒否権ないって言っておいたじゃん」


 「だってここって、あれでしょ、美容院とかいう、お洒落さん御用達のとこ。自分なんかは自宅で、はさみで鏡を見ながらてきと~とか、おっさんが個人でしてる床屋で充分なんで、こんなとこ無理だって。だいいち入っても追い出されるよ」


 「あ~もう、往生際の悪い。さっさと入る」


 「さ、入ろ神出くん」


 無情にも自動扉が開き、中へと連れ込まれると、一斉にこちらに向けられる、従業員とお客の視線が痛い。なので今にも踵を返しそうになるが、がっちりとホールドされた両腕が解放されるはずもなく、


 「エミさ~ん、きたよ~」


 「いらっしゃい、二人とも。今日はどっちのカット、棗さん?柊さん?」


 「この真ん中の、見えません?」


 「え~と、この方?」


 「あ~、やっぱり普通ならこういう対応になるのか~」


 「今からが見ものだね、なっつん」


 「二人して、不気味な笑い浮かべてどうしたの。野暮ったいその子と関係が?」


 「エミさんに、こいつに似合う髪型にしてもらいたくって」


 「ちょっと、騙されたと思って試してみてください」


 「今一何なのか判らないんだけど、その男の子をカットしてあげればいいのね」


 「え~と、嫌であれば二人に言ってくれれば帰りますので」


 「「あなたはだまって」」


 「すいません」


 「男の子相手に随分威勢がいいのね~」


 「なんか、この人相手だと素でいけるんです」


 「だよね、だよね、しぃ~ちゃん。そんな感じだよね」


 「と、二人が盛り上がってるとこ悪いけど、じゃあ君、こっち来て」


 「今更だけど、拒否権は?」


 「「「ない」」」


 「う~ん、この髪の量だと、霧吹き程度では湿らすの無理かな、一旦洗うか~、じゃあ向こうの洗面台に」


 そう言って連れていかれ、椅子に座らされると、タオルを何枚もかけられるなど、これホントに必要?という様な念入りな準備を整えられ、シャワーの準備をし温度を整え、いざ頭の方へとお湯を掛けようとして髪を後ろへと全部流すと、露になった顔を見て、エミさんという方が、固まってしまった。その後何時もの如く室内へと響き渡る叫び声。


 「え、え、なに、なんなの~これ、ドッキリ~~?カメラは?」


 「あ~やっぱり叫んだね」


 「そだね、なっつん」


 「ちょ、ちょと二人とも、こんなの何処から攫ってきたの?タレントやモデルは事務所通さないと、勝手にカットとかできないよ。これ役作りかなんかで伸ばしてるんでしょ?」


 「いえ、そいつは、一般人でただ顔隠しに伸ばしているだけなんで、遠慮なくやっちゃってください」


 「いいの、ホントに、良いの、私好みにしちゃっても?」


 「「OKです、エミさんの好きにしてください」」


 「え~と、顔隠すぐらいで、というのは?」


 「「「もちろん、駄目です」」」


 「顔出すの嫌で自信ないから心配だろうけど、絶対大丈夫だから、私達を信用して」


 「うん、絶対嘘言わないから」


 「皆に好かれてる、二人がそこまで言うんだったら」


 「「ありがとう」」


 そんな会話をしていると、盛り上がってるエミさんは、


 「あ~、二人に感謝よ。そんじょそこらのカットモデルより素晴らしすぎて、どんな髪型でも似合いそう。あ~悩むわ~、あ、君今度から髪切るのこの店一択ね、必ず来ること。その代り料金なんかはいらないから、私の専属のカットモデルお願いね、切り終わった後イメージ残す為写真1枚写すだけでいいから」


 「「エミさん、その写真、増しお願い」」


 「了解。二人には特別に回してあげるわ」


 女性陣は話で盛り上がりながらも、その後はカットの方へと移動をし、さっきの叫び声のせいで他の客の注目を浴びるも、居直り続ける。目の前にある鏡を見ながら、バッサリ、バッサリと切り落とされていく自分の髪に、ホントに大丈夫?などと考えながら、するに任せていた。


 「どお、二人とも、こんな感じで」


 「いいですね。凄く、ね、なっつん」


 「スッキリして、爽やかな良い感じ。ほんと別人、ね、しぃ~ちゃん」


 三人が三人とも満足げな顔をしている。なので個人の意見として一言。


 「あの~顔隠せませんが?」


 「「まだ言うの、それでいいの」」


 「そうかな~、皆嫌がらないといいけど」


 「嫌がりはしないけど、騒ぎにはなると思うわ」


 「じゃあ、駄目じゃん」


 「「それでも、それが良いの」」


 二人に取り敢えず納得させられ、店を出る事に。お金を払おうとして、


 「私らがお礼にと連れてきたんだから、二人で払うよ」


 「そうよ、なっつんと払うから、大丈夫」


 「いや、紹介してカットして貰えただけでいいから。自分の髪切るの女の子に出させたら恥ずかしいしね」


 そう言って、エミさんに料金を訊ねようとすると、その返事が、


 「さっき言ったじゃない。無料よ、無料。その代り、今後ちゃんとうちに来ること。わかった?」


 「本当にいいんですか?」


 「いいの、いいの、お姉さんにまかせなさい。充分他のお客様にも眼福もので、口コミの客寄せにもなるから、ドーンと任せて」


 などという、訳の分からない豪快な返事が返って来た。なので三人お礼を言いながら、お店を出ると、二人が、


 「「じゃあ、用事も済んだし帰りましょうか」」


  その言葉に、ようやく解放かと、


 「うん、じゃあ、今日はありがとう。それじゃあ・・・」


 「「ちょっと、まって」」


 「うん、なに?」

 

 「なに一人で帰ろうとしてるの」


 「え、もう帰るんでしょ?」


 「そうだよ、取り敢えず三人で貴方の家に」


 「え~~~、なんで、どういうこと?」


 「明日、貴方が困らない様、迎えに行くから。場所判らないと行けないでしょ」


 「なっつんと、朝迎えに行くからね~」


 「それこそ、どういうこと?」


 「髪型変わって顔みえてるから、周りから騒がれていろいろ言われるの面倒でしょう。呼び留められたりしない様、二人でガードしてあげるって言ってんの」

 

 「友達に任せてね」


 「そこまで気を遣ってくれるんだ。ありがとう二人とも。流石、みんなに愛される誠凛の二大美女だね」


 「「愛されるだなんて~、そんな~」」


 何故か身もだえしている二人を連れて、自宅への帰路を進んで行くのだった。

よろしくですです。

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