新学期開始
学校生活再びです
神出直人の朝は早い。6時前には起床し、身支度を整える。時間割の確認などもおこない、忘れ物がないかの確認をする。そして6時半には家を出て、途中のコンビニに立ち寄り、朝食の分と昼食の分のパンと飲み物を購入し、イーストコーナーで食事を済ませ、いざ、学校へ。
<まだ、誰も来てないと思いますけどね。>
<それが、いいんじゃん。誰とも顔を合わすことなく、自分の席に着き、うつ伏せになり、その日が無事終わるのを待つ。前までは、城野達に何かと呼び出されてたけど、最近それもないし、毎日が平和で。>
<今日は始業式ですか?>
<うん、だから半日で帰れるよ。いつもの様にお昼の分もパン買っといたから、学校か家かで状況に応じてお昼を済ませよう。>
<何か予定でも?>
<向こうにいる間はレベル上げ兼ねて、冒険者稼業で目一杯だったから、久し振りに本屋にでも行こうと思って。なんか面白いラノベの新作入っているといいな~。>
そんな期待を胸に何時もの如く無人の教室へと向かった。学期初めの初日はいつも講堂で有り難いうえ途轍もなく長い、校長先生からのお話が有るのだが、列に並ぶと近寄るなと言わんばかりの、周囲からの視線が酷いので、いつも教室で待機である。この教室では自分がいなくても誰も騒ぐこともないので、(よくケガで休むので)出席の確認もない全校集会はよい安息期間である。
暫くすると時間に早めの生徒がちらほらと登校してくる。教室に荷物を置き仲の良い者が来るのを待ち、来ると同時に会話を始める。そんな日常が開始され、一旦全ての生徒がそろう定時に近づくと、人数に応じて、室内が騒がしくなった。それを打ち破る様に、前のドアが開くと担任である、浅野先生が、
「静かに~。今日は始業式なので一旦講堂に集合。いつもの様に、学年、クラス順で並んで騒がず全校生徒が揃うのを待つように。以上」
その言葉だけを残して去って行った。クラスの生徒たちもいつもの事と、移動を開始する。自分は当然そのまま居残りを決め込み、平穏な時間を享受すべくうつ伏せのポジションを調整しながら、仮眠の世界へと赴くのだった。
どの位たったのか、教室がだんだん騒がしくなってっ来たので、意識が戻って来た。どうやら集会は終わったようだ。そうこうしているうちに担任の浅野先生が教壇に立ち、今学期の活動予定と注意事項を黒板へと板書しながら説明し終えると、本日最後の仕事、教卓への各自夏休みの課題の提出をしながらの下校と相成った。当然の如く自分はクラスメイトが全員帰ってから帰るつもりでうつ伏せのまま時を待っていた。
人の声がまばらになったころ、体育会系女子の鈴井さんがよく通る声で、
「残ってる男子すぐに教室から出て行くように。今からちょっと用事があるから、私達6人残して今日はもう帰ってね」
集まっている女性メンバーを見て、男性陣も渋る事なく即座に出て行った。それを確認した彼女は、
「取り敢えず、人払いはこれでいい?棗さん?」
「有難う、鈴井さん、女の子2人だと心配だからね、協力してくれる皆もありがとう」
「どういたしまして。棗さんと柊さんが、誰もいなくなった教室で、いきなり声掛けたらどうなるか判らないもんね」
だいぶ物騒な会話が聞こえてきたが、男子全員退去という事なので、自分もなのか?と思いつつ周りの様子を窺おうとすると、今会話してた女性陣が机の前に集まってるような感じがした。そっと薄目を開け頭を上げず、視線を下に向けると確かに人の足が並んでいた。
<うん?何事?>
<囲まれてるようです。>
<何故に?誰に?>
<何故かわわかりませんが、誰なのかはわかります。>
<んで、誰?>
<夏休み、街で助けた女性かと。>
<うは~最悪。その二人、まじで男女ともに人気あるから。受け答え次第で仲間外れ確定された男子も居たとか。ま~自分はすでに全生徒から仲間外れだったんですが。>
ある意味手遅れの好感度のなさに打ちひしがれながらも、脳内会話を成立させる。こちらから話し掛けるべき言葉がない以上、受けの姿勢以外対応の仕様がないのだ。なのでうつ伏せのまま待っていると、
「ねぇ~、ちょっと、あんた。そこのキモデブ。聞こえてるんでしょ。返事位しなさいよ」
「あ~なに、男子全員退室だから自分も出てけってこと?ならすぐ出るから、場所明けて」
「話し掛けられてるんだから、顔位上げたら」
「いやいや、今までさんざん全員から見るの嫌がられた顔を、人がいる時あげられるわけないでしょ?」
「う、それは・・・クラスの皆が悪かったと思うけど・・・取り敢えず今は私達が話し掛けてるんだから、ちゃんと会話しなさいよ」
「今会話してるけど。それに自分には用事ないし」
「あんたね~せっかくこの前のお礼を言おうと思って、しぃ~ちゃんと2人ここに来たのに」
「2人?」
「そりゃ~それ以上の人数いるけど仕方ないでしょ、男性相手に誰もいない教室なんて」
「あ~この前襲われたばかりだから気持ちは判るけど、でもこの前言ってたじゃん、こんなことしても恩になんか着ないって。自分でもそれでいいと思て助けたから、お礼なんていいよ」
「そのセリフ、やっぱり間違いない。こいつ本人だ。間違いないよ、しぃ~ちゃん」
「うん、なっつん。その言葉聞いてるのあの場に居た、私達だけだもん」
「皆にも説明したよね、助けられたって。でもね、あの後見た人がこいつと同一人物とは思えなかったんで、確認の為に皆に協力を頼んだんだけど。あんた誰?」
「顔を見せて説明して」
「あの~なんの話でしょう?自分帰っていい?」
「だからクラスメイトの私達にあんたの今の顔を見せなさいって言ってるの、それとあんたの名前は?」
「うは~、陰口もきついけど流石に正面から言われたら、こたえるわ。今更名前を訊ねられるなんて」
「いいから答えなさいよ」
「神出直人。これでいい?棗さんに、柊さん」
「じゃあ、顔を上げてそこに立ってみて」
「周りの皆にも聞いとくよ、キモイとかいう為だったら流石に了承できないから」
「そんな事言わないから、早く。皆私達の言葉が嘘っぽいって信じてくれないんだから。ほら」
「じゃあ」
机の横に立ち上がる、すると小さな声で周りから、うそ~あんな身長あった~。ないはず、チビデブだもん。という声が聞こえる。やはり誹謗中傷かと、
「チビデブで悪かったね、用事は済んだ?じゃあ帰らせて」
「あ、ごめん。皆あれほど言ったのに。それもこれまでの行いか、信じられないよね。でも最後に帰る前、その前髪あげて顔を見せてから帰って」
「あ~もう、判ったよ。馬鹿にされるのも初めてじゃないしね。城野達にも散々見世物にされて笑われてたし・・・じゃあ、はい、これでいい」
そうやって前髪を搔き揚げて顔を見せ、用事は済んだとばかりに教室を出た。その後教室から女性たちの悲鳴らしきものが響き渡ってきたので、
「そんな声上げる位なら顔見せろなんて言わなければいいのに、傷付くな~」
そんな独り言を呟きながら、学校を出て、気分直しに人の少ない穴場の本屋へと向かうのだった。
よろしくですです。




