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制服

抜けてる主人公

 夏休み最終日早朝、こちらの世界へと戻って来た。本来なら昨日の夜には戻っているはずだったんだけど、暫く会えないという事で、送別会みたいなのを開いてもらった。最初は落ち着いた雰囲気での集まりだったんだけど、向こうは成人が15歳ということで、途中からお酒が入り、ミゲルさん達3人パーティーが騒ぎ出すと商店の方達も騒ぎ出した。小さい街という事で、知り合った方は殆ど来てくれていて、次はいつ戻るのかの質問の大合唱だった。別れを惜しんでもらえるとは思ってもいなかったので凄く嬉しくて、月に2~3回は帰ってきますと言ったら、


 「なんだ、すぐじゃね~か。こら~湿っぽくする必要なんてねえな。おい、みんな騒ぐぞ~」


 というエドガーさんの掛け声とともに、大宴会へのモデルチェンジを果たした。まぁ、自分としても湿っぽいのよりも好ましかったので、そのまま放置してたら、朝まで騒ぐことに。多分皆騒ぎのネタに飢えてたんだろうね。その中でも、心に残ったのが二つ。


 「マ、マ、マ、マヨネーズを大量にお持ち帰りください。あ、あれは売れます、絶対です。だから是非、是非」


 ゲイリーさんとは思えない、落ち着きのない態度での熱弁だったので、必ず多めに持ち帰ると約束をした。最後に極めつけはサラシャさんの、


 「なるべく早く帰って来てね。待ってるからね」


 だった。普通の人なら好きだと勘違いしそうなその言葉に、ついつい自分もつられそうになったが、よく考えたら相手は自分なのである、多分そんな意味でなく誰にでも優しい彼女の事だから、手のかかる弟みたいなのが居なくなるのが寂しいんだろうと思い直し、笑顔で、


 「はい、寂しがらせない様、なるべく早く帰りますね、サラシャさん」


 と、言葉を伝えると、寂しいのがばれたからなのか、真っ赤になって俯いていた。


 <天然ですね。>


 ケイさんからの謎の言葉を頂きながら、夜明けまで続いた宴も終わりを迎えたのだった。


 そんなこんなでこちらに帰り着いた今、いったん休憩を入れたい気分でもあったが、トンボ返りで数回帰って来ただけの家は、埃っぽい感じがするので掃除もしたいし、新学期の準備も・・・


 「あ、やばいかも?」


 <どうかされましたか?>


 <春先から伸ばしてた身長のせいで、夏休み前には制服が結構短い感じだったんだけど、今だと・・・>


 引っ張りだして来てみると、チンドン屋のようであった。手足とも八分丈位の感じで腰回りも少し緩い。別人用の制服を着てる感じで違和感が半端なかった。


 <うわ~朝気付いてよかったよ。今なら学校指定の制服屋さん、開店同時に行けば直しの作業も夕方には上げてもらえると思うから。>


 <ギリギリでしたね。>


 身支度をさっと整えて、街へと繰り出す。ロールアップしてたジーパンがいつの間にかおろしても短い位に。


 <うわ~まじか?>


 <春に163だと記憶していますので現在178ですので15cm伸びてます。加えて手足にも特別に補正を掛けましたので、そうなるのも無理のない事かと。>


 <そうだよね~それに今まで気付かない自分。いつも何か一つ抜けてるんだよな~。>


 <でも、それを自覚し、直そうとなさるのは貴方様の良い所だと思います。>


 <ありがと~、ケイさんと話してると、昔と違って自己嫌悪に歯止めがかかるから、必要以上に落ち込まないで済んで、とても助かってるよ。>


 <それ程の事はしておりませんよ。>


 <いいや、自分の気持ちなんだから良く判るよ。改めてありがとうケイさん。>


 <そのお言葉、有り難く受け取っておきますね。>


 <うん。>


 春先から続く脳内会話にもなれ、歩きながらでも違和感なく出来る様になっている。はじめの頃は頭の中に響く声に戸惑たものだった。それに気を遣ってくれていたのか最初の頃は必要な事のみの会話だった。今では日常の事でも相談に乗ってもらえるようになって、とても助かっている自分がいるので、このままいい関係でいられればいいと心から思うのだった。


 街に着き、制服屋に辿り着くと、中に入る。学校指定なのでデザインなど選ぶ必要のない物なので、素直に店員の前に行き声を掛ける。


 「あの~スイマセン。制服を買い直したいのですが、今の正確なサイズが判らないので、それを含めてお願いしてよろしいでしょうか?」


 「・・・」


 「あの~スイマセン?」


 「・・・」


 此方を向いてはいるみたいなんで視線は感じるんだが、返事がない。新手の無視を決め込まれたのかと落ち込みつつも、もう一度こえをかけてみた。


 「あの~スイマセン。制服を買い直したいのですが?」


 少し大きめの声で話しかけると、我に返ったように顔を赤くして、


 「は、はい、すいません。い、いらっしゃいませ。せ、制服ですか何処のでしょう?」


 「近くにある誠凛高校です」


 「は、はい判りました、でサイズの方は?」


 「あ、スイマセン、今のサイズが判らないので、そこから宜しいですか?駄目なら自分で測りますけど?」


 「あ、あ、だ、大丈夫です、計らせてもらいますね」


 そう言ってメジャーをもって恐る恐る近寄っている感じで、後ろに回って測り出した。


 <嫌なら嫌でいいのに、ここの店員さん責任感強そう。去年の春先に買いに来た時も断られて、自分で測ったしね。他の服屋でもそうなんで、嫌な気分だけど、慣れたよ。>


 <今は、別の意味で近寄りがたいんだと思いますけどね。>


 <う~ん、身長伸びたから、ブサイクなうえに威圧感も出てるのかな?気を付けよう。>


 <・・・>


 「お、お計りしたサイズで、お揃えした、せ、制服がこちらになりますが、お直しは自宅で、それとも、こ、こちらで致しますか?」


 「明日から学校が始まるので、今日中に上がりますか?」


 「は、はい、お急ぎなら、今日中にあげさせていただきます~」


 「あ、では、お願いします」


 「受け渡しの為に、お、お名前をお伺いしても宜しいですか?」


 「神出直人といいます。夕方取りに来ますけど、お支払いしておきましょうか?」


 「か、神出さまですね。お代は受け取りの際で構いません。夕方までに仕上げて、お待ちしておりますので、4時以降でお願いします~」


 「こちらこそ、急ぎを頼んでしまって申し訳ありませんが、宜しくお願いしますね」


 お店を出て、自宅に持っている服も、サイズがあわないのが目立つので他の服屋へと向かう。すると軒並み、さっきの制服屋さんと同じ対応をされてしまった。


 <向こうで、鍛えたんで、結構威圧感あるのかな~?>


 <威圧感は、ないので大丈夫だと思います。>


 <じゃあ、なん・・・あ~~髪おろすの忘れてた。それでか~。この顔丸見えじゃ、皆ああなるのも仕方ないね。今度から気を付けないと。まだ、向こうの気分が抜けてないみたいだ。>


 <まあ、顔のせいではあるとは思いますが・・・>


 <そうだよね、まだ努力中だもんね。また始めるかな顔。>


 <いえ、それ以上は本当にやめた方が良いと思います。>


 <う~~ん、そうだよね。親に産んでもらったんだもん。原型無くすほどは駄目か~。>


 <はい、今ぐらいでいいと思いますよ。>


 <じゃあ、しばらくは様子見でこのままで。>


 <はい。>


 取り敢えず、全ての服の手直しがあがる夕方まで、家へと戻り軽い掃除と換気を行い、時間までゆっくり休憩を取って、頃合いを見計らい、街へと服を取りに出掛けるのだった。



よろしくですです。

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