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街での出来事

現実世界で

 元の世界の部屋へと戻ると、向こうで着ている厚手の服から、こちらの私服に着替え街へと出掛ける事にする。一人暮らしではあるが、食料品なんかは何日か分ずつ買い込むようにしているので、学校以外では其処まで頻繁に外出する事は無い。なにせ友達もいないのだ、遊びに行く相手さえいない。ジーパンにパーカーという無難な恰好ではあるが、パーカーは顔を隠したいとき非常に役に立つ、(フード部分を被ってる奴を自分以外見ないが)外出着のベストチョイスなのだ。向こうでサイドに流している前髪を下ろし、知り合いに会わない様祈りながら家を出た。


 流石に夏休み六日目、あと二日で八月に入ろうとしている陽気の中、連れ立って遊びに来ている学生の姿が結構目に付く。なのでゲーセン、カラオケ、映画館等、彼らの居そうな所は極力避け、必要な物の有る処へと脇目もふらず進んで行く。今日のミッションは金物屋だ、そこへと非難の目を向けられず用事を済ませるという作戦を敢行した。店の中に入り、鋼製とパッケージに書いてある大ぶりの包丁の良いものを購入する為、レジに行くと店主から何に使うかの質問を受けたが、(料理以外に使う事があるのか?)一人暮らしの為古くなった包丁を買い直しに来たと伝える事で事なきを得た。

 料理というキーワードに自分のラノベ脳が反応し向こうの世界の調味料関係の需要はどうなんだろう、と考え金策の為一通り買っていくかと食材店にも寄っていく。砂糖や塩は袋買いで、売り物ではなく自分の為に米なども買い込むと、ステータスのおかげで重くはないが、結構な量の荷物になってしまった。そこで人目に付かないような裏通りへと向かい、収納に放り込んで置くまではよかったのだが、少し先で繰り広げられる光景にどうしたものかと悩んでしまう。自分は助けられた事は無い、無いのだが、両親の生前言っていた、自分の心の思う正しい方へと真っ直ぐ素直な人間に育って欲しいから、貴方の名前は直人なのよとの言葉が頭の中に浮かんでくると、たまらず前へと歩き出した。


 「いや、あんた達なんかとは遊ばないって言ってるでしょう。手を放して」


 「おいおい、つれない事言うなよ、俺たち乱鬼龍が声かけてやってんだぞ」


 「俺たちチームとちょっと付き合や~この辺でいい顔できるんだ」


 「そんなの関係ない、放して」


 「二人して暴れんなって、もうすぐ皆のとこだからよ」


 数人の男たちに囲まれ、手を無理やり引きずられるように連れていかれようとする泣きそうな女の子達をみて、


 <あちゃ~呪われてる?>


 <そんなことわないと思いますけど、神たちに聞いておきますか?>


 <いや聞かなくていいから。>


 咄嗟に悪態をつきたくなる。我が校の二大美少女と呼ばれるうえ、クラスメイトでもある目立つ二人と男たちの間に入り込み手を振り払ってやる。突然の事に両方の者達が唖然とする中、声を掛ける。


 「二人とも逃げて、ここは何とかするから」


 その声を聴き我に返った双方の女の子達はこちらを一瞥すると何時もの視線を投げ掛けつつ、


 「その髪型に、その声、キモデブじゃん、こんなことしても恩になんか着ないんだからね」


 「そんな事いいから、この隙にいこ、なっつん。はやく」


 そうして慌てる様に後ろの方へと逃げ出した。その様子を見終わり逃げ出せたことを確認すると、機嫌悪そうな男たちが目の前で、


 「いいかっこしやがって、俺たちの楽しみを邪魔したんだ、どうなるか判ってんだろうな」


 「皆の処に連れて行こうぜ、かわりのストレス発散の道具になってもらわないと」


 今度は自分の周りを囲み、連行されるが、ま~彼女達の時間稼ぎの為にも付き合いますかと、目的地へと辿り着くと、


 「おい、女はどうした?いい女を見掛けたから連れて来ると言ってたんじゃないのか?」


 「俺たち皆を待たせておいて、野郎~一人連れ帰って来るとはどういうことだ」


 「おい、お前ら理由はあるんだろうな?」


 「は、はい、矢田さんスイマセン。この野郎がうちの名前を出したにも関わらずいいかっこして出て来やがったんで、見せしめのためにもヤキ入れようと思いまして」


 などというどうでもいい会話を聞きつつ、覚えのある名前に、


 「うん?矢田?」


 と、ついつい声に出してしまうと、切れた野郎どもが、


 「あ、お前、なに矢田さん呼び捨てにしてるんだよ」


 「ふざけてんのか~こらぁ~あぁ~」


 「うちの頭~呼び捨てた~頭おかしいんじゃね~か~」


 城野達から散々聞かされた威嚇の声を聞き流しつつも、その矢田という人物へと視線を向けてみると、目線が合う。なので、


 「あ~腹パン以来ですね、体調よくなりました?」


 その言葉を聞いた途端、顔つきを変え、


 「おまえら~誰連れて来てやがるんだ~~、あ~。お久しぶりっすね。下の奴らがスイマセン。もう二度と声掛けない様、厳しく言っときますんで、全員許してやってください」


 「さっきの女の子達はクラスメイトなんで何かあったら城野に聞いてまた来ますから、くれぐも他の人達に伝えといてくださいね」


 「判りました。おい、野郎ども行くぞ」


 「でも、こいつ・・・」


 「いいから行くぞ、とお前後で締めな」


 「な、なぜ?」


 周り中の男たちを連れ車に乗り込み集団で去っていった。車の巻き上げる風でパーカーが捲れ上がると直接前髪が風に揺れる。さらけ出された顔を慌てて前髪で隠しその場を離れると、自宅への帰路をもう何事も起きない様にと、シリステラ様を思い浮かべながら頼みます、頼みますともう一度祈る感じで帰るのだった。少し離れた場所で、真剣に様子を窺う様に覗き込んでいた逃がしたはずの女の子達には気付かずに。そしてその後響き渡る驚きの声に。


 「「あ、あれ、誰なの~」」


 


 

よろしくですです。

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