武器屋と鍛冶屋
武器職人なら頑固一徹=ガンテツかな、かな?
「おはよう、ナオト君」
「おはようございます、サラシャさん。今から朝食ですか?」
「そうよ、一緒にどう?」
「じゃあ、お言葉に甘えさせて頂きます」
身支度を整え一階の食堂に向かい、居合わせた彼女へと朝のあいさつ程度の会話を終え、パンとスープといった軽めの朝食を頂きながら、本日の予定を考えていると、視線を感じ目を向ける。こちらをジーと見ていたサラシャさんに、
「あんまり食事時に眺めて楽しい顔とは思いませんが?」
「そんな事は無いと思うけど?所でこの後の予定は?一緒にギルド行く?」
「サラシャさんは、ご出勤ですか。自分も後では伺いますが、依頼を受けるにしてもその前にちゃんとした装備を見てこようと思うので、武器屋などに寄ってから伺おうと思います」
「じゃあ、私は先に行ってるわね。武器屋では知らない顔だからって高く売りつけられないよう注意するのよ」
「今は、手持ちがないので、値段の確認だけですから大丈夫だとは思いますが、気を付けます」
「はい、気を付けて行ってらっしゃい」
「はい、行ってきます」
宿を出て昨日教えてもらってるギルド近くの武器屋へと足を向ける。防具までは買えないかもしれないが、取り敢えずは武器だけでも値段を確認して、ギルドで受け取れる昨日の素材の代金で購入しようと思っている。向こうの世界では大型量販店でセルフレジで購入してたので、個人店の様なとこでうまく買い物できるか心配ではあるが、(店員の蔑む視線が痛すぎて長居しずらい経験があり、個人店は苦手意識が強く出る)此方の世界では今のとこ、嫌なタイプの人とは出会っていないのでチャレンジしてみようと思う。
お店へと辿り着き中に入るとやる気のなさそうにカウンターに頬杖をつく男性の店員が居た。こちらを一瞥した後、声を掛けてきた。
「あ~買いたい品物があったら声を掛けてくれ」
「判りました、後程声を掛けさせて頂きます」
その一言で関心をなくし、またぼおっと宙を見ている感じに戻るその人物を尻目に、短剣だけを重点的に鑑定を使い調べていく。一番ましな物で、
短剣
攻撃力+10
この街の鍛冶師が作った普及品
後の品物は10以下の補正しかない物ばかりだった。なので取り敢えず交渉術を意識して店員へとその品の値段を尋ねてみると、
「あ~その品ね。いい目利きしてるじゃないか。この店の短剣では一番の業物で、値段は金貨三枚と言うとこだな」
確かにこの店一番と言うのには間違いないが、真っ赤なエフェクトを纏いながら値段を告げてくる男にやや信用性を無くしつつも、交渉の為の値段かと声を掛けると、
「もう少し安くなりませんか?そんな品質には見えませんが」
「それなら買わなきゃいいだろう。どのみち街の冒険者だけ相手に商売してるんだ。これ以上の物が出来ても鍛冶屋も高く買ってくれる他所の街に流しちまうからな。嫌なら他所で買うこったな」
そのやり取り自体でもうこの店からの購買意欲は無くなり、商品を戻すと早々に外に出た。防具屋や道具屋ももう寄る気にならず、ギルドへと真っ直ぐに足を運ぶと窓口から手招きをする彼女の元へと向かいさっきのやり取りを相談し、鍛冶屋自体の場所を聞いてみた。
話を聞き終えた彼女は憤慨しつつ、
「ま~鍛冶屋もこの街では売れ行きが悪すぎて他所の街に武器を売りたくなるのも判るけど、それでも最近の武器屋の評判は悪すぎるのよ。なのでぼられない様に朝注意したんだけど、ここまで酷くなってるとわね~、後でギルマスに相談してみるわ。で鍛冶屋の場所ね、火を使うし騒音なんかの問題もあるんで町はずれの区画にまとまってあるけど、行ってみる?」
「顔を出してみたいと思います」
「武器職人なら、ガンテツさんね。場所はこの辺りよ」
簡易の街の地図を見せながら教えてもらい、自分のマップスキルと照らし合わせ方向は判ったので、
「今から言ってみる事にします。その後また顔を出しますので」
そう告げて、一旦ギルドを後にした。この街に来た本来の目的である武器に関しての問題が、早くも難航していることに悩みつつ、目的地に向け歩いて行く。まだまだ土地を購入するような事は出来ないので、資金を貯める為にも狩りの為に使える様な武器が欲しいのだ。直接交渉になるが仕方ないかと思いつつ、鍛冶師の集まる場所へと赴くと、
「すげ~、鉄を叩く凄い音。確かにこれじゃ街中には建てられないな」
<そうですね。直人さんが購入する場合でもこの区画になると思います。>
<ならば立地も踏まえて見て回るかな。異世界転移があるんで二度手間だけど行ったことある場所になら向こうの世界経由でどこにでも行けるから、安くて住みやすい土地がいいよね。>
<そう思います。>
何件かの鍛冶師を訊ね、サラシャさんに紹介してもらったガンテツさんの工房を探し当てると扉を叩いても無駄そうな音が響き渡っているので、入ってみる事にした。
「すいませ~ん、ガンテツさんの工房でしょうか?」
返事がないので、音の聞こえる奥の方へと進んで行くと、熱気も凄いことながら、真剣な顔立ちで集中して鉄を打つ、がっちりした体格の男が目に付いた。余りの真剣さに声を掛ける事を忘れ鍛冶の仕事を眺めていると、ようやく一区切りついたのか手が止まる。そして知らない自分が入っていることに気付き、
「おい、小僧。なんのようだ?勝手に入ってきやがって」
「あ、申し訳ありません。ギルドの職員の方に紹介して頂いて伺いましたナオトと言います。武器が欲しいので相談に参りました」
「武器なら武器屋があるだろう。なぜここに?」
「失礼ながら、この街のお店には自分が使える短剣が、補正+10までの物しかなく、尚且つお店の方に価値以上の値段を付けられ、それで駄目なら売らないと言われたもので」
「あ~あの馬鹿はとうとうそんな事まで言いだしたか。そんな奴だからわしら鍛冶師も奴に物を下ろしたくなくなったんだがな。ま~それならここへ来た理由もわかる。で、今腰にしている得物がお前さんの武器か、見せて見ろ」
そう言われ腰の剣鉈を抜いて手渡すと、
「ほ~短剣でなく小型の斧なのか、それも枝葉を払うような作りに見えるが、樵か何かか?」
「いいえ、そうではなく自分が居た所には魔物を狩る冒険者が居なかったもので、そのような物しか武器に出来るものがなかったんです」
「お~そりゃ苦労したな。う~~ん、それにしても・・・」
「何かお気に障りましたか?」
「いや、この製品なんじゃが、形状と言い材質といい奇妙だとおもってな。顔に出てたか」
「何処が変なのでしょう?」
「ここら辺ではな、手斧ならば手斧を短剣なら短剣をという作りにするのだが、その中間になるこの形状、枝葉を落とすのに最適なのは判るが、この発想は今まで出てこなかったわい。それにこの材質。なんで鋼ではなく鉄なのか、それも悩むが、この鉄の純度が良すぎるんじゃ。どうやったらここまで純度の高い鉄が手に入るのか気になったものでな」
「そこまで見てわかるのですか?」
「そりゃ~毎日相手をしてりゃ判るもんさ。で、小僧、お前が使える短剣が欲しいという事だったな。どうだ、儂が打った短剣をやる代わりに、こいつをくれんか」
「きちんとした武器が手に入るのなら自分としては願ったりなので、此方としては文句はないのですが、いいのですか?先程の作業ぶりを拝見した限りかなりの腕前と見ました。なので数物のその剣鉈であうものかと」
「お~この材質なのに数物なのか?ならば同じような物が数手に入ると?」
「はい、手に入りますし、鋼ですか、それも包丁のようなもので良ければその純度の物が手に入るかと」
「な、なに~、鋼もか、鋼もこの純度になるのか?何時だ、何時手に入る?」
「急げば明日取りに行って明後日にでも」
「よし小僧、今から気合を入れて小僧の短剣を作ってやる。なんでお前はその鋼の包丁を手に入れてこい。明後日までには作っといてやるからな、長さ大きさ的にはその剣鉈と同じ位でいいのか?」
「はい、その位の大きさが使いやすくていいです」
「よし任せとけ、じゃあ行ってこい」
「判りました」
<名前も覚えてもらえませんでしたが、ガンテツさんと一応約束は取り付けたので鋼の包丁は売ってあるので買いに行きますか。>
<向こうの世界の製鉄は凄いので、一目で見抜くのも凄いですが有無を言わせぬあの姿勢、流石職人という感じですね。>
<想像できる職人そのまんまだったね。>
一応の報告の為、ギルドの方へと引き返し、サラシャさんにガンテツさんから武器を作ってもらえることを伝え、宿のミリアさんに時間がどの位になるか判らないけど不在になる事を話して、人気のない場所より異世界転移を使い自宅の部屋へと向かうのだった。
よろしくですです。




