期間限定だけど冒険のはじまり
レベルアップを目指すのです。魔力の為に。
あれから一週間経ってから城野達不良グループは停学も解け学校に登校する様になっていたが、どんな顔で会おうかと悩んでいたのが馬鹿らしくなる位、向こうの方が避けてくれる様になっていた。呼び出される事も、話し掛けられることも無くなった。けれども、学校での自分の地位が変わる訳でもなく、誰からも話し掛けられる事がないのも変わらずで、身長が伸びてきている事にすら、誰も気付くことはなかった。
学校に通っている間は、夜間向こうに行く事は出来ないので、寝る前に身体錬成を全ての魔力を使い使用し続ける位の事しかする事がない。ゴールデンウイークやたまの連休には頑張って経験値稼ぎに出掛けて魔力総量を上げる努力はしていたが、それほどの日数行ける訳でもなく、なので毎日日課のように寝る前に錬成を続けていた。転移も攻撃の魔法も、クリーンやリペアさえも使わないので魔力全てでおこなっている為か、春先に起きた死にかけ事件から七月に入った夏休み前のこの時期までにとうとう170cmを超えて、173cmになった。なので次は元が日本人体系の胴長短足を全体的に伸ばして来ただけなので、手足だけを伸ばして180cm位を目標にしたいが(七cmも足伸ばすのは贅沢?)、顔を少しずつでも変えていきたいというのも前からの希望でどっちを優先するか悩み、いっぺんに変わるとおかしく思われる顔立ちを変えていく事にした。今までが、キモイ、ブサイク、といわれ続けてきた自分には、自分に似合うカッコいい顔立ちなんか思い浮かぶはずもなく、身体錬成のキャラクターエディット画面を見つめながら、どうせなら今までゲームで創って見てきたエルフの男性でも見本にするか、とイメージを固めそれから使い続けることにした。そして、
「やっと夏休みだ~」
<時間を気にせず、存分に向こうの世界に行く事が出来ますね。>
<うん、やっとだ。>
今までは朝になるまでの時間限定でそれも草原から森の中へは入らない様、外周部分を探索し続けた。森の中はやはり月明かりを通さず、前が見えないほど暗そうだったので(月が二つ出ている向こうは日が沈んでから明けるまでいずれの時間も結構明るかった。)、異界化している原因の所までは何が起こるか判らないので、時間が取れてからと諦めていたのだ。それが一学期の終業式を終えた今、一人暮らしの自分は好きな配分で時間が取れる。その日無理をし過ぎたと思えば翌日は休憩の為、寝て過ごす事も出来るのだ。なので気合を入れて冒険をしようと思う。高鳴る気持ちを抑え家路を急いだ。
夕方日が暮れかけ、ご飯も済んだこの時間、病院では巡回を気にして遅くまで行けなかったが、家ならもうこの時間から行けるのだ。装備を整えさっそくとばかり、
「異世界転移」
もう慣れた感じで転移の終わりを感じ取り目を開けると、早速、
<マップ、索敵>
そう唱え周囲の状況を確認すると手に剣鉈を構え、近場の赤いマーカのある場所へと、今では弱いと感じるワイルドクローラー相手にも慎重に近づいて行くのだった。今まで調べてみて思ったのは、この先の森の虫たちは奥に行くほど強く草原に行くほど弱い。それ故に弱肉強食の世界では弱い者を吸収して強くなる性質があるのかクローラーを襲いに、アントやワスプの集団が襲い掛かっているのを見た事がある。初めて見た時は、また逃げ出しそうになったものだった。それでも隠密でじっと隠れながら観察し離れていく個体を個別に退治したのも数回では利かない。あれが自分に向けて襲い掛かって来るのを想像すると今でもぞぉ~とする。初めてムカデに相対した時、恐怖以外の何者でもなかったあの時を忘れず、今は倒せるようになったんだ、他の敵もそう出来ると思い、心を強く持ち直し狩りを続けて行くのだった。
森の外周を回り込むように近づきつつ、奥へ入れそうな開けた場所を探してみたが、道などが有るはずもなく、木々の隙間がある程度広いという場所に目星をつけていたが、その一ヶ所、今日は初めてその奥に行ってみるかと考えていると、ケイさんの、
<光魔法を所得することを推奨します。>
との声掛けに、これから先に進むには必要になるのだろうともう疑う事も考えず、
<では、光魔法をお願いします。>
<光魔法を獲得しました。先へ進むほど視界が悪くなりますので灯りの魔法、トーチを使用されることを推奨します。>
来る前は考えていた明るさの事を此処から先に進んだ事が無かった為、ついうっかりまた忘れていた事に気が付いて、改めてもう少し慎重に考えながらと、自分に言い聞かせ、
<毎回思慮が浅くて御免。>
<素直に反省されるのが貴方様の良いとこの一つですので、お気になさらず。今までいろんな方を見守り導いてきましたが、補佐するのも最近は楽しみの一つになりましたので。>
<ありがとう。トーチ>
灯りの魔法を唱えると光を放つ球状の物が一m先位の頭上に留まり辺りを照らしてくれていた。周りを見渡し視界を確認して、入ってみるかと息を殺し足音に気を付けつつ、森の中へと進んで行った。
<でけ~、あれハチの巣?>
<倒した事のあるポイズンワスプの巣ですね。夜で良かったです、昼間なら見張りの数匹が飛び回り敵を見つけ次第、巣の仲間へと信号を送り集団で向かってくるので、対処が大変になるところでした。>
<ならば今のうちに。>
木の後ろよりそっと近づくと思いっきり魔力を込めるイメージで、
<フリーズ>
で巣ごと中身の蜂まで全部を凍らせた。手に持つ剣鉈をハンマーへと持ち替え何度も何度も端から叩き付けていく。二十mはあろう巣を破壊し終え霧状に消えゆくのを見つめていると、足元にはいつもの毒針だけでなく蜂蜜入りの瓶が落ちていた。
<巣まで破壊したからかな?蜂蜜は初めて入手したよ。それでも異界化した場所の魔物は不思議だね、瓶製品まで落とすなんて。>
<魔物もドロップアイテムもダンジョンが魔素より創り出していますので。それも新たな餌を外部より引き寄せる為の策と言われています。素材などを回収に来た冒険者が死亡した場合、ダンジョンに吸収され成長の糧となりますので。高レベルの冒険者ほど高濃度の魔素を身体に含みますので、ダンジョンとしては、良い栄養ですね。>
<そうならない様に気を付けます。>
会話に意識を取られ過ぎない様、そこで打ち切り周辺に意識を集中してマップを確認しつつさらに奥へと進んで行った。
よろしくですです。




