舞踏会
ああ、何ということでしょう。
母が殺されてしまいました。
次は私の番です。
あのお方に殺されてしまいます。
いつも彼は私を見ていらっしゃいます。
いつかきっと殺されるとわかっておりました。
…いえ、私はそれを望んでいたのかもしれません。
あのお方の部屋には、人形があります。
美しいそれらの人形は、しかしどれもぐったりとしております。
ピンで両肘を壁に留められている者や、不可思議なポーズをさせられている者ばかりです。
彼は言います。
彼女達は躍っているのだと。
母も躍り死にました。
いえ、あのお方に躍らされました。
胸をもがき、ぎこちないステップを踏みます。
彼はそれを見て、わずかに微笑みました。
きっと、私以外、その笑みに気付いていません。
母は右手を力一杯天に翳し、倒れました。
そんな母の姿は、とても美しいものでした。
母は、あのお方の用意したダンスを躍り通したのです。
ああ、彼が笑っております。
なんと美しいのでしよう。
艶やかなプラチナブラウンの中で、淡いブルーの瞳が怪しげに輝いております。
---君の母の舞いは、どうだった?
彼は臆面なく聞きます。
私も素直に美しいと答えました。
彼が笑います。
ああ、なんと美しいお顔でしよう。
---次は君の番だ。私とワルツでも躍ってくれませんか。
彼がひざまづき、ティカップを差し出します。
私は貴婦人のように、軽く膝を曲げ、それを手にとります。
そして、彼に習ったばかりの英語を使いました。
---My pleasure.