咲耶と小さな精霊
「ーー万物に宿りし数多の精霊。異界の地よりの呼びかけに答えよ。
我は森の民にして、小さき者の隣人。我らに助力の意思あらば、姿を現せーー」
草木が騒めき、咲耶達の周りの樹々が、風もなく枝葉を揺らす。
「おっ、流石師匠! ちっこい奴らが呼びかけに答えて、集まってきた。」
咲耶達の中で変化に気がついたのは、樹の妖精であるドゥーロだ。小さな光の粒が数個、カンザールの周りを飛び交う。
ーーネエ。ボクラヲヨンダ?ーー
ーーア、コノヒト。エルフダヨーー
ーーシッテル。ヨウセイサンモイルーー
小さな光達は、自分達がどうして呼ばれたのか興味津々だ。
ーーア、オトメガイルネ?ーー
ーーボクラニゴヨウ? キミノネガイナラナンデモキクヨーー
咲耶を見つけた精霊達は、呼びかけたカンザールを忘れて咲耶に纏わり付く。
「おや、嫌われてしまいましたかな?」
いつもと違う精霊の行動に戸惑っているカンザール。だが即座に、精霊に近いドゥーロが説明する。
「いや、トリフェーンの地での呼びかけなら師匠の元に来るけど、この庭は咲耶の所有地であり全ての樹々は地球の植物達だもん。咲耶が懐かれるのは当然だよ!」
ドゥーロの説明に、なるほどと納得した大人組である。
「では精霊達よ、我々の願いを聞いてくれるかな?」
ーーイイヨ。ヨンダノハエルフサマダケド、オトメノネガイナラ、ダイカンゲイーー
精霊達は嬉しいのか、強めの光で点滅してカンザールの手の平に集まる。
「お前達に頼みたいのは、この樹の世話を任せたいのだよ。虫が付かないように見張って、甘い実りを付ける様に世話をしてくれないか?」
カンザールの優しい口調の頼み方が良かったのか、精霊達は快く引き受けてくれた。
「へぇ〜、エルフの技はこういう奴なんやね。ちょっと興味があるわ〜」
「ちょい待ってよ、カザミ。これ以上アンタが力を持ったら、俺が追い越せなくだろ?」
カザミの服の裾を掴み、慌てて止めに入るドゥーロに、軽く額を小突いて冗談だと受け流した。
(まぁ、使える物は引きこんどいても問題はありまへんわなぁ。)
何処からか取り出した扇子で口元を隠すカザミに、冷たい視線を向けるクロガネだった。
「じゃあ、精霊さん達に林檎の樹は託す事にして、今度はドゥーロの番だよ。林檎の苗木を沢山作らないと、クルクリの街に植えに行けないからね。」
「任しとけよ。俺と師匠がいれば、そんなに時間はかからないさ。なぁ、師匠?」
勢いよく受け答えるドゥーロに、少し苦笑いを見せるカンザール。
「安請け合いは感心しないが、尽力しましょう。カザミ殿もお力添えをお願い致します。」
「分かってます。ほら咲耶はんらは、木陰で待っときなはれ。日焼けしてたら、綺麗なお肌があかーなりますわ〜。」
咲耶とクロガネを木陰の風通しの良い場所に追いやると、カザミはカンザール達と苗木を増やす作業に取り掛かるのであった。




