咲耶と石碑
「さて、カンザールの協力も得られたことやし、本格的に大地再生を始めてもいいんやない? ドゥーロはんが言いつけを守ってるんだったら、木の苗木をが終わってるはずやしな〜」
竜に起こされたというに、寝たふりをしようとするドゥーロに拳骨を落とす。
「いって……。カザミって本当に、乱暴な奴だよな! 昨日も街からこの庭に飛ばす時も、無茶な方法だったしさ。あの方法で失敗してたら、怪我してるところだぞ?」
「せやけど、どこも怪我などしてまへんやろ? 可能性があったんで、試してみただけや。それよりも、言いつけは守ったんやろな?」
カザミの問いかけに、ドゥーロは勝ち誇った表情をみせる。
「当然だろ? ハヤテに聞いてくれてもかまわないぞ。とりあえず白木蓮の苗木を百本、膝くらいの高さの状態で準備した。白木蓮の方だけでよかったんだろ?」
「それは真実ですか、ハヤテ?」
「カァー」
クロガネの質問に、ドゥーロの肩にいた相棒のハヤテが肯定の意味で鳴く。
「ならば今度は、林檎の樹を増やしてください。あと、カザミも一緒に行って手助けをお願いします。ドゥーロ君が増やした苗木は、ただ増やしただけでしょうから、これから街に出て植樹し易い様に小分けにしてあげてください。それと、林檎の苗木は貴方が持っているのですがら、何処か良い場所に植えさせてもらいなさい。」
「そうね、確か林檎の樹って、案外大きく成長するんだったかな? なら、あの場所なら頻繁に行くから様子を見る事もできるかな」
咲耶は自分の中で結論つけると、散歩がてら皆をその場所に案内する事にした。
「ドゥーロ君は水晶を埋める作業の時に、見てまわったのよね?」
「おう。咲耶の所有地ってどれだけ広いのかは、自分らの目で確認すればいいさ。なぁ、ハヤテ。」
ハヤテの光沢のある羽を撫でてやりながら、ニヤケ顔のドゥーロに、見え透いた挑発には乗らないクロガネ達。
「その様な気遣いは無用ですよ。私やカザミは、咲耶様が向かわれる場所を推測しておりますので。ですが咲耶様、あの場所で宜しいのですか? あの場所はーー」
「ちょいとやめなはれ。咲耶様も考え無しでお決めになるお人やないのは、ウチらが1番知っとるやろ?」
先頭を歩く咲耶の後ろに控えるクロガネとカザミが、これから向かう場所で揉め始めた。
「咲耶様、我々を案内してくださる場所に、何があるのですか? クロガネ殿達は、何が気掛かりな事がお有りの様子だ。」
皆の視線を背で受けながらも、無言を通す咲耶。
「咲耶様?」
クロガネが気遣わしげに声を掛けるが、咲耶は前を向いまま、もう少しで目的地に着く事を告げる。
咲耶達が着いた場所は、色とりどりの花々に囲まれた小高い丘に、並んで置かれた石碑がひっそりと置かれた、静かな場所であった。
本日はちょっと短めです。
この話より新章となります。




