閑話 咲耶と朝食タイム
[本日の朝食ー焼きシャケと出汁巻き卵。大根の味噌汁。お好みで納豆をーー]
人数分のご飯をよそう。もちろんトリフェーン組は、箸を使う事が出来ないので、カレー用のスプーンで代用である。
咲耶達が、食事の前の感謝の言葉『いただきます』を、声を揃えて言ったのが不思議だったのだろう。カンザールが問い掛けてくる。年齢のせいか種族の性質かは分からないが、カンザールは興味ある事は直ぐに知っている者を捕まえて質問責めにしているようだ。
「今皆様がたが発した言葉は、何か意味があるのかな?」
スプーンを器用に使い卵焼きを頬張る。
「今の言葉は、我々の住んでいた一部の地域では、この食事に関わった全てのものに感謝の言葉を唱え、食べる習慣があるのですよ。」
「植物やそれらを育てた者、運搬に関わった者、そして食事を用意してくれた者に感謝の気持ちを言葉にするのじゃよ」
「ウチらの地域では、言葉に力が宿ると言われ。相手に届くの有無など関係なく、言葉にして祈りを捧げるんや」
地球組の言葉に納得したカンザールは、言い慣れない「いただきます」と、呟くと、味噌汁を口元に運び味わってみる。
カザミとの呑み比べをした胃には、優しい味わいのスープである。
エルフのカンザールは、咲耶達と同じ物を食べれるが、樹の妖精なので動物性の物は口に出来ないのだ。なので……
「咲耶〜。オレ、昨日のパンが食べた。後、ハーブティ〜も。」
テーブルから乗り出して催促するドゥーロに、クロガネの叱責が飛ぶ。
「ドゥーロ君、君は何度教えれば学習するのですかね? 咲耶様を気軽に呼び捨てにしてはなりません。」
「だけど、最初に好きに呼んで良いっていったのは、咲耶だよ?」
クロガネに言い返すドゥーロに、そういえば確かに好きに呼んでいいと言った覚えがある。だが、この際だから、みんなに呼び方を決めてもらう事にした。
「いいタイミングだから、お互いに呼び方を決めてしまいたいと思うんですが、皆さんは私をどう呼びたいですか?」
咲耶の言葉に、食事の手を止め皆が顔を見合わせる。
「我々は、敬称の咲耶様でいいと思っております。まあ、若干一名は独特の口調ですので、大目に見て差し上げてください。後、ドゥーロはなるべく様付けを基本に、呼び捨てが多くなるようならば、お仕置きとします。」
「何でだよ?」
早速反抗するドゥーロに、クルードが頭を押さえつける。
「小僧っ子よ、しばらく黙っておれ。話しが進まんじゃろうが」
抗議をする為に開こうとするが、すかさず近くにあったパンを口に押し込む。
その間に、咲耶の言葉使いを指摘し始める。
「咲耶はんは、無理に敬語を使わんともいいんやで? ゆきに話しかける様にウチらにもその口調でいてくれると、ホンマに嬉しいわ〜」
カザミの願いに、咲耶はどうするか戸惑っていたが、最後はカザミの願いを聞き入れることにした。これからずーっと力を合わせていくのだから、余計な遠慮は逆に失礼にあたると思ったのだ。
「わかったわ、これからよろしくお願いします。直して欲しい事や言いたい事は遠慮なくいってきてね?」
咲耶は、これから共に暮らしてゆく仲間たちに笑顔をみせるのであった。
「さて、どこまで2人は思い返しておったのじゃ?」
朝食を終えた咲耶達は、場所を応接室に移し各自好きな場所に陣取る。
咲耶とクロガネは、使った食器を片付けて、人数分の紅茶が入ったカップを1人1人の前に置いてゆく。
今日の茶葉はアッサム。ミルクに合う紅茶だ。好きな様にミルクをたっぷりと入れる者やストレートで味わう者など様々である。
「そういえば咲耶様。ガイア様から出されていた課題は忘れずにしていますか?」
「うん。昨日も寝る前に瞑想しながら魔力の流れを感じる訓練はしたよ。一度大気から魔力を体内に取り込み、身体を循環させて体内に留める。で、取り込んだ魔力を大気に戻すのもどうかと思って、こんな物を作ってみたの。」
咲耶はズボンに直していた魔力の塊を皆に見える様にテーブルに置く。
「これはまた、面白い物を作ったもんじゃな。魔力の結晶体か……」
「クルード? 何か利用法があるのですか?」
熱い視線を注ぐクルード。クロガネは問い掛けるが返答はない。
「ちぃーとばかし、作業場に篭っとる。急ぎて無ければ呼ぶんじゃないぞ!」
クルードはテーブルから魔力の塊を奪って立ち上がると、瞬時にその場より姿を消した。
昔から行動を共にしているカザミとクロガネは、互いに顔を見合わせ、大きなため息を溢した。
「クルード殿は、一体何処へ行かれたのだ? 空間移動の様にみえたのだが……」
地球組の隠された能力に、戸惑っているカンザール。一介のドワーフが出来る芸当ではないからだ。
これは自分達の役割を話した方が良いかもしれない。そう思うクロガネであった。




