咲耶と新たな仲間
只々頭を下げ続けるカンザールに、誰も二の句が継げずにいた。
エルフにとっての10年は短いのかも知れない。だが、先の見えないこの場で待ち続けるのは何にも変え難い苦痛だろう。
咲耶以外の人外の者達は、カンザールの屈強な精神力を賛辞の眼差しで見ていた。
「じゃあカンザールはん。ウチがホワイトの姿で接近した時には、気が付いていたん?」
探る様に見つめるカザミに。
「いいえ。最初は初めて味わう酒に心奪われておりましたよ。ですが、ホワイト殿。いや、カザミ殿が去ってから町外れで生まれた生命の息吹が、地竜様が託された希望ではないかと漠然と感じました。」
「で、実際に会ってみて確信したというところかの? フン。ワシらの知るエルフとは大違いじゃな。ここまで思慮深く忍耐強いならば、我らのやり方に文句を付けやしまい。」
空になっているカンザールのグラスに酒を注ぎながら、クルードが賛成の意思を示す。
「クルードはんが気にしないんなら、ウチも文句はありまへん。後はーー」
「私ならば、咲耶様の意思に従いますので、お気になさらず。」
奥の部屋からドゥーロを連れながら、クロガネが姿を見せる。
「お説教はおしまいやの?」
「はい。」
咲耶の元に近づきながら、ドゥーロを連れてきたクロガネ。
「途中から話は聴いていましたが、カンザール殿の話に出てきた『地竜の希望の光』とは、我々の元にやって来たドゥーロ君の事でしょうね。」
部屋から出てきてからというもの、話の展開に着いていけないのだろう。当事者であるドゥーロは、呆然と立ち尽くしていた。
「ドゥーロ君。どうせ貴方の事ですから、時間のズレが気になっているのでしょう? しっかりしなさい。」
クロガネの問いかけに、ぎこちなくうなずくドゥーロ。そんなドゥーロに、クロガネが説明をしてやった。
「まあ仮説ですが、ドゥーロ君が往復したのは数日間かも知れませんが、我々の世界とドゥーロ君の世界とでは、時間の流れの速さが違っていたのでしょう。おとぎ話の浦島太郎の様にね」
初耳のカンザール達に、浦島太郎の物語を簡単に話して聞かせる。
「ほう、そちらの世界には面白い話があるようですな。大変分かりやすい。」
時空を超えて救いを求めたのだから、理解不能な力が動いても、もなんら不思議ではなかった。
「では、咲耶様。今後の話は明日改めてする事にして、カンザールを仲間に加えるという事でよろしいでしょうか?」
皆の視線を一身に集めた咲耶は、力強く頷いて見せた。
「はい。これから大変な事が待っているかも知れませんが、力を貸して下さい。」
「承知いたしました。このカンザール、命尽きるまでお側に!」
堅苦しい挨拶を述べるカンザールに、地球組の仲間たちは歓迎して迎えるのであった。




