咲耶と神と本題と
「わ〜、このお菓子。咲耶の手作り?
クッキーはナッツが良いアクセントになってて、美味しい!!」
カモミールと一緒にだしたお茶請けが高評価を得て、咲耶は今日1番の笑顔をみせる。
「お口に合って良かった。私とは人種が違うからちょっと心配だった」
「あらあら、ドゥーロはともかく、私は咲耶側の立場よ。だって、この地球の神『ガイア』だもの〜」
咲耶はカップを口に運ぶ手を止め、爆弾発言をした人物をみつめる。
「うふふっ。やっぱり驚いた? て、余りびっくりしてない感じがするけど、信じてない?」
自身を神と、名乗った相手『ガイア』は、咲耶の性質を思い出したようだ。
「まあ、人が認めなくても、私の存在意義は変わらない。私が神ーガイアー大地神よ〜」
話し方は相変わらずスロ〜テンポだか、発散される『気』の様な気配で鳥肌が立つ。
その気配にあてられたのか、ドゥーロと烏も黙り込んでしまった。
「それで、その神様までお越し頂き、私を異世界に転移して欲しいと言われるのですか?
何の能力もない平凡な私を?」
まあ、無駄な足掻きだと分かった上で、咲耶は自身は一般的標準な人間だと言う。
(魔法は信じてないけど、目の前で植物を再生してしまったのは事実として認めざるを得ない)
「だから、アンタは…」
「誰が口出ししていいと許可した〜 ドゥーロは黙っていなさいなぁ…」
口調は優しいが、表情が全然笑ってない。圧力が半端ではなかった。
ドゥーロはその場に固まる。近くでクッキーを摘んでいた烏も、離れたところにいた猫の「ゆき」の所へ避難している。
避難所にされた「ゆき」は、我関せずといった様子で、のんびりご飯タイムを満喫している。
許されるなら、自分も「ゆき」みたいにのんびりしたいのにーー心中では「ゆき」を羨みながら話しを促す。
「ではガイア様。どの様な理由でこの地球から転移をして欲しいとお考えなのでしょう」
咲耶は若干口調を改め、説明をもとめた。
「そうねぇ〜、咲耶の様な癒しだけの能力保持者は、世界に隠れて静かに存在しているのよ。だって、解るでしょ?」
神ガイアは言葉を濁し、咲耶を見つめる。
生き物とは人外の力を目の前にすると、畏怖し敬遠しがちだ。
人間となると殊更極端な行為に奔る。迫害、差別、利用…。普通とは、そんな異能者以外の無能力者をさす。
「今回はね、緊急事態なのよ。
ねぇ、『並行世界』っていったら解るかしら?」
「詳しくは理解してませんが、小説や空想的な表現でいうと、パラレルワールドというのですか?」
咲耶は、小説や世に出回っているレベルの知識しかしらない。
科学的根拠のない事なので、興味がなかったのだ。
「まあ、ここで詳しくは説明しないけど、たくさんある別次元の地球がね、消滅の危機を迎えているのよ。だから、咲耶の力を借りたいの。お仕事をお願いしたいのよ〜」
目の前で両手を組む神は、咲耶に仕事を依頼しにきたのだと言う。
『ー異世界への転移ー』
「だから引っ越しする気があるかと、公園で聞かれたのですね?」
咲耶は本気で逃げ出したい気分だった…




