咲耶とカンザールの過去編3
風龍の部屋は複数の樹が、絡み合って生まれた巨木の群生林の最奥にある。
陽の光が差し込み心地良い風が通るこの場所が、マスターのお気に入りの場所であった。
だがー
「ここもか……。 これ程の破壊力を持つ侵入者。相対したものがマスターでなければ、廃墟と化していただろうな。」
足元を塞ぐ枝や巨木を風で巻き上げ、端の方へ追いやる。
少し歩きやすくなった通路とは言えなくなった群生林のアーチを通り抜けると、何時もであれば竜の描かれた扉が見えて来るはずであった。
「ここもか……。 一体、敵はどの様にしてこの場所まで侵入できたのだ? この場所は、竜の長が世界樹に力を注ぎ込む大事な要所。いくら破壊衝動がある魔族や魔王であろうとも、この場所を消し去れば世界樹が枯れ、トリフェーンが消滅する事を知らぬわけがないはず。」
足早に扉に向かうカンザールに、四方から漆黒の刃が襲いかかる。とっさにかわすが、正面から襲いくる刃をかわしきれずに傷を受ける。
「くっ……」
足元の不安定さに気を取られ、追い討ちを掛けて黒い刃が右眼を傷つける。
ーーつ、つぅ……ーー
咄嗟に身体を引いたが、それでも傷を受けてしまった。
「これでも身軽な方なのですが、一歩回避が遅ければ大怪我でしたね。」
ひと事のように自分の受けた傷を検証しながら、時には剣で刃を弾き、素早い身のこなしで刃を避けて行く。
そうしてやっと辿りついた扉に手を伸ばそうと、顔を上げたカンザールに3つの影が映り込む。
「よくぞ1人でここまでたどり着いたな。若きエルフの者。」
「だが、ここから先はお主には荷が重過ぎろう?」
「我らが引き受けるうちに、この里より離れるがよかろう……」
3つの揺らめきは次第に形取り、偉大な者へと変わってゆく。
「貴方たちが何故この場所にいらっしゃるのだ⁈」
傷ついたカンザールの瞳に映るのは、この場所にいるはずのない竜の長達の姿であった。




