咲耶とカンザールの過去編2
昨日まで平和であった風の里は、一変していた。仲間であるエルフは傷を受け倒れていた。いや、エルフだけではない。聖獣も竜族の者達も、血を流し倒れていた。
「里の強者をここまで叩き伏せるとは……侵入者は、魔族の貴族クラス? いや、曖昧な情報できめつけるのは早過ぎですな。
誰か、いやマスターの元に行かなくては!」
ざっと見て回ったかぎり、傷を受けてはいるが、死者は不思議といないのであった。故意なのがは不明だが、取り敢えずマスターの元へ駆け付ける事にした。
そこまでの間にも聞こえてくる呻き声。血の臭いが充満し始めている。自分以外にも無事な者達がいるようで、治療する姿がみえるのが唯一の救いだった。
マスターの部屋に近付いていくにつれ、深い傷を受けた者、武器を折られ気を失わされたと思われる者の姿が増えていく。
「カストール⁈」
「カンザール……。 無事だったのだな」
剣を支え替わりにし、今にも崩れ落ちてしまいそうな同僚を助け起こす。
「無事だったか。一体何が起きたのだ?」
「分からん。ただ……漆黒の闇がー」
「闇?」
カストールは力尽き、気を失ってしまった。
「闇とはなんだ⁈ おい、カストール」
肩を揺さぶり起こそうとするが、脇腹から出血する様をみて断念する。取り敢えず応急処置を施すと、マスターの部屋に続く扉を見つめる。
ーーードォーーンーーー
爆破音と共に扉が開き、エルフの騎士が吹き飛ばされてくる。
マスターの部屋で何が起きている。カンザールは柄に力を込めると、慎重に返事に踏み込む。
何時もならば、涼やかな緑の風と甘い花の香りが部屋を満たしていたが、今はその姿が見る影すら無い始末。立派な樹木には剣撃の跡が深い傷を作り、逃げ出せなかった妖精や聖獣が部屋の片隅で震えている。
「何をしている。動ける者たちは部屋の外に逃げよ。」
「ですが、風龍様がまだ奥で戦っておられます。我々だけが逃げ出すなど……」
震える膝に力を込めて立ち上がる同胞を、無理矢理風の繭で包み込むと、部屋から追い出した。
「カンザール様? なぜー」
「問答無用です。この奥は騎士が束になっても敵わない敵が居るのです。戦えないならば、救命作業にあたりなさい‼︎」
カンザールは、扉を内側から開かない様に魔力の壁を作ると、破壊が酷くなっている部屋の奥を見つめるのだった……




