咲耶とカンザールの過去1
ーー私は、主人を最後の瞬間まで護る事ができなかっできなかった、愚かな守護騎士ーー
トリフェーン誕生と共に存在し続ける世界樹を護る竜族。その竜族の眷族にエルフ・聖獣・妖精・精霊の各々の属性の者達が付き従う。その中でも、ずば抜けた能力の持ち主は竜族の部下として選ばれる。そんな選ばれた者の1人がカンザールであった。
風の竜族が守護する地は、高き山々が連なる高山地帯。一年中強風が吹き荒れ、興味本位で近付いて来る者を排除する自然の要塞。
だが、強風の隙間を抜けて稀に侵入して来る者がいる。そんな者を結界の外側へ追い返すのがカンザールの役割である。
「カンザール。今日も見回りか?」
「ああっ。そう言うお前は御前警護が終わったようだな、カストール。今から酒場に行く様だな。」
風龍の長の仕事部屋から姿を見せた同僚のカストールと軽口を叩き合う。
「そういえば最近、世界樹の力が奪われている件。聞いたか?」
「いや。ここ最近は外側に赴く事が多かったから、そう言う情報には疎い。何かあったのか?」
同僚からもたらされた情報に、カンザールは問いかける。
「うーん。原因不明なんだが、黄竜様が付きっきりで力を送り続けているが、世界樹の生命力が何かに奪われているらしい。」
「らしいと言う事は、原因が解明されていないのですか?」
カンザールの言葉を肯定するように、カストールは重々しい表情をみせる。
「そう…ですか。」
2人は言葉を切り、自分らの主人が居る部屋の方へ視線を向ける。
どうか、この世界を大地を守ってください。そう願うしか出来なかった。
ーーーそして、運命の時を迎えるーーー
その夜は、何故か風の流れが止まっていた。カンザールが物心ついたころから吹いていた風が、突然止まってしまったのだ。
それは、同時にカンザール達を護る結界が消滅したと同じであった。
その日のカンザールは、非番の為自宅で休んでいた。だが、突然の轟音と無数の悲鳴で飛び上がるように目を覚ました。
「なんです? この胸騒ぎは⁈」
寝汗で身体中が汗だくになり、呼吸も浅くなる。見えない恐怖に意識を奪われそうになる。そんな自身を叱責して起き上がると、剣を手に取り外へ飛び出した。
「こ、これは一体……何が起きたのです?」
カンザールの目の前に広がる光景は、大地に伏す風の里の民の姿であった。




