咲耶とご立腹のクロガネ
「この……バカもんが! 何故その様な大事な事を忘れとった?」
「だってカーリアン様は、見つかった協力者に渡せば大丈夫みたいな事をいってたし、オレ自身も咲耶様と会ってバタバタしてたからさー」
モゴモゴと言葉尻が弱くなり、視線を皆から逸らすドゥーロ。
その態度に今まで黙って酒を呑んでいたクロガネが、音も無くドゥーロの背後に立つ。
眉間に深い皺を作り、黒い何かがクロガネの背後から立ち昇るように見えた。目の錯覚なのであろうが……
「さあ、これから楽しいお話タイムと参りましょうか? ドゥーロくんを少しお借りしますので、皆さまは話を続けておいて下さい。
ああっ、ハヤテはこの場に残り私に状況を説明するように!」
「カー」
ハヤテの了承の声だけを受け、クロガネはドゥーロの首根っこを引きずりながら、咲耶家の空いている部屋へと籠もってしまった。
問答無用の説教部屋行きの行動に、初めて目にするカンザールは呆気に捉われる。
「何が始まっているのですかな? クロガネ殿はかなりご立腹の様でしたが……」
「大丈夫や。ドゥーロはんが余りにも間が抜けてるお人やから、クロガネがずーっと言い聞かせておるんやろ〜なぁ。まあ、ウチからしたら、そんな事で怒らへんでもいいと思うんやけどなぁ。まあ、今回は客人が居るからそこまでは長くないと思うわ」
唐揚げを頬張り極上の笑みをみせながら、2人が消えた部屋に視線を向ける。
そんな説明を受けたカンザールは、ドライアドの子供がよく問題を起こしては、咲耶達を困らせているのだろうと予測できたのである。
「おやおや、同じ同郷の者閉じて謝罪をいたします。お手を煩わせ申し訳ございませんな。」
「いいえ。こちらこそ、会話の途中だったのに騒がしくしてすみません。」
咲耶の言葉に、ハヤテもひと鳴きして同様に謝罪してきた。
「いいえ。まだ出会って数時間しか過ぎておりませんが、中々楽しい方達だと思っております。さて、話をもどしましょうか?」
ブレスレットを詳しく見分しながら、カンザールは自身がしる情報を話し始めた。
「このブレスレットには、竜族の扉を開ける鍵の役割と、竜族の長が自身の考えを相手に伝える為の機能が備わると言われております。」
「ほう。なかなか面白い機能じゃの。だがお主、一介のエルフではそんな情報を知る術がないとおもうんじゃが?」
髭を撫でながら、クルードの目が細められる。
「そんな怖い顔せえへんと、素直に聞けば良いやないの。カンザールはんのもう一つの隠されたお役目の事を? アンタはん程のお人が、酒場のマスターをしてはるなんて、酒の摘みに丁度よいやないん?」
仲間2人の会話を聞いていた咲耶は、カンザールの目を見つめて問いかけた。
「2人はこう言ってますが、言いたくなければ話さなくても大丈夫ですよ。私としては、樹々の再生に力を貸してくれさえすれば、良いのですから」
「いや、咲耶様たちの事を聞いておいて、自身の事を話さないのは自身の理念に反します。いや違いますな。私自身が知ってもらいたいだけですね」
グラスを静かに見つめて、これまで誰にも語る事のなかったこれまでの状況を話し始めたのだ。




