咲耶と騒がしい者たち
「鳥の唐揚げに、作り置きのキッシュ、後、ハンバーグ。とりあえず、これくらいでたりるかな?」
クロガネに問いかける咲耶。急いで作ったので、味に自信がないのだ。
「大丈夫ですよ。ほら、クルードなどはもう食べ始めているじゃないですか。足りなければまた作れば良いだけです。とりあえず、全員が揃ったのですから、乾杯をしましょうか?」
「うん。あーと、私はお酒は駄目だから、アイスティーで。」
クロガネが咲耶のグラスに注いで手渡す。それが合図になったのか、クルード以外の者たちが各々興味が惹かれた食べ物を摘み始める。
「咲耶はん。この唐揚げ、めっちゃ好みやわ〜。衣がサクサクしてて、んー酒が進むわ。」
「私は、このキッシュと言う食べ物が気に入りました。初めて味わう食感、一体食材は何を使っているのですかな?」
美味しさのあまり尻尾を揺らすカザミ。その隣りでは、酒場の主人ゆえの癖なのか、舌鼓を打ちながらも分析をするカンザール。
「私は、ハンバーグが気に入ってます。このデミグラスもいいですが、今度はおろし大根が乗った物を食べてみたいです。」
肉汁が溢れるハンバーグを頬張りながら、つぎのリクエストをするクロガネ。まあ、みんなが笑顔で食べてくれている事に嬉しくなる咲耶だった。
この三人組と出会うまでは、愛猫のゆきとの食事だったのだ。自宅で騒がしい食事の時間は両親が亡くなって以来である。
咲耶も自分の分の料理を取り分けながら、クロガネに話しかけた。
「ところで、本題に入らなくても良いのですか? まだ、自己紹介くらいしかしていないみたいだけど?」
「ああっ、それならば、食事をしながら説明した方が良いと思うとった。まあ、薄々感づいておるようだかのぉ」
酒を煽るクルードは、カンザールに視線を向けた。
「まあ、咲耶様の神気から始まり、連れてこられたこの場での見た事のない食べ物や酒類。会話の節々に出てくるエルフとの相違点。とどめのドライアドの子供の登場。解らぬ方が無理と言うものでしょうなーー」
黙々と酒とキッシュを交互に口に運びながら、質問にはきちんと答える。
「それではカンザール殿。我々の存在は何だと思いますか?」
「はい。このトリフェーンの加護を持たぬ未知なる者達と、行ったところでしょうかな?」
目を閉じて考える素振りを見せるカンザールに、カザミが否定する。
「いや、アンタはんは誰かの指示を受けて、ウチらに探りをいれてるんやないか? そやないと、そこまで落ち着きはった所作にならしまへんわぁ〜」
まあ、カザミが疑ってかかるのは無理ないだろう。普通の住人ならば、突然見知らぬ場に強制移動させられ、見た事の無い物が次々と飛び込んでくれば、発狂してもおかしくない状況である。
「まあ、疑ってかかるのは良い心がけです」
カンザールは食事を止めて姿勢を正すと、顔つきを変えはなしだす。
「お互いに隠し事なく話し合いをしませんかな? でなければ、自分の身の振り方を決めるに決められないので」
「まあこちらとしても、ここまで連れて来たのに、隠すなどありえませんね」
「そうじゃ。ワシとて嫌いなエルフじゃが、こやつならば手を組んでも良いとおもっとるぞ!」
「そう言うことやし、咲耶はんからお話したってくれへん?」
食べる事に夢中になっているクルード達に任命された咲耶は、諦めて自分に降り掛かった事を語り出したのだった。




