咲耶と食事事情
勢いよく扉が開き姿を表したドゥーロ。余程急いできたのか、薄っすらと汗が見える。
咲耶は配膳の手を止め、ドゥーロに歩み寄る。
「ごめんなさいドゥーロくん。 のけ者にした訳じゃないのよ。ただね……」
「そう、ただ呼びにいくのが遅くなっただけじゃな。そう膨れずにこっちにこんか?」
咲耶の言葉をフォローし、クルードが慰める。だが、そんな言葉だけではドゥーロの怒りは収まらない。クルードの横の椅子に座った後も、自分は与えられた役割をしていたのに、宴にも呼ばれないだとか騒ぎ出す始末。
最後には、相棒のハヤテに抱きついて少し泣いてしまった。
「じゃからなぁ、お主を爪弾きにしたおぼえはないんじゃ。ほら、泣き止んで飯を食わんか。せっかく咲耶様が作ってくれた物が冷えてしまうぞ?」
ドゥーロの頭を乱暴な手付きで撫でるクルードに、ドゥーロが抗議の声を上げる。
「食べたいけど、オレには食べれない物ばっかりだよ! 動物の肉は食べれないたって知ってんだろ? なあ、さっきの奴が食べたい。皿一杯に食わせてくれるんなら、今回の件は忘れてやるからーー」
「やれやれ、ドゥーロはんはお子様味覚やなぁ〜。クッキーもいいけれど、これならば食べられるんやないのぉ?」
そう横から話に割り込んだカザミが、ドゥーロの前に数種類の食べ物が乗った皿を置いてゆく。それは、咲耶達なら見慣れている食べ物、サンドイッチや菓子パン類。それも、ナッツ等を沢山使ってある物ばかり。ドゥーロの好きそうな物ばかりだ。
案の定、初めてみるパンに目を奪われ騒ぎ出すドゥーロ。
「ねえねえ、カザミ。これも食べ物なの?」
「はいな。植物から作った物ばかりやから、アンタはんでも安心して食べられるはずや。取りはしまへんからって……、ホンにこのお子様はーー」
カザミが話しを終える間も無く、無言でパンに噛り付くドゥーロ。機嫌の直った所で、食事会が再開された。
「とりあえず、お酒に合いそうな物を作ってみたけど、もしドゥーロくんのように肉が駄目とかあれば言ってくださいね。別の物を用意しますから。」
「我々は良いのですが、カンザール殿はエルフでしたね。肉や魚などの生き物類の食べ物はどうですか?」
クロガネは自分の知るエルフの詳細を思い出しながら、カンザールに問いかけた。
「お気遣いありがとうございます。だが、何故その様な質問を?」
まるで自分がドゥーロのような物しか、食べれないかのような発言に、カンザールは聞き返した。
「ワシらの知るエルフとは、大地や自然界より力を取り込む者。木々や草木、花の蜜等の自然本来の食べ物を好んでいたように思っておったからのぉ〜」
「そうやなぁ〜、ウチもそう思って強く言えまへんでしたわ」
三人組が知るエルフとは、地球のエルフを指す。だがここは異世界。姿形は似てるようであるが、食文化は違っているのだろう。
そう納得していたクロガネ達だったのだが、本人から否定の答えが返ってきた。
「いや、その考えは間違いではありませんぞ。大部分のエルフ族は、生き物を狩って食事をしない一族。ただ例外がどこにでもあるのですよ、人間と共存する者達は、人と同じ食事が出来る仕様に味覚変革を施しているのですよ。まあ、自分では掛ける事は無理ですから、自分より上位の方にお願いしますがね!」
そんな説明をしながら、見た事のない食べ物に惹かれるカンザール。どんな味がする物なのか、先程からお腹の虫がうるさく鳴り止まないのである。




