咲耶と扉
「とりあえず空いている席にお座り下さい。簡単な食事でもご用意させて頂きます。」
咲耶達を空いている場所に座らせようとするが、ホワイトが口を挟む。
「いや、さっきも言ったが、アンタにはオレ達と一緒に来て欲しい所がある。」
「まさか、まだ認めていない御仁を『あの場所』に連れて行くつもりですか?」
カンザールの本質を見定め切れていない為か、クロガネが反対する。
「どうせ、お互いに腹を割って話す場所が必要なんだし、あそこならば覗かれる危険性は皆無だしな」
「じゃが、決定権は咲耶様じゃ。お主ではない筈じゃな? ホワイトよ、何をそんなに焦っておる?」
いつもならば、冷静に物事を運ぶホワイトに、クロガネ達が訝しげに見つめる。
「まあ良いでしょう。あちらに着いてから聴き出す事にします。咲耶様も宜しいですか?」
「ええ。でも、私達でばかり決めてしまわないで、カンザールさんの了承を得てからにしてくださいね?」
カンザールが蚊帳の外になっている今の状況に、指摘された本人はニッコリと笑顔で静かに待っていた。
「お気になさりますな。久しく感じる事の無かった高揚感に浸っております。さてさて、このカンザールを何処にお連れして頂けるのでしょうか?」
本当に楽しみしている様子だ。ならば話は早かった。咲耶達はすぐ様移動する事にした。
いつどこからか、横槍が入るともしれない。まだこの世界の事を把握できていない地球組がそう思うのは自然な事であった。
「では、ご案内いたしますが、その前にお尋ねしますが、ここに使っていない部屋などはありませんか?」
クロガネの変な質問に、カンザールは物置部屋として使っている扉を開けながら室内を見せる。
「こんな部屋しかございませんが、宜しいかな?」
「はい。問題ありません。カンザール殿、暫し扉をお借りします。」
ー扉を借りる?ー
意味がわからないカンザールは、とりあえずうなずく。
「貸すのは構いませんが、きちんとお返しくださいませ……」
自分でも戸惑っているのが分かるのだろう、言葉尻が弱々しいカンザールに、直ぐに終わりますからと、安心させる様に言葉を掛けながら、咲耶を扉の前に誘導した。
「咲耶様。お願いしても?」
「うん。一回限りでいいんですよね?」
「はい。道を固定するかは、今からの話し合い次第となります。」
クロガネの言葉を受け、咲耶は扉にふれながら、自宅の庭先に繋がる様に思い描く。
「じゃあ、ご案内します。」
咲耶が一足先に扉を開け部屋に入る。後を追う様に次々と部屋に入ってゆく咲耶達に、カンザールも物置部屋に足を踏み入れる。
だがーーー
「な……、これ……は……⁈」
カンザールはただただ立ち尽くすしか出来ないのであったーー




