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異世界から引っ越してきた聖女です。  作者: 金木犀の夢華


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咲耶とホワイト記録簿6


「宿屋、酒場、ギルドときたなら、後は武器屋と雑貨屋だな。オレの興味を引く物が置いてあればいいな」


ホワイトは冒険者ギルドから出てくると、探索がてら街の中を見廻る。

やはり、街の住人より冒険者の姿が多く目につく。

少ないと思っても、住人はまだ残っているのだ。ホワイトはその住人を捕まえて店の事や食事の事等を詳しく聴いて廻る。


ーーこの街には、店らしきものは残ってないさ。食べる物とかは、冒険者の方々が狩ってくださる動物達を食物関係は、街の中央部に住んでおられる竜の眷族の方が分けてくれる。だが、昔よりどんどん数が減っているのは確かだなーー


数人の住人から得た情報を精査しながら、街の住人達が話していた「竜の眷族」という連中に興味が惹かれる。


眷族というからには、自分の様な立場の者がいるのだろう。ならば、誰かしら1人探して、今夜の集まりに呼べば、街の様子が分かる筈だ。 


ホワイトは探索の範囲を、街の外側から中心部に変更する。街の中心部は、枯れてもなおその姿で街の住人らを守るように根付く大樹があり、その大樹を外敵から守る様に塀で囲み、巨大な扉が封鎖している。


扉の前までやって来たが、人の気配は無く閑散としている。


「さて、一度合流地点に行くべきか……」


クロガネからの手紙に書いてあった用件は、あらかた調べ終えた。


「けど、そろそろかな〜。」


ホワイトは、情報を提供してくれた住人に、地球から持ってきた林檎を、お礼として渡していた。


この世界には成ることのない果実。そんな珍しい物を持っていれば、嫌でも目に入る。

ホワイトは今回、別々の相手に餌をまいた。

ギルドから目を付けられた者達と、竜の眷族と呼ばれる人々。ギルドのならず者ならば、簡単に喰らいつくが、身元不明の不審者である自分が見た事のない果実を配っており、それも美味しいとくれば、あちら側から接触してきてもいいのだが……


「やっぱり、お約束だよな。」


ホワイトは先程から、人がいない方へと移動していた。まあ、別の目的もあったのだが、ホワイトの周りを5、6人の冒険者風の輩が囲い込む。


「ベタベタの展開。どの世界にでも、頭の軽い奴らはいるんだな。」


ホワイトは相手に聞こえる様に呟き、腰の剣を引き抜く。


「ほう、新参者が俺たちに歯向かうってか? 痛い目に会う前に、その立派な装備品とみんなに配っていた赤いやつを置いて行きやがれ。でないとーー」


「こっちが痛い目に合うって? 相手の力量すら測れないなんて馬鹿な奴ら」 


ホワイトは襲いかかってくる連中を深手を与えない程度に切りつける。


数人相手に最初は不利にみえたが、戦闘中敵が何もない場所で叫んだり、引きつった表情をしていた。


「なんなんだ。身体が勝手に動きやがる⁈」

「げ? お前は、ダンジョンで死んだはずだろ。なんでここにいるんだ?」

「ははは……、」


ホワイトと最後まで剣を撃ち合う男以外、恐慌状態におちていた。


「お前、魔法かなんか使いやがったな?」


「魔法? お前と斬り合っている最中、どこにそんな余裕がある? それよりもいいのか? 気を失っている奴もいるみたいだが、続けるか?」


「くっ……。お前、何者だ?」


「何者と聞かれても、ただの冒険者としか答えてやれないが。まあ、何か力があったとしても、教えてやる義理はないさ」


剣を撃ち合う激しい音が鳴り響くなか、2人は息を弾ませる事なく会話を交わす。


「お前さ、なんで自分より弱い連中と行動を一緒にしている。1人でもやっていけるだろう?」


「バカか? ダンジョン探索は1人で行ける程甘い場所じゃねえさ。常識だろ?」


この世界の常識を言われても、返答に困るホワイトだ。


「さあ、無駄に傷を増やしたくないなら、逃げたらいい。」

「何抜かす。すげぇお宝を目の前にして、逃げれるわけがねぇ!」


だが、リーダー格の男はそう言いつつ、逃げるタイミングを探っていた。


仲間達を窺うと、泡を吹く者、白眼を向いて気を失っている者、ガタガタ震えて何事か呟く者。大半が戦闘不能だ。


そんな2人の戦闘に、不意に声がかけられる。


「ホワイト、遊びもほどほどに。待ち合わせの時間は、とっくに過ぎているのですから。」


2人の前に現れたのは、黒い服装のメガネをかけた人物。クロガネであった。


「もうそんな時間なら仕方ないか。 ほら1人だけ持ち堪えた奴。」

「ん?」


さっきまでホワイトと斬り合いを披露していた男は、ホワイトから投げられた赤い物体を空いている片手で受け取る。


「装備品はやれないが、そいつならくれてやる。食べた後驚くなよ?」


ホワイトはそう言い残すと、クロガネとその場を後にした。


「何だこれ? 食い物か?」


男は恐る恐る赤い物体を口に運ぶ。口にした瞬間、甘い汁が口内を満たす。


「甘めーー」


この後、今食べた物が「林檎」と呼ばれる果実と知るのは大分先の話であったーー


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