咲耶とホワイト記録簿5
「さて、夜までは時間ができたな〜。冒険者ギルドとやらに顔を出して、強さを見極めるって事でもするか。それともー」
不意に湧き上がった殺気に、軽く威圧で払い退ける。そんなホワイトに、姿を見せない相手から短刀が数本撃ち放たれる。
「ほんとにさ、相手の力量を確認してから喧嘩を売れよな? 勝敗が見えてる戦いなど、買う価値ないし……と」
ホワイトは後ろを向いたままの状態から、短刀を叩き落とし、その1本を相手の気配がある場所へ撃ち返す。
「グッ……」
くぐもった声が微かに聞こえ、数秒後には気配が消えた。
「こんな街中で堂々と戦闘を仕掛けてくるとは、食べ物に困窮した奴か、1人でうろついているオレなら問題ないと、襲ってきたバカな奴かーーまあ、どっちにしても、オレの相手にならないだろうがな。」
細い眼差しをさらに細め、ホワイトは腰の剣から手を離す。相手の様子を探っていた為か、身体に張り巡らせた気を落ち着かせる。
「正直、こんな廃墟の街のギルドは期待してないんだが、覗くだけでもするかな。もしかしたら、襲撃者が隠れるかもしれないし、どんな魔物がいるかも分かるか」
ホワイトはその場から踵を返すと、カンザールの酒場に程近く、人が吸い込まれる様に消えてゆく建物に向かう。
錆び付いたドアが軋み音を立てて、ホワイトを招き入れる。
室内は薄暗く、数カ所に置かれたテーブルでは、数人のグループが今日収穫してきたらしい獲物の話に盛り上がっていた。
室内の中央には、獣人族らしき者が座っており、初めての相手であるホワイトに話しかけてきた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ! 見かけないお方ですが、本日はどの様なご用件でお越しですか?」
受付の声に反応して、談笑に耽っていた視線がホワイトを捕らえる。だが、顔は仲間内で楽しそうに会話を交わしている。
(そこそこに戦えるメンバーが集まって自慢話大会かー。質が低いな。)
聞き耳立てながら、壁に貼られている依頼内容を見るフリをする。その内の簡単な討伐内容に気を引かれたフリをしながら、受付係に話しかけた。
「この街には初めてきたんだが、ここに張り出された依頼は誰でも受けられるのか?」
「いいえ。まず始めに登録料金を頂きます。これは、仕事の斡旋代行料金とお思い下さい。後は、壁の気になった依頼をご自由に剥がし、受付へお持ちください。各自がどの様な依頼を受けたかをこちらで控え、獲物を倒したさいに出てくる魔石を持ち帰りください。」
「魔石を持ってきたらどうなるんだ?」
「色によってランク分けがされており、希少価値の高い魔石ほど引き取り価格が高くなります。詳細はこちらの紙に書かれておりますので、目を通されておいてください。」
手渡された紙を荷物にしまいながら、受付係につい最近の変わった事がないか? 世間話を持ちかける。
「変わった事と言うと、見知らぬ人が街に訪れたって事くらいですかね。それは、貴方の事でもあるのですがーー。これ以上は情報料を頂く事になります。」
「ならいいや。もし、頼る事になったらよろしく」
知りたかった情報を得られたホワイトは、街中に戻った。
そんな後ろ姿を、ギルドの常連グループが物色していた事に気がつかぬホワイトではなかったーー
「さてさて。中の奴らは、どんな動きをみせるかな?」
どんな獲物が罠に掛かる姿を想像したら、楽しくなるホワイトだった。




