咲耶と危ない移動手段
「少しの間大人しくしていて下さい」
「わかったわ…」
咲耶は言われた通り口を塞ぐ。
これから何処かへ連れていくようだか、自分を逃がさないように捕まえたままこの場から動こうとしない。
青年は静かに瞼を閉じ咲耶に呟く。
「今から跳ぶので、舌を噛まないように気をつけてください。初体験の者は大抵、目を回すか舌を噛むかのどちらかなので。」
「あの… 跳ぶって?」
青年は咲耶の問い掛けを無視して、行動を起こす。
青年の手から溢れた液体が足元を濡らし、鏡の様に2人の姿を映しとる。
満遍なく円状に液体が広がる様を確認した青年は、空になった小瓶を地に叩きつけた。
ーパリーィンー
小瓶が砕け液体に呑まれる。そう、地面を濡らすぐらいの液体にガラスが消えゆく。
自分の足場も液体に呑まれる? そう身構えたが地は不動のまま。だが今度は、身体全体が引き上げられる様な違和感をかんじた。
(ちょっと、耳鳴りがするかも?)
咲耶の視界はぐらつき、気分の悪さにその場に膝をつきそうになる。
「無理にたちあがろうとしないで。正規の手順を踏んでないから、身体に反動がきてるんだ。やせ我慢をしないで私の腕に掴まって」
冷や汗がでて、頭がぐらぐらする。そう、まさに乗り物酔いだ。
「ううっ〜 気分悪すぎ…」
咲耶はとうとう我慢出来ずに、その場に座り込んでしまった。
口を手で押さえ、涙目になっている。
青年は自分の失敗に顔を痙攣らせている。時間がないからとて、重要な手順を飛ばしたのは不味かったのだ。
咲耶は涙を拭い、自分が今何処にいるのかをしろうと考えた。青年から逃げるにしても、現在地を把握しなければ、隙はつくれない。
だか、2人が今座り込んでいる場所はーー
「私の…家?」
そう、咲耶が青年から逃げてたどり着きたかった自宅の前であった。




