咲耶とお酒の誘惑
「とりあえず俺は、クルクリの酒場にいって情報を集めてくる。酒場のマスターなら良い情報を持ってそうだしな。」
姿を変えてからのカザミは、終始少し低い男性の声で話している。魔法や特異能力は想像以上に変わった力なのだと咲耶は感じた。
まあ、使う側にまわってしまった咲耶も、他人の事を言えないのだか……
「カザミ、待ち合わせ場所を決めてから行動して下さい。気配を探れば見つけられるでしょうが、初めての世界なのだから慎重に行動して下さい。」
「了解。とりあえず、地球から持ってきた酒でもぶら下げりゃ、ポロポロ話してくれるはずさ。」
「こりゃカザミ、どんな種類の酒をもっとるんじゃ?」
カザミの作戦に、ドワーフのクルードが生き良いよく食らいついた。
「度数の高い酒ならば、酒場にばら撒く前にワシに飲ませんか!」
目が血走っているクルードの事を、危ない人みたいに離れて見ている咲耶に、クロガネが間に入る。
「クルード、貴方には今から大切な役割をお願いしたいのだから、お楽しみは仕事をやり終えた後にしてください。カザミから譲ってもらうように話しをしておきますから」
「本当だな?」
クルードの鋭い眼光がクロガネを捕らえる。
「もちろんです。ここには、咲耶様という証人もいるのですから、約束を反故にはしませんよ。ね、カザミさん?」
ニッコリと笑いかけるクロガネに、渋々了承した。そんなに嫌がる所をみると、秘蔵のお酒なのかもしれない。まあ、咲耶は未成年だがら呑めないが、異世界では理が違ってくる。
まあ、今は興味がないのだが、いつか機会が有れば口にしてみたいと思うのだった。
「ではカザミ、情報集めは頼みますよ?」
「オウ。だが、この姿の時は、別の名前で呼んでくれ。この外見だから、ホワイト=フォクスとか。」
「そのまんまじゃのぉ。面倒じゃから、ホワイトでよかろう。」
クルードに決められたカザミことホワイトは、誰にも聞こえない小声で、酒の量を減らしてやる……と、呟くのだった。




