咲耶ともう1人のカザミ
竜の眼を借りたトリフェーンの世界は、一見すれば緑多い星で美しく映る。だが、命の源である「水脈」があまりにも少ないと感じた。
「ドゥーロはん、この星はなぜ水辺が少ししかありまへんの?」
「それは、魔法や魔道具で創りだしてるからじゃないかと思う。」
「そうなんやね……」
ドゥーロの答えに、カザミが扇子を仰ぎながら思考する。
「どうした? 何か感じたのか?」
黙り込むカザミにクルードが声をかける。
「いいやね、このままの状態があと1年続くようなら、この星の砂漠化は加速的に広がるやろね〜と、思いまいしただけや」
「やはり、カザミもそう思いますか?」
クロガネの問いかけに、当然だとうなずく返す。
「これは、悠長にしとられんな……クロガネ・カザミよ、今一度クルクリの街に戻ってみんか?」
竜の映し出す映像を睨み据えながら、クルードが呟く。
「戻るのはかましまへんが、人目につきそうやわ〜。団体行動は苦手やし。」
「何を言っとる、今も団体行動じゃろうが。それよりも、単独で探る方がおぬしに合っているか……」
狐族のカザミは、変幻自在に風景に溶け込む能力の持ち主だとクロガネから説明をうけた。昔話にでてくるような能力だ。
「ご理解いただけてよかったわ。じゃあ、この世界の冒険者に姿を変えまひょか。
そっちの方が情報は集まるし、酒場などに入るんなら……」
カザミはふさふさの尻尾で自分の身体に纏わせた一瞬の後には、白髪の腰に剣をさす男性が姿を現した。
「どうだ。それらしくみえるか?」
白髪の髪を短く刈り上げ、鋭い眼差しの男性の冒険者が立っていた。
「もしかしなくても、カザミさん?」
「ああっ、これなら普通の奴らからはバレないだろ?」
咲耶の肩を抱き寄せ、頭を撫でられる。先程までの女性らしい口調は鳴りを潜め、男臭さが前面に出てきたその人は、紛れもなくカザミであった。
あまりの自分の驚いた顔が目の前の男性に映り込む。
「カッコよくて、びっくりしたか?」
狐族の変幻自在に化ける能力、恐るべしと、舌を巻く咲耶であった。




