咲耶と弱々しい大地
「外から魔力を取り込み、自分の内側の魔力と合わせて手の平に集める……」
一連の作業にまだ慣れていない咲耶は、ゆっくりと瞑想しながら魔力を樹に流し込んでゆく。
「命を終えた樹よ。どうか私の力を受け取り、再生を!」
咲耶の手が、柔らかな白き光を放つ。光は枯れた幹に吸い込まれるように霧散する。
「まだ、数回しかしてない割には、上出来じゃわい。咲耶様、癒しの効果が徐々に広がり始めておる」
クルードは大地に手をつき、力の加減を確かめていたのだ。
咲耶も樹から手を離し、再生を始めた枝を仰ぎ見た。
「直ぐに枯れ木が蘇えっては、ロウハさんから質問攻めを受けてしまうのはわかりきっているし、だから私達がこの場を離れてしまった後に、青葉が戻り果実を実らせる様に魔力を送ってみたけど……上手くいったみたいね。」
詰めていた息を吐きながら、クルードの横に座り込み、同じように大地に手を触れてみた。
ほんの少しだけだが、鼓動のような弱々しい魔力が手に返ってくる。
咲耶が癒しただけでは、焼け石に水のようだ? まず、なぜ世界樹が枯れてしまったのかという、根本的な原因を突き止めないと再生させたとは言えないだろう。
「とりあえず、皆の元へ戻り方針を決めんといかんワイ。もうそろそろ、お説教も終わった頃だろうしの?」
「はい。ロウハさんには悪いですが、声を掛けずにいきましょう。」
クルードの意見に賛同した咲耶達は、静かにロウハの宿屋を後にするのだった。
数十分後、咲耶は街の郊外にやって来ると、洋服の中に隠していた笛の形をしたペンダントを取り出す。
「この辺りでいいかな?」
「ああっ。街からもかなり離れておるし、呼んでも大丈夫じゃろう」
クルードの了承をえた咲耶は、笛を口に咥え息をふき吐く。
笛から溢れでる音は、樹々のざわめきの様な、澄んだ音色が遠くまで響く。
しばらくその場所で立ち尽くしていた2人の元へ、上空から真っ直ぐに降りてくる1つの巨大な影が現れた。
『もう咲耶、帰ってくるのが遅いから、迎えに行こうかと思ってた所だったよ?』
「ごめんなさい。でも、大人しく待っててくれてありがとう。」
咲耶の前に姿を現したのは、水晶球を大事に抱える竜であった。




