咲耶の恩返し
「ロウハさん、大切な果実を食べさせて頂いたお礼がしたいのですか、持ち合わせがあまりありません。だから、今の私達で出来る事でお礼をさせてください。」
咲耶の言葉に、クルードも相づちをうつ。
「礼などいらないさって言った所で、あんた達は納得しやしないんだろ?
じゃあ、そっちのドワーフの旦那に、ウチの裏庭を見てやってくれないかい?」
ロウハに案内された場所は、草木が枯れ地面に亀裂が入った家庭菜園らしき場所であった。
「こりゃ酷い有り様じゃ。世界樹が枯れた影響が確実に現れとるのぉ……」
地面に胡座をかき、乾ききった土や枯れ葉を手にする。
大地の事ならば、ドワーフ族に任せておけば良いだろうと、咲耶は庭の片隅に枯れてしまった樹木に目がいく。
「おや、お嬢ちゃんはその枯れ枝が気になってるのかい?」
「はい。私の両手で囲っても届かないから、元気だった頃はどんな実を付けていたのかなってー」
「そいつはね、世界樹様の無数に枝分かれした小枝のひと枝。名前をトイボといって、赤く甘い果実を実らせてくれていたものさ。」
今はご覧の通りさね。と言いつつも、優しく幹を撫でる姿は、とても大切に育ててきたのがよくわかる。
「だが、ドワーフのワシでも、命を終えた物は見てやることは無理じゃぞ?」
「ふん。そんな事は百も承知さ。トイボは無理だろうが、畑の土ならばもしかしてとおもっちまっんでね。」
期待せずに待ってるよーと、咲耶達に声を掛け、ロウハは室内に戻っていった。
「まあ、ワシならば再生などという技は無理じゃが、咲耶様ならば可能じゃがな。」
クルードは少し意地の悪い笑みを浮かべ、ロウハが去った方をみた。戻って来ないかを確認していたのだ。
「では咲耶様、ガイア様と練習した事をもう一度やってみるのじゃ。今度は自分1人の力だけでじゃ!」
「わかった。でも、大丈夫かな?」
「何を恐れておる。恐れは、魔力を暴走させる要因じゃ。自分を信じ目の前の樹を癒す事に集中するのじゃ。なあに、何か有ればワシや水晶の中の奴らが助けてみせるから、失敗を恐れぬ事じゃ。」
「はい。やってみます……」
咲耶は瞼を閉じ、手のひらを樹に触れながらガイアの言葉を思いだしてゆくのだった。




