咲耶とロウハの心意気
少し遅くなりましたが、本日も更新しております。
感想などよろしくお願いします^_^
この星、トリフェーンには大きく分かれて5つの大陸があり、現在ではその内の二つに人間達が住んでいる。
1つは、火山帯を含めた大小の島々で形成された大陸の「トリボアリ」
多種多様な種族が多く、ダンジョンや迷宮などが豊富な為か街が点在し、人が治める国もある。
もう1つは、今咲耶が訪れている場所。荒廃した大地、無数の深き穴がありその場からは、魔物が生まれては大陸の何処かに消えていく。そんな不毛の大地「アービッコ」
人では生きにくい大地に、現存する街を守るためだけに残った者は、地球には神話にでてくる種族。「竜族」
姿は、咲耶と行動を共にしている竜とは違い、硬い鱗に覆われ、翼と角をもつ四つ脚の巨大な身体。咲耶の読んだ本に出てきた、西洋風の竜であった。
竜族は、アービッコ大陸にあった亡国地を守る様に住みつき、静かに眠っていると言う。
滅びと沈黙の街と呼ばれるクルクリにも、竜族は存在し中心部にある枯れた巨木の傍らに寄り添っているという。
「この街はね、さっきも言ったけど、10年ほど前まではトリボアリの国々の様に人間達が住み、ダンジョンや迷宮攻略の拠点になっていたのさ。
まあ、今もダンジョンに向かう者達がいるにはいるんだが、荒廃した街には店など無く、物好きな奴らばかりが残っちゃいるがね。」
そんな物好きの1人だとロウハは笑う。
「でも、10年ほど前までは、まだ街としての機能は生きていたのですよね。」
世辞でも美味いとは言えないお茶を口に運びながら、咲耶は問い掛けた。
「ああっ。中心部の大樹には実りの果実が溢れて、人々には笑顔があり幸せがあったさ。だがね、その大樹が突然枯れてしまい、生き苦しくなっちまったのさね。加えて、底が見えない巨大な穴が生まれるやら、魔物が溢れるやらで、栄えていたクルクリもこの有り様なんだよ。」
大袈裟に腕を広げ、お手あげだと言わんばかりのロウハだった。
「先程の話しに出てきた大樹とは、どんな果実を実らせていたのですか?」
「果実かい? それならまだ蓄えが残っているから少しだけ振る舞おうかね〜」
その言葉に浮き足だったのは、ドワーフのクルードだ。
「10年の果実が、まだ残っておるのか?」
「当たり前だよ、この果実は1度収穫すれば、枯れる事はない、神よりもたらされた果実さ。」
ロウハの言葉に、クルードはワナワナと体を震わしている。
その果実がどんな物か知っているようにもみられる。
「ほらよ。少ししかだせないがご相伴あれ。命を繋ぐ果実ーヤラーだよ。」
「やはり、世界樹の果実か?」
クルードの呟きが聞こえたのか、ロウハが自慢気に話し出す。
「さすが大地の種族ドワーフだね。いかにも、この街の中心部にある枯れた巨木は世界樹なのさ。10年前の収穫祭に頂いたやつを隠してあってね、久しぶりの客人にもてなすには、これしかないだろう?」
茶目っ気たっぷりにいうロウハだが、余程大切にしてきたのが分かる。クルードがカットされたヤラの実を、ゆっくりと味わうように口に運んでいたからだ。
咲耶も、そんな大切な果実を提供してくれたロウハにお礼を言って、初めてヤラの実を食べる。
日本で食べた果実とは比べられないほど甘く、さくっとした食感が喉元を過ぎると、身体の疲れが取れたように感じる。
咲耶が初めての感覚に戸惑っていると、隣のクルードが目で合図を送ってきた。後で説明してくれるのだろう。
「どうだい、ヤラの実は美味いだろ?」
「はい。私の住んでいた土地には無縁の果実。とても甘くて驚きました。こんな貴重な物をありがとうございます。」
咲耶は素直に感謝の言葉を口にした。だが、この見返りに自分は何をすれば良いだろうか? この世界に来たばかりの咲耶には、この世界の通貨など持ち合わせてがなく、途方に暮れる咲耶に、クルードが助言してきた。
「咲耶様、ワシに良い考えがある。これならばロウハは喜ぶのではないか?」
「それは、今の私に出来る事?」
「咲耶様にしか出来ない事だろうー」
クルードの言葉に、何となく察してしまう咲耶だった。




