咲耶と下準備
「ガイア様。素朴な質問ですが、この世界から転移するのなら、役所や学校などの戸籍関係の手続きはどうされますか?」
「それなら、クロガネが全て請け負ってくれるから、咲耶は自分の身の回りの準備をしましょうね〜」
ガイアが言うには、今夜の満月の力を使って空間の入り口を作りだすのだという。
「では、逆にドゥーロはどの様に私達の世界に来られたのですか?」
咲耶の問いに、ドゥーロが自慢気に話し出す。
「それはな、オレの世界に時空間を操れる凄い術者がいるんだ。けど、片道分の魔力しかなかったから、ガイア様の力を頼るしか方法がないんだ」
ドゥーロが今回の通行手段を説明する。まあ、困った時の神頼みになるのは間違いないのだろうが、どの様な手段で、咲耶が住む敷地ごと移動させるというのだろうか?
「じゃあ、我々も準備を始めましょうねぇ。ドゥーロ、咲耶の住む場所を囲む様に、この菱型の水晶を大地に埋めてきて」
「それは、少し大変な作業になりませんか?私の家は、庭や森などがあるので学校の校舎並に広いのですか…」
「大丈夫よ〜、ドゥーロは身軽だからそこまでは時間はかからないのよ。咲耶の世界の住人と身体の機能や身体能力が違うから。」
心配はいらないのだとガイアは決めつけ、沢山の水晶が入った布袋をドゥーロに押し付けた。
「わかったよ。月が出るまで三時間くらいしかないから、オレがやってきますよ。だから、他の準備をお願いします」
「はいはい。咲耶に向こうに着いてからしてもらう事や咲耶の能力の話をしておいて挙げるから、ドゥーロはささっと片付けていらっしゃいな〜」
ドゥーロはガイアから袋を受け取り、烏と共に家の外へ出て行った。
「外の事はあの子達に任せるとして、咲耶の準備をしましょうね。このままの状態で行っても、何をすれば良いかわからないでしょ?」
ガイアの言葉に咲耶は同意した。
何を教えられるかはわからないが、忘れないように意識を研ぎ澄まし、メモを取り始めたのだったー