咲耶とクロガネの心配
「咲耶様。聞かなくても分かる事ですが、敢えて聞かせて下さい。分かる皆が寝ている時間帯だというのに、何をなさっておられるのですかね?」
入り口から静かに入ってきたクロガネは、かなりのご立腹のようだ。
だが、お盆の上にのるカップに目がいく咲耶にきがつくと、照れ隠しの様にちょっと慌てた様子になる。
「これはですね、何処かの誰か様が、大人しく休んでくださらないから、致し方なくーって、人の話を聞いておられますか?」
「うん。ちゃんと聞いてるよ。心配してくれてありがとう、クロガネさん……じゃなくて、クロガネ! あと、そのカップをもらってもいいのかな?」
「もちろんです。咲耶様の為にお持ちしたのですから。あー中身はミルクティーになっております。砂糖を多めに入れていますので、疲れた身体を労ってあげて下さい。」
クロガネから手渡しでカップを受け取ると、咲耶は作業の手を休めひと時の休憩にした。早起きしてから魔力を使いっぱなしの為、疲れていたのは間違いないようだ。ミルクティーの優しい甘さに、思わず顔が綻ぶ。
「さて咲耶様、何故このような時間帯に魔力操作をされているのか伺ってもよろしいですか?」
咲耶の傍らに立ち、心配げな視線を向けるクロガネ。このところ咲耶に対して、魔力操作を過剰に使わせてしまっていた。
この街や世界には必要な事かもしれないが、守るべき主人の無茶振りを諫めるのも、クロガネの役目だった。何より自分自身が、咲耶の身を案じていたのだ。
「ちょっと眠りが浅くなってしまって、この頃同じ夢をみる様になったの。」
「同じ夢をですか?」
クロガネの言葉に、咲耶は小さく頷く。
「あの場所はきっと、昨日カンザールが連れて行ってくれた黄竜の里……だと思う。」
そうして咲耶は、連日みる夢の内容を語りだした。




