閑話 トリフェーンを探索しよう9
「アクアマリンー水の石よ、天馬の願いを受けて、この地に水の癒しを与えてあげて?
草木や天馬の喉を潤す水辺になって……」
咲耶は今、天馬のたっての希望により、世界樹の周りにある枯れた水飲み場を巡っていた。それというのも、咲耶の親切心から放たれ一言が始まりだった。
皆が思う存分に咲耶の創作魔法を堪能した後、守護者カーモスより控えめな願いが告げられた。まあ、願い出た本人も、駄目で元々の所があったので、期待せずに言ってみたのだ。
「聖女殿にお願いがあるのだが、話を聞いてくれないかな?」
「私に出来る事って言うか、この創作魔法を必要なんでしょう?」
「まあ……そうなんだかね。と言うか、私が言いたい事を見透かしているのか?」
少し困った雰囲気の天馬の様子に、咲耶が笑いながら自分の考えている事を言ってみる。
「だって貴方は、まだあの花から創れる白い実を欲しがっているのでしょう? まあ、創るのは良いんだけれど、私としてはこれから色々と品種改良を施したいなって思ってるのよーー」と、話を続けようとした咲耶の会話に、例の人物が乱入してきた。
「ちょい待ちぃ〜や。その話はウチも1枚かま
せてもらいます〜」
「やっぱり……利益が絡みそうだから、来るかなぁって思ってたよ」
「当たり前や。今後の物資調達にも絡んでくるんやで? 黙ってられる訳ないやろう。それにウチも咲耶はんに色々と創って欲しいもんがあるんや!」
と言い放つと、懐から1枚の紙を取り出し咲耶の前に掲げてみせる。
そこには、植物の種から始まり、工具や果は何か織物機と、紙一面にぎっしりと書かれていた。
「ねえカザミさん。もしかしてだけど、これに書かれている物全てとか言わないよね……」
「いいや、これでも少うしてるんや。急がせやせえへんから創りってくれん?」
キラキラと瞳を輝かせてお願いしてくるカザミに、頭を抱える咲耶。そんな二人の会話を見るに見かねた天馬が、フォローに入る。
「カザミといったか?」
「はいな。それはそうと天馬はん。ウチだけ遠慮しろとか言わへんよな? さっきの花の件も、ウチが口添えせえへんやったら、天馬はんの口に入りまへんやったんやで。」
カザミの的をいた言葉に、黙ってしまうカーモス。商品の事が絡んだカザミに、誰もが敵うわけがないのは分かり切っていた。
言い負かされそうな咲耶と天馬に、クロガネが間に入る。
「カザミ。そろそろ引いてあげなさい。咲耶様が困っておられるのがわからないのか? それに、一気にこれだけの要望を具現化出来る訳がないと分かるでしょう?」
「せやから、少しづつで良いっていっとるやろ?」
どんどん会話がヒートアップしていくクロガネ達に、畑の様子を見に行っていたクルード達が、二人を無理やり引き離す。
「この馬鹿もん共が! 守護者殿の前で騒ぐもんじゃないぞ」
「そうですとも、呆れておられますぞ?」
「いや……、呆れていると言うか、元気な者達だと観て楽しんでいただけだ。」
少し離れた場所で、咲耶にあんな花が出来ないだろうかと相談しながら、カザミたちの言い争いが収まるのをまっていたのだ。
「とりあえず二人とも、今は守護者カーモスの願いを叶えさせてね。これは、私の今後のお菓子作りに関わる事だから、優先的にさせてね。それとカザミの希望だけど、私の創作魔法の訓練のノルマに、カザミの希望を1日1アイテム創るって課題を増やすわ。」
だからこの場は、天馬を優先させて欲しいとの咲耶の願いに、カザミは仕方なく折れることにした。
「わかりましたわ。だけど、ホンマに1日一1個は創ってや。咲耶はん?」
「うん。約束は守るよ、カザミ!」
抱きしめてくるカザミの背を、少し困った表情で撫でてやる咲耶だった。




