咲耶と夕食の時間
部屋から漏れる光。騒がしい声。部屋の外にまで漂ってくるスパイシーなカレーの匂い。
咲耶は苦笑しながら、室内に足を踏み入れる。そこには球体状に戻った竜と、美味しそうにカレーを食べるクルード・カンザール・ドゥーロの3人の姿があった。
ちなみに、ドゥーロのみはパンと水だけなのだが…
ドアを開けて入ってきた咲耶に気がついたカンザールが、食事の手を止め咲耶の元にやってくる。
「お疲れ様でした。取り敢えずお席にどうぞ。ドゥーロ、咲耶様に冷たい水を差し上げてくれ。」
「わかったよ、師匠。」
咲耶の為に椅子を引くカンザール。ドゥーロは師匠の指示に従い、冷えた水が入ったグラスを咲耶の前に置く。
咲耶は礼を言ってから、冷えたグラスに口をつける。少しレモンが絞ってある水は、疲れていた咲耶に幸福感を味合わせてくれた。
「で、どうじゃった? 粗方はそこの竜に聞いてはおったが、魔力操作は上手くいったのが?」
咲耶が落ち着くの待っていたクルードが、今日の成果を聞き出そうとする。
「うん。課題の5種類の石を各50個の予定だったけど、多少の誤差はあるかなー」
『まあ、最初にしては良い方じゃない? 意識もしっかりしてるし、少し疲れた様子だけど、顔色は悪くないね。』
スパルタ指導力を見せた竜が、咲耶のにやって来て淡く発光しながら、咲耶の表情を覗き込む。
「君のおかげで少しは創造する事に慣れてきたみたい。でも今思えば、あの会話では小人を作るって話だったのに、童話集の小人を具現化しようって言っていたのに、同じページに描いてた石の方を具現化するのだもの。」
『うーん。最初はそのつもりだったんだけどさ、人形よりも石の方が良いかなって思い直したんだ。でも、よく覚えてたね?』
どさくさ紛れで誤魔化したつもりの竜に、咲耶は聞き取れない小声で「楽しみにしていたんだもの」と、呟いた。
そんな咲耶に、また時間がある時に色々教えてあげる事にした竜。
『慌てると、基礎が疎かになりがちだよ。今は魔力操作と創造を身体に覚えさせる事が大事さ。ほらそれよりも、早くカレーを食べないと、咲耶の部がなくなっちゃうよ?』
いつの間にか咲耶の前には、湯気のたつカレー皿が置かれている。カンザールが準備してくれたようだが、咲耶達の会話が終わるまで声を掛けずにいてくれたようだ。
「咲耶様、修練の間に作ってくださったカレーとやらが、冷めてしまいますぞ? 温かい内にお召し上がりください。」
「そうじゃぞ、一応クロガネ達の分は残してあるが、ワシらで食べ切ってしまいそいじゃわい。」
クルード達の言葉に、自分が用意した訳ではない旨を伝えようとしたが、竜が小声で止めに入った。
『僕は咲耶の一部の様な物なの。だから、この料理は咲耶が作った事にしてていいのさ。それにあの姿は、咲耶以外には見せるつもりはないよ!』
竜の悪戯めいた囁きに呆れつつ、皆と食事を囲む咲耶だった。




