咲耶と聖女
ーー聖女ーー
一般的な常識として、神の恩寵を受けて奇跡を成し遂げた者。社会(特に弱者)に対して大きく貢献した、高潔な女性を指して呼ぶ言葉である。
宗教とは無関係に、『慈愛に満ちた女性』を指して形容し、賞賛したりする例も見られる。
と、何か情報端末で検索した概要である。
ガイアが『聖女』になってほしいと言うからには、癒しの能力が世界に必要不可欠なのだろうー
人間では弾かれる存在だが、『神の恩寵』を受けて=依頼を引き受けて、引っ越ししたのならば、咲耶は『聖女』という立場になり、異世界から受け入れられるのだろう。
「聖女ですか…」
咲耶が1番に思い浮かべてた歴史的登場人物は、『ジャンヌ・ダルク』その人であった。
ジャンヌは農夫の娘として生まれ、神の啓示を受けたとして為政者に従い、敵国と重要な戦いに参戦して勝利を収め、為政者の戴冠式に貢献した。その後ジャンヌは、敵国捕虜となり、内通者であるボーヴェ司教によって、19歳の若さで火刑に処せられその生涯を終えた。
確か簡単な話の流れはそうだった筈だ。
咲耶がガイアに『ジャンヌの様に』ーと、意識して口にすれば、
「そういえば、可哀想な女性も居たわね〜。あの時は、自分ではない精神体が動いていた時期だからなぁ…」
神ガイアは、触れられてほしくないのか、何処か遠くを眺めている。
まあ、神にも諸事情があるのだろうし、これ以上揉め事から逃げたかった咲耶は、本題にもどした。
「神ガイア、これまでの話を聞いた限りでは、この件は拒否権が無い案件ですよね?」
「あー、やっぱりわかっちゃた?」
苦笑いしている神に、内心で大きなため息がでる。
「わかりました。拒否権がないのであれば、お引き受けします。ですが、嫌々だと言う事をお忘れにならないで頂きたい。」
咲耶はとうとう、折れるしかなかった。