咲耶と魔法レッスン1
咲耶の手の平の上には、紛れもなく冷たい肌触りの石が収まっていた。
だが、一瞬前までは童話のに描かれた紙の絵であった。竜がただ『えいっ』と、可愛らしく掛け声をしただけで、咲耶の目の前に現物として現れた。
『よしよし、絵の石を創り出せたようだね。どんな感じかな? 肌触りとか重さも石と変わらないでしょ?』
「そうね。滑らか肌質も冷たくひんやりとした感じさえも、道端の石たちと何ら変わりはないみたいだね。」
咲耶に掛けられた言葉が嬉しくて、竜は咲耶の頬にすり寄せる。
ピタッとくっついてきた球体の竜に、最初は驚きはしたが、愛猫を撫でる様に優しく触れてみた。すると、少し冷たい球体が暖かみを帯びた気がした。
『そうだ、ここで1つアドバイス! 絵とか咲耶自身が見た物、心に焼き付けている強いイメージは、割と具現化という形を取りやすいよ。でもね、まだ誰もが創り出していない物、聞いただけでイメージが湧かない物、曖昧な物は具現化が難しいし、それだけ咲耶の魔力を使うから、気をつけてね?』
「気をつけるとはどういう事?」
少し不穏な言い回しに、咲耶は心配になる。
『えっとねー、体内の魔力を使い過ぎるとね、酸欠の様な状態に陥って気を失う恐れがあるんだ。まあ、こっちの世界は地球に比べて魔力が豊富だから心配いらないと思うけど、僕の大事な咲耶に、何かあったらいけないもんね!』
「心配してくれるんだね、ありがとう。」
咲耶の言葉に反応して、球体がポンッと朱に染まる。
『だ……、大事に決まってるよ。僕は咲耶の血と地球の神の力で誕生したんだから。君を困らせる奴は断固として戦うし、少しの事でも力になりたいんだ。そしてこれは、地球組のメンバーの思いでもあるんだよ。』
(本当は、咲耶の側にずーっと居たいけど、その役目は僕じゃないから……)
竜はいつか訪れる未来を憂い、無言になってしまう。だが、いつ訪れるか分からない不安視よりも、今は咲耶に沢山の事を教えてあげる事が最優先であると思い直した。
『そうだ咲耶、創作魔法の練習として、この本棚にある宝石大全集に描かれた石たちを、咲耶の魔力とイメージ力で創り出してみなよ?』
「本気? みたいだね……」
冗談かと思った咲耶だが、竜の力で咲耶の手元に落とされた本を受け止めて、少し不安になる咲耶だった。




