咲耶と土木作業と酒好き達
「さて、カザミ達が黒曜石を採りに行っとる間に、ワシらは土台作りをしとかんとな。」
大地に手を触れて土の状態を確認するクルード。クルクリの土壌は、エルフのカンザールが手を加えようとも、緑が増える事は無かった。
「しかし、何という硬さじゃ。土というよりも、岩と言っても差し支えはないではないか?」
「まあ、それは否定しませんよ。この10年、色々と試してみたのですが、植物は直ぐに枯れてしまいます。」
カンザールも土の具合を確かめながら、クルードに同意する。
カンザールの裏庭には、クルード・カンザール・ドゥーロの3人が、自由自在に移動出来る扉で酒場に戻ってきていた。
酒場に戻ってきたカンザールは、最初に暫く酒場を休む案内板を店の前に掛けた。
理由は、酒の仕入れで暫く街を離れるという内容だ。
「冒険者が大多数を占めるこの街で、暫し店を閉めるか……。はたして酒好きの奴らが我慢できるかのぉ。」
「そこは我慢してもらうしかないですな。この作業が軌道に乗れば、街の者達が助かるのです。それに、この機会を利用して、カザミ殿より酒の知識や種類を仕入れさせてもらうつもりですので、再開したら美味い酒を提供してやるつもりですよ。」
この街の冒険者達に、味わった事のない酒を提供するのが今から楽しいで仕方がないカンザール。
「ならばその時の為にも、目の前の問題を片付けてしまわんといかんな!」
仕事の後の一杯が最高に美味い事を知っている2人は、ニンマリと笑みを作り作業に取り掛かった。
「まずは大地をほりださんといかんが、手作業でやっとったらいつ終わるかわからん。」
「クルード殿……、硬い地盤を魔法で破壊する事は造作もない事ですが、それではこの一帯に大きな穴を作ってしまうだけになります。」
カンザールの言葉にクルードは、この世界の魔法の威力がどれくらのものなのかが気になりだした。
「カンザールよ、そなたが使う魔法はどんなものじゃ?」
「ええっとー、風魔法と水魔法を少し。後は剣に魔法を纏わせる魔法剣くらいですかな。
私は魔法単独で使うよりも、剣と共に戦うスタイルがあってるようでして……」
恥じ入る様なカンザールに、クルードは矢継ぎ早に問い掛ける。
「こちらの魔法は、どの様にして発動するんじゃ? 呪文や詠唱などがいるのか? それと触媒などを使ったりしとるのか?」
「ちょっと、一緒に聞かれても全部お答えできませんぞ。1つずつお話しさせてもらいますので、落ち着いてください。」
クルードの悪い癖なのだろ。興味がある事、気になった事は直ぐに知りたくなるのだ。
「ほらほらクルードの爺ちゃん、師匠が全部話してくれるんだから、ちょっとは落ち着きなよ?」
難しい会話を大人2人に任せ、ドゥーロとハヤテはプランター用の図面を庭に描いていたのだ。
「ドゥーロ、カウンターから酒瓶を持ってきてくれんか。」
「えっ。でも師匠、これから仕事なのに酒を飲ませていいのか?」
カンザールの指示に戸惑っているドゥーロ。
「酒瓶1本くらいで、酔い潰れはしませんよな、クルード殿?」
「当然じゃ。ドワーフの酒好きをなめるなよ、小僧っ子」
2人に急かされ、渋々室内に取りに行くドゥーロであった。




