咲耶とカザミの心労
クルードの考えは常識を逸脱していた。
カンザールの庭を丸々使って、レンガ作りのプランターを設置するというものだった。
「ちょいまち〜な。庭を丸ごと使うとなるまと、家が二軒分くらい入る広さやで? そんな場所に巨大なプランター作るやなんて、無謀やわ」
「それにこの図面をみると、膝丈ほど掘り起こし、レンガを使って器を作る。材料もそうですが人手が足りなすぎます。」
クロガネ達の反対意見に、黙って聞いていたカンザールは、クルードに何個か質問をした。
「クルード殿、レンガというのは、石のような物ですよな。ならば、打ち捨てられた家の外壁等を再利用すれば材料を集める手間が省けるのでは? それと庭を掘り起こす作業ですが、我が風の魔法を使えば造作もないこと。」
クロガネが問題視した部分に、解決策を提示するカンザール。そんな様子に、地球組はカンザールがやる気になっている事に驚く。
「カンザール、お主はワシの考えを受け入れてくれるのか。エルフのお前さんには苦手な肉体労働じゃぞ?」
「そんな事など問題になりません。クルード殿が考えてくださった事が、素晴らしと事だと共感しただけです。私が出来る事ならば、なんでもお手伝いいたします。」
カンザールはクルードの手をとり硬い握手を交わした。大地と森の民だからか、自然が絡むと行動的になるようだ。
そんな2人だけの世界に浸っているクルード達に、カザミは反対する事をやめた。
「ホンに頭の硬い方たちやわ。仕方ないんで、今回はウチが折れます。材料や物資は用意しますから、どれくらいの物を準備したらよろしいんねん?」
カザミの言葉に、待ってましたと言わんばかりのクルードが、準備して欲しい物を書き出してゆく。
レンガ×1000、黒曜石×出来るだけ沢山、麻布を100枚ほど。掘り起こした土に栄養を与える為の肥料をその都度欲しいとの事……
自分の要望を嬉々として伝えるクルードに、カザミの表情がヒクヒクと引きつっている。
「クルードはん〜。物資を都合するとはいいましたが、この量はなんなの? いい機会だからと吹っ掛けすぎやわ!」
尻尾をふくらませて怒りを表すカザミに、クルードも一歩も引く気がない。
「いや、これでも抑えて言っとるんじゃぞ。レンガの接着剤替わりはワシが作る奴を使うし、黒曜石は土壌とレンガの間に敷き詰めるから絶対に必要じゃ。それと、麻布は水捌けを良くする為にも必須アイテムじゃ。」
腕組みし仁王立ちするクルードに、クロガネが間にはいる。
「クルード、貴方の言い分も分かるが、カザミの大変さを理解してやりなさい。それで、その物資はいつまで用意すれば良いのですか?」
「んーー、これから直ぐにでも作業に取り掛かりたいので、1日で用意は無理か?」
『は?』
クルード以外のメンバーは、今日1番の爆弾発言に凍りつくーー
今まで我慢を重ねていたカザミが、とうとう手が出てしまう。自前の扇子で、思いっきり勢いよく頭を叩いた。
「こんの〜、唐変木のお人わ〜」
カザミの悲鳴が悲しく響くのであった。




