美少女(俺)との出会い
時は少し遡り、4月。
今日から高校三年生となり、始業式と、新たなクラスのホームルームを終え、早々に帰路についていた。
尚、友達はいない。
高校一年生の時記憶喪失となり、以前の友達とは自然と距離をとるようになった。
今では、話しかけてくるのは学校の先生だけだ。
記憶喪失の原因は、父親の死が引き金となったらしい。
「らしい」という言い方になってしまうのも、過去関わった人物の記憶は全て消えているからだ。
ただ、言語やこれまで培った知識、一般教養は身についたままで、生活する分にはこれといった支障もない。
父の死後、記憶喪失後は父方の叔母、早希さんの元で生活をしていた。
母は俺が幼い頃事故で他界しており、親族も早希さんの一人だけ。
父が何故亡くなったのか、未だ聞けずにいた。
自分からしたら赤の他人のようで、なんとなく、踏み込んではいけない気がしたからだ。
今では早希さんからの援助と、バイトで生計を立てながら一人暮しをしている。
記憶喪失当初は、世界に一人取り残されたかのような感覚に陥り、早希さんからしても、どう接したらいいか分からなかったという。
根気強く接してくれた早希さんのお陰で、今では良好な関係を築き、俺自身も深い信頼を寄せている。
とまぁこんな感じの、少し複雑な状況ながらも、今では記憶喪失の後遺症なく、なんら変哲のない日常生活を送っている。
うん、過去に縛られず生きていければ、それだけで幸せだな。
夕飯の材料を買いにスーパーへ寄ろうとすると、横からの強い衝撃を感じ、勢いよく吹っ飛んだ。
は......え??
突然の事態に頭が追いつかず、あ、俺ここで死ぬんだ、と先程まで考えていた幸せを放棄しようとしていた。
しかし、地面に倒れた衝撃で体が少し痛む程度で済んだようで、一先ず死んでいないことに安堵した。
衝撃の原因を探ろうと自分にのしかかるものの正体に目を向けると......。
なんとそこには美少女がいた。
「あいてて......力の制御はまだ不完全だな。失敗失敗」
異能バトルが始まりそうな台詞に違和感を感じたが、一先ず少女をどかし、起き上がることにした。
「いきなりボディアタックかましてきたけど、知り合いと間違えた?」
手を差し伸ばし起き上がらせると、やはり見知らぬ美少女がそこにはいた。
歳は自分とさほど変わらず、首元で切り揃えられた茶色の髪を揺らしながら体を起こす彼女に、視線を奪われる。
「いんや、君であってるよ?」
「俺は知らないんだが......」
「とりあえず自己紹介するよ!」
「柏木悠真、15歳だ!」
は......え??
本日二度目の衝撃を感じ、しばらくその場から動けずにいた。