プロローグ
これまでと何ら変わらない、いつも通りの朝......とはいかない。
柏木悠真はいたって普通の高校3年生だ。
一部を除いては。
時計の針は7時を示そうとしている。
そろそろ奴が来る時間だ、起きなければ、そう思う心とは裏腹に体は動いてくれない。
まだ寝れる、あと少しだけ......という夢の世界への甘い誘惑に飲み込まれそうになっていたその時、ドタバタと部屋に向かってくる足音が聞こえた。
...... 奴が来る。
足音が聞こえてくるなり布団を頭までかぶり、防御姿勢は完璧。
どこからでもかかってきやがれ!
勢いよくドアが開かれ、彼女が自室へと足を踏み入れる。
鼻歌を歌いながらカーテンを開け、窓を全開にすると、日差しとともに暖かな風が入り込んでくる。
「まだ寝てるのか我が分身よ」
彼女が呟くと、俺が寝ているベットのわきに立ち、すぅーっと息を吸い込み......。
「闇に支配されし我が分身よ、目覚めの時だ!」
「後5分だけ寝させて、やっぱ15分......」
「いいから起きるのだ!」
彼女が俺を守る布団を引きはがす。
なんでこいつは朝から元気なんだよ。
「貴様は毎朝毎朝寝起きが悪い!敵が攻めてきたらどうするのだ!」
あきれ顔を向けている彼女の名も柏木悠真。
同姓同名の幼馴染でも妹でもない。
見た目は俺とは別人(性別含め)だが中身は俺と同じ。
彼女の中身は中学3年生、15歳の時の俺だ。
彼女とは2ヶ月前の4月に出会い、訳あって同棲することとなったのだった。