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第13話 立ち去る男
「はあ、無駄骨かよ……」
独り言とは思えないほどに、はっきりと大きな声で呟く。
あれだけ時間をかけて調査した結果が、ただ一人の男の悪事を暴いただけじゃ割に合わない。
「正義のヒーロー気取りかよ! かっこつけるのも大概にしろよ」
自虐的に、再び大きな声で独り言。
まるで酔っ払いだなと、我ながら思う。
大きなバッグを抱え、向かっているのは凪ヶ原駅。
あれだけ目立つこともしたし、この街ともお別れだ。
短い期間だったが、この街でもやっぱり手掛かりは得られなかった……。
「あ、伯父さんですか? 和真です」
『どうしたのかね? こんな時間に』
「この間保証人になってもらったばっかりなんですけど、また引っ越すことになりそうなんで、前もって伝えておこうかと思いまして」
『またかね? 保証人は構わんが、フラフラとあっちこっち……。やっぱり、妙なことを調べて回ってるんじゃないだろうね』
「やだなあ、伯父さん。俺は色々な景色を見て回りたいだけですって。それじゃ、失礼します」
――俺は凪ヶ原を後にした。