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魔王はタイマンがお好き

ーーー神滅67年。新宿。

この世にいた神が魔王との闘いに敗れ、新たに生まれ変わって67年目の東京。これはその魔都での話。



とあるアパートの一室。内装は和室で1LKでユニットバスと個室の洋式トイレ付きというまあ普通すぎる部屋の中には1組男女がいた。女性は女子高生だろうか、綺麗な紫でロングの髪の毛をいじりながらパソコンをカタカタ操作している。目はキッチリしていて見るからに厳しそうである。一方男性の方はというと、白いTシャツにジーパンという着るものを問うような服装をしていて、布団に寝そべりながら細長い手足をだらんと伸ばしている。


「タツキ、知ってます?今度の挑戦者は面白いものを使っているそうですよー?」


エリが俺に報告にしに来てくれた。面白いものねぇ........。


「そういや俺自転車の鍵失くしちゃったんだよねー。闘技場行く時エリのスクーター貸してくんない?」


「いいですよー。ただしちゃんとガソリン代払ってくださいよー。」


うーむ。手厳しい!てか守銭奴だなぁ.......。まあそれはいいけどしかし...どうしよっかなぁ.....。


悩んでいると女子高生の格好をしたエリが、まあ事実女子高生なんだけど、笑顔で聞いてくる。


「タツキ、今回は如何様にお闘いになるんですか?」


「うーん。今それで悩んでんだよね....。面白いものってなんか変なのモチーフにしてんでしょ?だからなんか作戦が思いつきにくいんだよね。」


「たしかに面白い武器を使ってる方なんてあまりいませんもんねー。まあ頑張ってください。私の生活かかってるんで。」




ーーーこの東京では魔王が実権を握っている。魔王が考えたのはコロシアム。決闘によって社会的身分を決める制度であり、これによって決まった身分が絶対となる。簡単に言えば負けたやつは奴隷だからさっさとこき使いまくりましょーねという話だ。

この制度のなにが重要かというと、王もこの決闘によって決まる。魔王も負けたら奴隷になるということだ。また、決闘に勝利すると賞金が支払われる。その賞金を生活費としている者も少なくないのだ。この男女のように。



とりあえず外に出て散歩してみる。現在の東京は裂けることのない雲に囲まれて薄暗く荒廃しきっている。決闘による賞金が政府の予算の大半であり、公共事業はその次に回されてあまり手が付いていないのだ。

管理されてない公園はやはり薄汚い。

ボロいベンチに座ってひたすら作戦を考える。

うーんやっぱいいの思いつかないな。

生活費は勝たないと稼げない。

「おい、そこのお前。ちょっとツラ貸せよ。」


ふと横をみるとヤンキーだ。ハゲ頭がその厳つさを倍増させており屈強な体は見るからにヤバい道に従事してるそれである。やばいやばい。俺そんな強くないんだよね。


「お前さあ、ちょっと金貸してくんない?いつか返すからさ?できんだろ?な?この財布とかよ。」


「ええ〜....。勘弁してくれないですか.....。今月の飯代全部入ってるんですよ......。」


見逃してくんないかなぁ.......。


「調子に乗んなよ。お前みたいなゴミはゴミ食ってけるだろ。俺は魔王に決闘で勝ってお前みたいなゴミを全員奴隷にすんだよ。だから俺に参加賞を寄越せばいいんだよ。」


そう言って無理矢理財布を持ってかれてしまった。

ああ......やばい.....エリに叱られる.....。



ビクビクしながら帰った夕飯。テーブルにはコロッケとサラダ。そしてホカホカのご飯がならんでいた。エリが笑顔でお帰りなさいと言う。腹を据えて告白しようーーーー




「タツキどういうことですか!財布奪われたなんて本当ゴミですよ、ゴミ!ゴミオブゴミ!タツキ今日は夕飯なしですからね!」


当然のごとく飯抜き。決闘近いのに....。







ーーーそれから三週間後。闘技場は東京のど真ん中に建てられ、決闘当日は観光客がわんさか集まる。とくに魔王の決闘がある時なんかはすごい。そりゃそうだ。日本のトップが決まるんだもん。


サングラスをかけたまさに実況風のアナウンサーの声が響きわたる。


「さあやって参りました決闘日!今日はなんとなんとあの魔王が出場です!どうせ皆さんルールは知ってると思いますが一から説明しましょう!

①! 死んだら負け!

②! 反則はなし!禁じ手なし!

③! 3本勝負で決闘は行われ、相手を2回先にノックアウトすれば勝ち!

④!能力は1試合1つまで!

以上です!簡単でしょう!

あ、あああああ!出た!魔王が出た!」


観客が息を呑んで見守る中赤色のゲートから出てきたのは..........。

黒いフード付きのコートにジーパンというラフな格好をした男。高校生くらいの背丈。ピエロの仮面をかぶって表情や顔は隠れている。外見こそ子供だが、雰囲気はなぜか近寄りがたい。


そして正反対の青いゲートから出てきたのはハゲ頭の屈強な男。チンピラにしか見えないが、魔王に勝負を挑むということは強さに自信があるということだろう。


両者は1辺100mにわたる正方形のリングの中央で睨み合う。静けさが場内を包み込む。

チンピラが話かける。


「俺さぁ〜。お前みたいなやつさぁ〜。嫌いでさ〜。どーせ弱いくせになに気取っちゃってんのー?」


チンピラが手を前にかざすと........

光がどこからか集まり、チンピラと同じくらいの鍵が現れた。


「俺みたいな武器使ってるやつ見たことねぇだろぉ〜?ははっ。あー楽しみだぜ。あと3秒くらいか?スタートは。」


2秒後に笛がなる。

観客がザァァッと騒ぎ出す!


「さあ始まりました!今日一番の注目!魔王対グスタフ!グスタフ選手は今季でトップの実力を持っていまして!未だ負けなし!今日はついに魔王と決闘です!」


グスタフは黒いフードの男を舐めるように見て、


「ああやっと....やっとだよ......。やっとお前みたいな目障りで弱いクソを殺せる......。ふひひ、ふひ、フヒフヒhuhihuhiフヒ!ああやっとだ!」


コートの男に向かってダッシュし思い切りその身長ほどもある鍵を思い切りふりかぶって。

殴った。とてつもない轟音が響きわたる。

魔王はかろうじて片手でガードをしたようだ。余裕そうにグスタフに蹴りを入れて吹き飛ばす。


グスタフはすこし後ろに飛ばされてダメージを受ける。やはり魔王、少し蹴りを受けるだけでかなり身体にくるようでグスタフの顔は少し苦痛に歪む。しかし


グスタフは余裕の表情で、

「やっぱお前は弱いわ〜。ガードをした時点で俺の勝ちに少し近づいてんだよ。無知は弱さなんだぜ。」


「ああっと、出た!グスタフ選手の能力!5右衛門!魔王選手これからどうする!」


魔王はガードをした右腕に違和感を感じ、見てみると。


開いている。壊れた機械のようにポッカリと穴が。長方形に、まるでドアが開いたように。中の筋肉は根こそぎぶち取られほとんどなくなっている。血が穴から溢れ出す。グスタフをみるとその手には赤色の肉がかかっている。


「そうだよ。お前の右腕の筋肉だよ〜。俺の能力はこの鍵で『こじ開ける』こと。俺はこの能力で負けなしだった。」


そう言ってグスタフは魔王の右腕の筋肉を地面に叩きつけつばをかける。


「......あんたの能力が鍵っていうのは知ってたんだ。うちのサポーターは優秀でさ。ちゃんとリサーチしてくれるんだ。」


ずっと黙っていた魔王が口を開く。


「鍵とかどうせそうでもないだろうってたかをくくっていたんだよ。油断したね.....。でもまあなんとかなるな。」


グスタフは余裕そうな魔王にイラついている。舌打ちをした。止血をしながら魔王は続ける。


「鍵っていうことはまあ『開ける』能力なんだろうなとは予想していたんだよ。だから今日俺はこんな能力をつかうことに決めたんだ。」


魔王が指を鳴らすと、グスタフの目の前の地面がせり出しドアを作った。


「なめやがって.....こんなドア開けるわけねえだろ。何があるかわかんねー。」


「まあそうだろうな、じゃあこれはどうだ?」


魔王がまた指をパチンと鳴らすとグスタフとドアを囲むように何百ものドアが現れた。何百ものドアが開く。するととてつもない熱気がグスタフに押し寄せる。驚いたグスタフが囲むドアの向こうを見てみると、向こうからは溶岩が流れてくる!


「......は?」


見る間に溶岩に囲まれたグスタフは、逃げ場が残されていないことに気づく。目の前をみるとまだ唯一開いていないドアがある。最初のドアだ。


「くそっ!」


どうしようもないグスタフは目の前のドアをその大きな鍵を使って開き飛び込んだ。


「やっぱお前弱いな。」

魔王の声が聞こえると思った瞬間。

グスタフは顔面に蹴りを入れられていた。

何が起きたのかわからず、声のした方を見てみるとそこには魔王と......


ドアがある。ついさっき開いたドアが。


「理解したろ。まあそういうことだ。」


指を鳴らすと魔王の前にドアが現れ、魔王は左手でバイバイしながらドアの向こうに消えていく。


「くそっ なめやがって!」


残されたグスタフが残されたドアに駆け込むと、


檻の中だった。目の前には虎がーーー。


まずい、襲われる。そう思ったグスタフは虎の胸を鍵でこじ開け、心臓を抜き取った。


そうだ、あのクソやろーの心臓さえ抜き取れば勝ちなんだ。だからあいつに近づくことさえできれば....




リングに立っていたドアが開く。

中からは虎の心臓を持ったグスタフ。

そしてまた新しく作ったドアの上に腰掛ける魔王と睨み合う。


「もうちょっと虎が頑張ってくれると踏んだが微妙だったな。作戦としては失敗だな。なんの得もない。」


「ああ、お前の能力、そのドアを作り空間をつなげる能力は本当に弱い!そのドアの使い道はあまりねぇ。ドアを作りがてら相手にぶつけるか、ドアの向こうから危険物を取り寄せる!それしかお前の戦略はねえ!だからお前は弱いんだよ!」


そういうとグスタフは魔王を見据え、力を込めて走りだす。魔王は溜息をつく。


「あんたバカだな。走るしか能がないのか。お前が言っていた危険物を取り寄せるドアの前に来てるじゃねーか。」


そう言うとドアが開く。向こうには


美しい宇宙。

扉に近づきすぎたグスタフはその宇宙に気づいた瞬間にドアの向こうに吸い込まれていった。


「宇宙にはこっちの空気も吸い込まれていくんだよね。なんだっけ、宇宙服なしでは血液が沸騰するんじゃなかったっけ。ご愁傷様。宇宙のゴミにな



「やっぱお前はよえーよ。宇宙なんかじゃ俺は死なねぇ。宇宙には光がある。光の粒をこじ開ければまた帰ってこれる。最初からこうすればよかったな〜。今俺はお前の体をこじ開けて心臓を掴んでんだよ。かっこつけたところ悪いが握りつぶさせてもらうわ。」


魔王の後ろにできたドアから身を乗り出したグスタフが心臓を握り潰した瞬間。


グスタフは息ができなくなった。

どうしてだ?なぜ俺が息できなくなる?


「馬鹿だな。俺の心臓の周りをお前の心臓の目の前に続くドアで囲っただけだ。お前は自分の心臓を握りつぶして死ぬんだよ。まあ光をこじ開け、安全な場所に避難し俺の後ろに返ってくるのは面白かったけどな。うちのサポーター、エリって言うんだけど優秀だからちゃんとお前の能力をリサーチしてくれたんだよ。だから今日はドアとか言うクソ弱い能力でもちゃんと勝てたわけ。まあお前が弱いのもあるけど。」






ーー翌日


「タツキ、よくあんな宇宙にほっぽり出すなんて思いつきましたね。」


「ああ、あれはどこかの青いロボットがやってたのを真似たんだよ。」


「はい?」


「いや、なんでもない。」


「ならいいですけど、今回の能力はどんな感じなんですか。」


「うーむ。説明しよう。」


5右衛門。鍵を使う能力。この鍵は分子レベルで存在するものならなんでもこじ開けられる。


「あれ、でも最後は宇宙から抜け出してきましたよね。空間の移動はできなくないですか?どうやったんですかあれ。」


「あれはね、てかそもそも『鍵』というものの話から入ると今回相手が使った鍵は『開ける』ことをモチーフにしてたんだよね。新しい空間に行くためにドアを『開ける』。宇宙から俺のとこまで来るために光というドアを『開けた』んだよ。無茶苦茶だけどね。」


「もしかしてその能力はとてつもなく強くないですか?」


「強いね。かなり。しかも『開ける』に限定しなければ『状況を打破する』『閉じる』こともできたはず。それに気づかずに『開ける』ことに固執したあいつがただの馬鹿だったんだよ。ところで今日の夕飯なに?」


「カップラーメンですよ。」


「ええ〜!? あんなに頑張ってお金稼いだのに!」


「駄目ですよ。節約節約。魔王様の一大事のためにとっときたいんです。」


うう....せっかくカツアゲしてきた鍵使いも決闘で成敗したのに....まあいいや。次頑張ろう..........。



ーーーータツキもしくは魔王。その能力は

「一度殺した相手の能力を決闘中にのみ使える。」

エリに関してはタツキのみがその能力を知っている。

この物語は作者が隠しきれなかった中二心を爆発させて作った作品です。温かい目でご覧ください。

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