もう一人の少女
体育館の入口のドアを開く。外は眩しかった。慌てて私は魔法を切る。目を外の明かりに順応させる。
ぱちくりと瞬きを続けていると「あっ」と声が私の右側からした。
そこには先程の少女がいた。
しまった!私はそう思った。
「あの、ここで何をしてたんですか?」少女はそう言った。
「夜の見回りよ」私は何食わぬ顔でそう言う。
「ここで殺人事件があって、私の友達が殺されて・・・。入り口のビニールが外されていたのでおかしいな?と思って中に入ったんですけど・・・。あなたが中に入ってるとは思わなかったです。あなたはこの殺人事件の犯人だとは思わないけど、夜の見回りだとは思いません。だって立入禁止のビニールが巻かれていたのだもの」彼女は片頬に手をつきながらそう言った。
ちょっとまずいことになったなと私は思った。犯人扱いされてはいないものの、少女は不審に思っている。
私は思い切って魔法使いであることをそれとなく知らせることにした。
「あのね、私は特殊な能力が有って、この事件を解決させようとしてるの。次の事件は食い止めようとしてるの」私の唇が開きながらそれを伝えると少女は微笑んだ。
「え?次もあるんですか?特殊な能力?もしかしてお姉さん、超能力者ですか?私ちょっと興味があります」少女の笑んでいる唇から白い歯が覗き、私は漸く人心地がつくことが出来たことを感じた。
「まあ、ぶっちゃけて言っちゃうわ。魔法使いよ。ナイショにしてね」
少女は『おお!』という風に口を上下に開くと「それ、ホントですか?」と尋ねた。「もしかしてあんな暗闇でも目が見えるようになるとか?」中々、この少女は頭が良いみたいである。
「まあそうね、夜目が滅茶苦茶利くようになるわ。それにしてもあなた友達が殺されたのに目が爛々と輝いてるわよ」私はそう指摘した。
「さっき、友達が私の傍に来た気がしたんです。その時彼女はお礼を言っていたような気がして。私は、ああ、お別れを言いに来たんだなと思ったんです」あの時のお礼は私にではなく、この少女に言ったのであった。
まだ少女は話を続ける「それで私は涙が出ちゃって。それからハンカチで涙を拭っていく内に心が軽くなったんです。もう今はスッキリしてます」
「だからって犯行現場に入っちゃ駄目よ」私は咎めるようにそう言った。
「ごめんなさい。ビニールが取られていたから、何かあったのかな?って思って」少女はそう言うと軽くウィンクをした。確かに涙はもう出ないようだ。少女の潤沢な湖からは。




